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日本球界を蝕むGの遺伝子~『深層「空白の一日」』
坂井保之著(評:近藤正高)

ベースボール・マガジン社新書、780円(税別)

  • 近藤 正高

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2008年9月22日(月)

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評者の読了時間3時間57分

深層「空白の一日」』 坂井保之著、ベースボール・マガジン社新書、780円(税別)

 北京オリンピックで野球日本代表がメダルを逸してからというもの、にわかに星野仙一監督への批判が集中するとともに、来年春に予定されている第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の監督を誰が務めるのかという問題も浮上している。

 このなかにあって、当初はWBCでも星野監督の続投を希望していた読売巨人軍の渡邉恒雄会長も、一転して前回のWBCで指揮をとった王貞治監督の名前をあげ、世間の耳目を集めた。

 だが、考えてみれば、ひとつの球団のトップにすぎない人物が、このように日本代表監督の選考をめぐって注目されるというのも妙な話だ。逆にいえば、それだけ巨人という球団が日本球界で大きな権限を握っているということだろう。

 そんな巨人が、選手獲得にあたり暴挙ともいうべき手段に出て、球界に激震を走らせたことがあった。いまからちょうど30年前の1978年に起きた、いわゆる「江川事件」である。

 この年のドラフト会議前日の11月21日、巨人は野球協約の盲点を突き、江川卓投手と電撃的に入団契約を結んだ。セ・リーグ会長は即日これを否認したが、それでも巨人は頑強にこの契約の正当性を主張し、翌日のドラフト会議をボイコット、さらにはリーグ脱退までほのめかしている。

 江川事件によって「G-DNA」ともいうべき毒性の強い遺伝子がばらまかれ、日本球界のいたるところに植えつけられた、と著者はいう。本書は、この事件の真相を検証するとともに、その深層、すなわち巨人を軸とする球界の本質まで迫ろうというものだ。

 著者の坂井保之は、1970年に東京オリオンズの渉外部長として球界入りし、西鉄からライオンズ球団を買い取った福岡野球株式会社(1973~78年)、その福岡野球から球団を買収した西武でそれぞれ球団代表を務めた。さらに福岡ダイエーホークスの代表を経て(1989~93年)、現在はプロ野球経営評論家として活躍している。

 実は、福岡野球時代のライオンズ(当時の球団名はクラウンライターライオンズ)は、1977年のドラフトで江川との単独交渉権を獲得していた。著者は、その翌年、西武ライオンズ代表就任直後に起きた江川事件を、いわば一当事者として経験することになる。

 当初より巨人入りを強く希望していた江川のガードは固く、ライオンズは一切交渉ができないまま、当時の野球協約に定められた交渉期限である翌年度のドラフト会議の前々日(1978年11月20日)を迎えた。巨人が江川と唐突に入団契約を結んだのはまさにその翌日だった。

 このときの巨人の言い分は、協約上、ドラフト会議の前日は、江川選手の身分はフリーであり、どの球団と契約してもかまわない、というものであった。

巨人のワガママそのものが問題なのではない

 当然ながらこんな解釈は誤りである。「空白の一日」は、次の日に控えたドラフトのため事務上の予備日であり、全球団の新人契約が禁止されているというのが暗黙の了解だった。

 結局、この年のドラフト会議は、先述のとおり巨人が欠席したまま行なわれ、新たに阪神タイガースが江川との交渉権を得た。これに対して巨人は、自分たちの出席しないドラフト会議は無効であり、阪神の交渉権にも根拠はないと提訴、さらにそれが受け入れられない場合の措置としてちらつかせたのが、自球団のリーグ脱退だった。

 結論からいえば、江川と巨人との「空白の一日」における契約は最後まで認められなかったものの、金子鋭(とし)コミッショナーの「強い要望」により、江川は阪神から巨人へのトレードという形で巨人入りを果たすことになる。

 もちろん、著者は当事者の一人としてこのような幕引きに、当時もいまも憤っている。ただ、だからといって、この事件を巨人という球団が仕組んだ独りよがりの横暴な不法行為であったと一言で切り捨てることはしない。

 「G-DNA」は、江川事件のような形で病気を引き起こしてもきたが、一方では日本プロ野球の飛躍的な発展の養分にもなっているからだ。巨人戦が長らくセ・リーグのドル箱であったことは、その何よりの証拠である。

 ようするにこの問題は構造的なものであるがゆえに、単に批判するだけで排除できるようなシロモノではないと著者はいうのだ。

 「G-DNA」の負の側面は、今年春、アメリカのメジャー・リーグが、東京ドームでボストン・レッドソックスとオークランド・アスレチックスによる開幕戦を行なったときにもあらわれた。

 このときすでにパ・リーグは開幕していたのだが、メジャー・リーグは、本来なら相手国の立場を尊重して開催を遠慮するという慣行を破って興行を行なった。しかも、事前に企画を可否する側である、日本の各球団の代表による実行委員会もこれに反対しなかった。

 著者は本件について、実行委員会の前に、メジャーを招聘する読売グループサイドから根回しがあったものと見る。ここから反対意見をなかなか言い出せない空気が生まれ、各球団の代表たちは口をつぐんでしまったのだろうというのだ。

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