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「イチローは他人事」刺激を与えられなくなった日本人

「開発経済学」から考える社会的ストレスへの処方箋

2008年10月2日(木)

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 前編では、国及び地域社会に対する外部からの刺激と反応という点からストレスを考えてきた。新たに導入された市場経済はバングラデシュに貧困をもたらした。だが、人々は市場経済によるストレスを、状況を変化させる手段として活用しつつある。その一例がグラミン銀行によるマイクロクレジットだ。

 貧困層を対象にしたグラミン銀行のマイクロクレジットの画期的なところは、責任と努力を果たせるスタートラインに立たせたことだ。中でも、その大きな特徴は女性を対象とした点だ。

 バングラデシュは極度の男性優位社会で、これまで女性は外出の自由はほとんどなく、独自の経済力も持ち得なかった。だが、女性たちはマイクロクレジットを通じ、商売を始め、自前の経済基盤を築けるようになったという。バングラデシュでは、そうした人たちの活躍が1つのロールモデルとなり、市民に活力を与えているようだ。

 生活の質を高めようとストレスに抗して生きる彼女たちの姿は、閉塞感に包まれている日本人にとっても大いに参考になるだろう。前編に引き続き、山形さんに話を聞いた。

--マイクロクレジットの導入から30年近く経ちますが、バングラデシュの社会はその影響をどう受け、何が変化したでしょうか?

山形:まず女性が活動的になったのは間違いないでしょう。インド文明圏共通の習慣に「ダウリ(婚資)」があります。これは女性の家族から結婚した先の夫の家族に渡されますが、その額が低いといって妻をなじり、暴力を振るうといったことも起き、ときに殺人に発展することもあります。

山形辰史(やまがた・たつふみ) 慶應義塾大学経済学部卒業後、アジア経済研究所入所。開発経済学、バングラデシュ経済を専門分野とする。主な共著書に 『開発経済学:貧困削減へのアプローチ』(日本評論社)、『やさしい開発経済学』(アジア経済研究所)など。

山形辰史(やまがた・たつふみ)慶應義塾大学経済学部卒業後、アジア経済研究所入所。開発経済学、バングラデシュ経済を専門分野とする。主な共著書に 『開発経済学:貧困削減へのアプローチ』(日本評論社)、『やさしい開発経済学』(アジア経済研究所)など。

 また、夫が亡くなったら妻も殉死を迫られるなど、総じて女性の地位は低く、経済的、性的に収奪されています。

 バングラデシュでも、イスラム教の教えを厳格に守る女性は、外出の際、ブルカという黒い布を頭から被らなくてはならず、基本的に女性は外に出ないのが普通でした。けれど、マイクロクレジットの融資対象は女性です。週に一度はグループの集会に出なければなりませんから、家の外に出る自由を彼女たちは得ました。

 加えて、マイクロクレジットを通じ、それまで男性が握っていた現金を手にして、必要なものを自分の判断で買うこともできるようになりました。さらに書類に記入するため字を覚えるといった学習の機会も得ました。

「俺たちもやればできるかな」

--女性の地位の向上以外にも、社会の変化を促した事例はありますか?

山形:2000年の頃の話ですが、グラミン銀行はグラミンテレコムという無線電話のサービスを行う別会社を持っていて、アンテナの建設にあたっては、借り手の中の優秀な人に任せ、事業を展開していました。

 農村からかける電話の通話先は海外が意外と多く、携帯電話を持った人たちはマレーシアやサウジアラビアなど出稼ぎにいっている家族に連絡しています。

 おじいさんやおばあさんにとっては、電話の仕組みはよくわからない。なんだかわからないけれど、確かに息子の声が聞こえて、「送金してくれ」と伝えたら本当に送られてきたので驚いた、といった話もあります。

 人口密度の高さでいろんな情報が伝わりやすいから、電話ひとつとっても、そうした経験が重なる中で、社会の変化に順応する傾向は高まっていると思います。

 その一方で、特に地方の裁判では保守化が見られます。女性の地位の向上を快く思わない人たちもいるようですね。男性の特権的地位が脅かされると感じているのでしょう。警察の規律が地方まで徹底されておらず、その上、地方では地元のイスラム教有力者が裁判を行い、「石埋め一日」とか、その場で処罰を決める“フォトワ”という判決が問題になっています。裁判を民主的に行うことは大事です。

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