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安全美味、国産紅茶に見る古くて新しい道

「水車むら農園」(静岡・藤枝市)の挑戦(1)

  • 若井 浩子

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2008年9月24日(水)

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 「うちの茶畑は自家と契約茶畑を合わせて2町歩ですから小規模な方ですよ」。山道を軽自動車で上りながら「水車むら農園」の二代目、臼井太樹さんは言う。が、車が止って降りてみると、そこは視界の限り広がる茶畑……。

茶畑の面積は2町歩(1万8000平方メートル)。茶畑としては小規模と言うが向こうの山まで続く広大さ。完全無農薬、無化学肥料で年間10トン(紅茶4トン、日本茶6トン)の茶葉を栽培している。(写真:若井浩子、以下同)

茶畑の面積は2町歩(1万8000平方メートル)。茶畑としては小規模と言うが向こうの山まで続く広大さ。完全無農薬、無化学肥料で年間10トン(紅茶4トン、日本茶6トン)の茶葉を栽培している。(写真:若井浩子、以下同

 まず、その“2町歩”(1万8000平方メートル。1町歩は約3000坪で約9000平方メートル)が茶畑としては小規模”かどうかを知らぬ目には茫然とするような広大さだ。この見渡す限りの茶畑で、除草剤を使わずに茶木の生育に支障となる草を抜き、殺虫剤を使わずに虫害を抑えていく──その作業を想像すると目眩がしそうになる。

 「畑での作業は僕とあと1人の計2人でやります」。臼井さんは淡々としている。

 一般に茶葉は窒素肥料をやるとアミノ酸が増えてうまみが増すと言われる。しかし化学肥料を大量に与えることで軟弱に育った葉には害虫(ウンカ、フィリップス、アカダニなど)も付きやすい。

 殺虫剤がその害虫を抑えるために使われ、虫がいなくなって増える雑草を取り除くために除草剤が使われる。やがて、過剰な窒素や殺虫剤、除草剤で土壌や地下水が汚染されるという悪循環が生まれる(*1)。

(*1)静岡県ではこれを問題視し、定期的に土壌調査や水質調査をして窒素肥料を減らすよう指導している。

無農薬、無化学肥料栽培の紅茶

 「良い茶葉を育てるためには堆肥を使った土壌改良など現実的な方法がいろいろあります。それに虫害について言えば、殺虫剤を使わないと収穫は5月初旬の一番茶では最悪2割減、6月下旬の二番茶では最悪4割減になりますが、その減産を我慢できればいいのです」(臼井さん)。

茶葉は機械で摘むので枝の上部をきれいに刈り揃えて、新芽の伸びが同じ高さになるようにしている。

茶葉は機械で摘むので枝の上部をきれいに刈り揃えて、新芽の伸びが同じ高さになるようにしている。

 現在、水車むら農園の茶葉の年間生産量は約10トン。そのうち紅茶が4トン、日本茶が6トンだ。「うちではこの15年間、紅茶は大体4トンで安定的に製造販売しています。でも国産紅茶全体の市場は、ここ数年で2倍くらいに拡大しているという印象を僕は受けています」(同)。

 減産の痛手を我慢できる農園経営、そしてそこで作られる紅茶が消費者の支持を得てきた背景にはどのような考え方、システム(経営だけではなく、流通や販売など社会のシステム)があるのだろう?

 そこに行く前に、まず日本の紅茶生産の歴史に触れておこう。

輸出品としての紅茶、100年の歴史

 明治初期、日本では欧米列強に互していくために工業技術の振興が急務だった。政府はその資金を外貨から得るために、世界市場で勝機のある産業を選定し振興政策を立てた。奨励事業の対象となったのは、生糸、陶磁器、漆器、紙、綿、麻等々。紅茶も有望候補として含まれていた。

 奨励事業のほとんどが相応の伝統や技術のある産業だったが、紅茶については一般的な日本人はもとより政府の役人でさえ、見たことも飲んだこともない。当時、そんなものを奨励事業に選んだのも、ひとえに日本が外貨獲得に焦っていたからだろう。

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