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ドラマで読み解く中国の軍事~『人民解放軍は何を考えているのか』
本田善彦著(評:尹雄大)

光文社新書、760円(税別)

2008年9月24日(水)

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評者の読了時間2時間00分

人民解放軍は何を考えているのか──軍事ドラマで分析する中国

人民解放軍は何を考えているのか──軍事ドラマで分析する中国』 本田善彦著、光文社新書、760円(税別)

 2000年以降、中国脅威論が喧しい。その背景には、日本はいずれ伸長著しい中国経済の後塵を拝するのではないかという脅えが垣間見える。

 反日暴動やネットで形成される世論など、偏狭なナショナリズムの台頭に対する苛立ちもあるだろう。

 傾聴すべき指摘の中に、経済成長に伴う軍拡路線への懸念がある。天安門事件やチベットでのデモ弾圧など、容赦のない武力行使を世界に印象づけた人民解放軍だ。軍事力の強大化が隣国の疑心暗鬼を招くのは当然だろう。何せ人民解放軍の規模は225万人。自衛隊の約10倍の兵力はそれだけでも警戒心を抱くに十分だ。

 他方で軍事評論家たちは、人民解放軍の装備は戦車、航空機ともに70%が2世代前の旧式であり、必要以上に恐れることはないと口を揃えていう。国防予算の過小申告という疑念はあるものの、経済発展を背景に装備の現代化に努めているのが実情のようだ。

 本書の著者は、台湾在住のジャーナリストであり、そうした分析を行う軍事専門家ではない。

 しかも〈外国メディアが人民解放軍を取材する場合、対外用にディスプレイされたお手盛りの演習を見物したり、当局から接触を許された人物にインタビューしたりするのが関の山〉だという。素人がただでさえ不透明な人民解放軍の何を語ることができるのか。

 だが、窓は意外なところに開いていた。それが「軍旅片」「軍事片」と呼ばれる軍隊ドラマだ。中国のテレビでは、人民解放軍を扱ったドラマがひとつのジャンルとして確立しているという。著者はこのドラマから現代化を図る人民解放軍の抱える問題や、兵士の日常を反映した情報を汲み取ろうとする。

軍事ドラマは思想教育の最前線

 情報といってもドラマから著者が拾い上げるのは、新型兵器や作戦といった軍のハードではなく、兵の心情や思想というソフトである。

〈どのような兵器であれ、作戦であれ、実際に戦場に立つのは生身の将兵たちです。彼らの頭の中や胸の内をのぞいてみることは、戦略・戦術を考えるうえで、実はもっとも大切なことではないか〉

 人民解放軍は、共産党の武装組織として創設された。党は人民を領導する存在であり、党の前衛は軍である。

 党はそうした軍の性格を堅持するため、兵士の忠誠心の涵養に余念がない。また軍は人民に支持されるため、自らの存在を〈国内に向けてつねに賞賛し宣伝しなければならない〉存在でもある。

 つまり人民解放軍の内外に発信する情報は、プロパガンダが基本である。ドラマもプロパガンダの手段であり、「軍の核心思想を宣伝する」ことが求められる。核心思想とは、軍が人民にとってかくありたいと願う姿であり、また、受け取ってもらいたい姿でもあるだろう。

 ただし、プロパガンダといえどもドラマである限り、エンターテインメント性は必要だ。やたらと軍を翼賛するだけの内容では、視聴率もとれない。家族の絆や恋愛といった娯楽の要素を含みつつ、現実を踏まえ、問題を克服するという刻苦勉励のストーリーが求められる。

 党の懸案を如実に表した「沙場点兵」は、そういう意味で格好の作品だ。同作は軍の演習をテーマに、旧弊から脱する必要性を訴えたドラマで、当局の評価も高いという。

 〈軍隊内部で日常化した形式的な演習など、ストーリーの大多数は部隊の実情を反映させた〉と監督が話すように、演習で部隊同士が馴れ合う様子や、模擬戦闘で恐怖のあまり失禁する新兵など、士気の低下ぶりが描かれている。そこで強調されるのが、軍の精鋭化と情報化である。

 06年に発表された中国の国防白書に「21世紀半ばには情報化された軍隊の建設を実現させ、情報化戦争に打ち勝つ戦略目標を実行する」という一節が見られる。情報化は中国にとって焦眉の急である。

 ドラマの中では、軍幹部がアメリカ軍のイラクでの作戦行動の映像に見入るシーンが登場するという。そこにはハイテク装備の彼我の差を痛感しつつ、アメリカは〈中国にとって最大の脅威であるととともに学習対象である〉というメッセージがうかがえる。

 その一方で、情報化の前途が多難であるのを示唆することも忘れない。

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