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家族以外は気にしないでオッケー!『ひろさちやの「無関心」のすすめ』
~図太さは最大の防御なり

  • 大塚 常好

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2008年9月24日(水)

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「無関心」のすすめ

「無関心」のすすめ』 ひろさちや著、青春出版社、1300円(税抜き)

 先日、取材でニューロンの再生などを専門とする脳科学者にお会いしました。

「自分は今のままでいいのだろうか?」

 その脳科学者によれば、こうした漠たる不安や焦燥感が人の情熱を駆り立てるのだそうです。不安は強烈なモチベーションとなり、「ここに立ち止まっていないで、次に進みなさい」という指令を脳に与え、アクションを起こさせる。その結果、満足いく答えが得られれば、脳内にドーパミンが放出され、「成功して感動した」という快感、幸福感とともに、海馬に成功のイメージが焼き付けられる。不安→情熱→成功のループをうまく循環させたら、人は成功体質になれるとのことでした。

「常に進歩し、向上しろ」「現状にあぐらをかかず、努力すべし」

 私たち日本人には、何歳になってもそんな叱咤の言葉がついて回りますが、それらは脳科学の理論にかなった成功体質を呼び込むためのものだったのです。

 しかし、本書は科学的であろうとなかろうと、「世間」が押し付けてくる、有形無形の常識や価値観、モノサシのすべてを捨て、「無関心になれ」と訴えます。「進歩・向上しろ」という叱咤に関しても、現在の自分は悪い・ダメだという「自己否定」を前提にした、むしろ後ろ向きの考え方だから、進歩・向上などいらぬ、と言います。今の自分を壊しながらの飽くなき成長欲求、プラス思考によって、より強い自分を構築しようというビジネス書や自己啓発本とは真逆の論理であります。

 著者のひろさちや氏は東大哲学科を卒業し、仏教を中心とした宗教の神髄を400冊以上の本で説いてきた70代の宗教思想家。老後の不安やお金の心配、人間関係の軋轢……人生のあれこれに憂うのではなく、無関心=「あとは野となれ山となれ」の精神で、現状を受け止め“今を楽しむ”ことが今の日本人には必要だと言うのです。

お金に無関心になるのは難しいけれど

 が、そうした哲学が備わっていない未熟者にとっては、「え!?」と違和感を抱かざるをえない見解がないわけではありません。例えば……。

 金持ち=豊かという世間の常識にも釘をさします。「お金に無関心になれ」と言うのです。

 金銭欲は際限がありません。もっと稼ぐために、さらに仕事にのめりこめば、分刻みのスケジュールに忙殺される。それのどこが豊かなのか。どんな金持ちも絶対に買えないのが時間です。

 ……という主張までは理解できます。ただ、イエスは「金持ちが天国に入るのは駱駝が針の穴を通るより難しい」と言い、曹洞宗を開いた道元禅師は「なまじ財多くなれば、必ずその志を失う」と言っている、だから、〈貧しくてもそれを幸せと受け止めよ〉というのは一般ピープルにはハードルが高いかもしれません。

 たぶん、そうした遁世観、達観の境地に俗世間の住人はうまくなじめない。現実問題、いい家や車を持って、おいしいものを食べたいといった欲求を叶えるにはお金が必要ですから。

 しかし本書の真骨頂は、冒頭にも触れたように生き方や働き方にも「無関心力」を導入すべし、という点にあります。働いて働いて「豊かな老後」や「勝ち組」を目指す人生をやめる。したくない仕事を一生懸命することは、ばかばかしい。仕事などしたくなきゃサボればいいし、つらかったら手を抜けばいい。そう明確に語り、こんな江戸小噺を引用します。大家と若者の会話です。

大家:若いもんが昼寝なんかして、いったい何を考えているんだ。若いうちはせっせと働け。
若者:せっせと働いたら、どうなるって言うんですか?
大家:そりゃおまえ、働けば儲かる。
若者:儲かったらどうなるんで……?
大家:儲かりゃ、店の一つでも持てるじゃないか。
若者:店が持てたら?
大家:店の人に働いてもらって繁盛すれば、あとは番頭さんにまかせて、ゆっくり昼寝ができる身分になれるんだ。
若者:おいら、その昼寝をいまやってるとこなんだけど……。

 こんな怠慢を2008年の今、堂々とできる人、いないです。でも、「幸なるかな、貧しきもの」というスタンスの著者は、有給休暇も自分の都合を最優先させてどんどん取れ、アフター5の誘いもばんばん断れ……と。成果・能力主義の時代、恐らく、リストラは必至でしょう。

 少なくても出世は困難ですが、そんな時、昇進した同僚や部下をうらやんで、自分の不甲斐なさを恥じていては「無関心力」は乏しいのです。

〈世間的な出世競争で同僚に先を越されたというのが「いまここでわたしが生きている」姿なのだから、その姿のまま堂々と生きればいいんです〉

「希望」の奴隷になるな

 多くのビジネスマンは将来の夢を持ち、数値目標を立てて働いています。いつまでに何をするという人生設計の戦略なしに成功はないと考えています。しかし、著者は〈くそまじめすぎる人たちほど、希望を持ったとたん、その希望の奴隷になる〉と言います。

 希望の奴隷。

 例えば、「家を建てて一人前」だと、夢のマイホームを購入したものの、収入が減ってローン返済に苦しむ。また、先日、大勝ちしからと再びパチンコにお金を注ぎ込み大損する。さらには、「より上へ」とエンドレスの上昇志向であるがゆえに、心身ともに疲れ切る。うつ症状にもなる。世間がおしつけてくる“常識”を捨てていかないと、いつのまにか希望の奴隷と化すというのです。

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