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いまはなき幕末剣戟御三家

『幕末新選組』池波正太郎著 文春文庫 590円(税抜き)

  • 松島 駿二郎

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2008年9月19日(金)

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『幕末新選組』池波正太郎著

『幕末新選組』池波正太郎著

 幕末の京都、勤王攘夷護幕派に薩長が入り乱れて、治安は乱れに乱れていた。そこで天皇と幕府を保護し、攘夷を徹底する組織が幕命によって作られた。

 それが新選組である。世の中の乱れは、脱藩者も含めて、多くの浪人を生み出していた。江戸に道場を開く武蔵出身の近藤勇は、同じく武蔵出身の土方才蔵と組んで新選組を結団した。職にあぶれた浪人たちは食い扶持さえ保証してやれば、喜んで集まる。近藤と土方は、なにより剣術を重んじた。木剣で対峙して、この2人のどちらかを唸らせるほどの技量がなければ採用されなかった。

 近藤も土方も名が轟く剣豪であった。腕に覚えがある浪人たちは、こんな機会を逃さない。浪人たちは次々に、近藤、土方の入隊試験に武者修行のつもりで挑んできた。たちまち、世に比類のないほどの剣豪が集まった。それが新撰組である。

 筆者池波正太郎は、江戸や京の細密描写では並ぶものがない。特に剣戟描写は鋭いスピード感で、読者を惹きつける。その才能が、舞台を新選組に移して、最大限に発揮されている。

 新撰組にだだ一人、永倉新八という若者が入隊してきた。この若者がストーリーの軸になる。剣は達者だが、実戦経験がない。まだ人を殺める場を踏んだことのない初々しい若者がハラハラドキドキの毎日を送る。新選組が関わった長州との戦い(蛤御門の変)、寺田屋事件、大政奉還などを巧みに組み込んで、一種の教養小説のように新八の成長を辿っていく。

 同時に新八は女性修行にも精を出す。京の郭に通い詰め、女性には滅法弱いところを曝す。新撰組の隊士で、維新の激動を生き延びた男は少ない。新八はその一人だ。

 維新の動乱は圧倒的勢力を誇る官軍と、江戸城に籠もる旧幕府の対決という形に簡略化される。西郷と勝海舟の会談により、江戸の無血開城が話し合われ、江戸は戦禍から免れた。護幕をあくまで主張する者たちは、護幕の旗手・会津藩によって、最後の抗戦をする。近藤は捉えられ、斬首の刑、首は五条河原に曝された。一方新八は榎本武楊と組んで蝦夷に渡る。

 そして娘や孫もでき、白髭の好々爺となった。もうよぼよぼの老人である。ある時数人のヤクザに囲まれた。そのとき新八老人の腰はすっと伸びた。そしてただ眼光だけで相手を射すくめ、往年の力を示したという。新八は齢七十七の長寿を生き延びた。死因は虫歯をこじらせ、骨膜炎から敗血症を起こしたことだった。激痛を伴う苦しい死に様だったが、新八は一言も苦痛を訴えなかった。最後の床で「悔いはない」とつぶやき他界した。

 池波の平易な文で書かれているので、幕末の複雑な事情も一読明らかになる。

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