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ケーキを抱き、男に抱かれ~『今日も飲み続けた私』
衿野未矢著(評:朝山実)

講談社+α新書、800円(税別)

2008年9月11日(木)

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評者の読了時間4時間30分

今日も飲み続けた私──プチ・アルコール依存症からの生還

今日も飲み続けた私──プチ・アルコール依存症からの生還』 衿野未矢著、講談社+α新書、800円(税別)

「それ、お酒は入ってる?」

 ウィスキーのボトルを抱いて眠りにつくようなKさんが、とある席で、テーブルの上にあるケーキについて訊くので、びっくりしたことがある。しばらく会わないうちに酒を飲まなくなっていた。一滴も。

 彼とは長年の友人が「オレが毒見してやるよ」とそのケーキを口にし、「うん。やめといたほうがいい」。それっきりKさんは、ケーキを見ようともしなかった。

 過敏すぎる態度にも思えたが、気を許せば、飲酒が復活してしまうものらしい。

 酔って女房を殴るなんてこともしばしばのKさん、ふだんは温厚なフェミニストに見えるのだが、家庭崩壊寸前で断酒道場に入ったとか。アルコールを断ってからずいぶん痩せたし、昔と比べると肌つやもよくなった。

 「アルコール依存症」といえば、何人もの顔が浮かぶが、身の周りで脱出できたのはKさんただひとりだ。

 本書は、自分はアルコール依存ではないかと不安になった著者が、同じ悩みを抱える女性たちや、禁酒をうながす専門医を訪ねてまわったルポだ。

 執筆のきっかけは、ある朝、マンションのゴミ置き場に捨てられているケーキの空箱を見つけたことから。食べるのを楽しみにしていた友人の手土産にそっくりで、部屋に戻って確かめると、キッチンには使われた皿とフォークが。

 二日酔いの頭で、昨晩の行動を思いだそうとするものの、記憶がない。大きなケーキをひとりで二つも食べたことだけは間違いなさそうだ。

 仲間と飲み明かしてのブラックアウトならまだしも、ひとり自室でとなると、これは「ヤバイなあ」と思ったという。

 著者には「買い物依存症」におちいった過去があり、恋愛から暴力まで、自身の体験をも踏まえ、さまざまな依存症に悩む主に女たちのノンフィクションを何冊も著してきた

 やめたいと思ってもやめられないのが、依存症である。本書でインタビューに答えている女性たちの話は、たとえばこんなのだ。

 28歳の独身OLの礼子さんは、依存のトライアングルにある。

 「リスカは大学のときに何度かやったことがありました」という彼女は、衝動的にリストカットしたくなる。スッキリしたい気持ちを抑えるために、煙草の量が増し、不眠が続き、寝るためにお酒に頼ってしまう。

 「彼氏ができちゃえば、楽になると思います」というが、出会いの機会もなく、悪循環から抜け出せずにいる。

「まだ大丈夫」が深みへ誘う

 ウェブデザイナー、33歳の奈津子さんは、酔って記憶をなくし、大学時代の友だちとホテルに行って以来、酒場で出会った男とのセックスがやめられない。

「セックスのうち三回に一回は『気がついたらホテルにいた』や『ホテルに行ったところで記憶が途切れ、次に気がついたらベッドの上だった』です。せっかくエッチしたのに、覚えてなくてもったいなかったなあと思います」

 根は古風で、男性に対して消極的なほうだったという彼女は、著者の目を見ながら、「ヤリマン」や「ヤル」といった言葉をさかんに口にする。

 酒とセックスが彼女を危険な淵に追い込んでいるのは確かだが、「あっけらかんとした表情」に、著者は何も言えない。

 37歳、大手メーカーの総合職の今日子さんは、2人の子供を育てているシングルマザー。スーツをかっちり着こなし、9時になると飲み会の場から颯爽と立ち去る彼女にあこがれる後輩も多いというが、帰宅の電車では別の顔となる。

 紙袋に隠して、缶チューハイを飲むのは慣れたもの。子供を寝かしつけてから、リビングで飲みなおすか、近所の居酒屋で泥酔するまで飲む。

「ハッと気づくと、(駐車場の) ベンチに座って寝ていることがよくありました。時計を見ると二時とかになっていて、真っ青です」

 子供に気づかれないように、そっとベッドに入る日々を続けていたが、居酒屋で出会った男性と付き合いはじめてからは、以前ほど無茶はしなくなった。

 そこで、寂しさをお酒で埋めていたのだと気づいたというのだが、現在は、会社の元同僚など3人の男性との交際中で、依存先が不倫の恋に代わっただけととれなくもない。

 なんとなくからはじまった飲酒だから、やめようと思えばやめられる。「まだ大丈夫」のつぶやきが、やめられなくしている。

 読者は、この人たちと比べたら自分はまだマシだと思うか。他人事だと笑うか。ため息をもらすか。

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