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「やりたい」仕事は「やりがい」につながらない~『職業とは何か』
梅澤正著(評:荻野進介)

講談社現代新書、700円(税別)

  • 荻野 進介

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2008年9月12日(金)

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評者の読了時間2時間05分

職業とは何か

職業とは何か』 梅澤正著、講談社現代新書、700円(税別)

 生き残りを賭け、いかにも、売らんかなのドギツいタイトルが目白押しの新書界。そんななか、昔ながらのオーソドックス、ど真ん中、直球のタイトルである。しかも200ページに満たないほど薄い。相当練られた内容なのか、それとも少々浮世離れした学者の繰り言か、と思ったら、幸い前者だった。

 本書は職業というものに多方面から光をあて、仕事と職業の違い、職業能力とは何か、どうしたらよりよい職業生活を送れるか、などを真摯に説く。スポーツ選手、俳優、作家など、職業にまつわる事例も豊富だ。学生はもちろん、若手社会人、就職を控えた子供をもつ親が格好の読者対象だろう。

 著者はまず職業に対する誤解を丁寧に解いていく。

● 誤解その1「自分に適した仕事が職業である」。

 著者がやり玉に挙げるのは、世にはびこる、適職診断といった類の心理テストだ。実際の社会に身をおいてみないと、自分はどんな存在で、何ができるのか、逆に、社会からは何を期待されているのか、わからないものである。いかに精緻な診断道具を駆使しても、所詮は畳の上の水練、適職を探し当てることは不可能だ、というわけだ。

 ではどうすればよいのか。内側を覗くのはほどほどにして、外を探索せよ、というのである。自己理解とカウンセリングに重点が置かれてきたこれまでの就職指導から、社会が要請する職業を探すという方向に転換すべきだ、と。

〈職業は、社会が要請する仕事と事業のなかにこそあるのです。となると、選職にあたって大事なのは、まず「社会理解」です(中略)社会に関する研究や調査を怠ると、職業と雇用のミスマッチが続発します。「自分探し」に翻弄されてしまうと、若者たちは選職と就職を先送りせざるを得なくなり、結果的には不本意な就業を余儀なくされてしまいます〉

「社会は何を求めているのか」を先に考えよ

● 誤解その2「人が職業を選ぶ」。

 実際は「職業が人を選ぶ」という側面もある。たとえば、子どもが好きでなければ小学校の教師にはなれないし、真理追究の気持ちが人並み外れて強い人が、はじめて学者や研究者になれる。よって、自分の好みだけで職業を決めることばできない相談なのだ、と著者はいう。

● 誤解その3「一番やりたい仕事につくのが職業である」。

 このテーゼに対しては、「選職の主体性」のみが強調され、「職業の社会性」が隅に追いやられていると批判、「好き」「やりたい」を選職の羅針盤にすることが学生たちを混乱させている面がある、と指摘する。

 なぜ「やりたい」を最優先することが問題なのか。著者は次のような理由を挙げる。

  • 自分本位の職業選びに陥ってしまい、「社会の視点に立つ」ことが軽視される
  • 同じく現在本位に陥ってしまう。年齢の進行とともに、「やりたい」が変化するかもしれないのに
  • なぜそれをやりたいのか、という意味づけや根拠が薄弱となりがち
  • 技術、知識、ノウハウなど「やっていく」ために必須なものを既に備えているのか。備えていないならそれをどう身につけるか、までを視野に入れていない場合が多い

 そして、「やりたい」というところから出発するインサイド・アウトの発想を捨て、社会のありようを考え、それにかなう職業を探るというアウトサイド・インの発想をもて、と説く。

 こう見てくると、著者がいう「職業」の輪郭がはっきりしてくる。そう、職業とは個人の活動であるとともに、社会的活動でもあるのだ。著者いわく、職業とは、個々人の仕事を社会的に括った分類項目であり、それぞれの社会的存在証明でもあるという。

 では、よい職業とはどんな職業をいうのか。

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