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まずい! マケインが選ばれちゃった~『アメリカの宗教右派』
飯山雅史著(評:後藤次美)

中公新書ラクレ、760円(税別)

  • 後藤 次美

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2008年10月6日(月)

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評者の読了時間3時間55分

アメリカの宗教右派

アメリカの宗教右派』 飯山雅史著、中公新書ラクレ、760円(税別)

 本書の冒頭には、こんな数字が紹介されている。

 アメリカではダーウィンの進化論を信じている人は、国民の約4分の1にしかすぎず、一方、神による天地創造説を信じている人は4割にものぼる。

 日本人にはにわかに信じがたいこの数字は、アメリカが現在なお、宗教国家であり続けていることを示しているようだ。したがって――

〈米国はピューリタンの移民の時代から、基本的には宗教国家と言ってもいい。欧州でも日本でも、近代化が進むと社会から宗教の影響が薄れて世俗的になってきたが、アメリカはそうではない〉

 と著者が語るように、宗教という視点を欠いたアメリカ論は、ニコチン抜きのタバコ、カフェイン抜きのコーヒーと同じで、ほとんど「論」の体をなさないはずだ。

 本書は、アメリカの政治や社会を理解するうえで、最低限知っておきたいアメリカの宗教事情を「宗教右派」という視角から概説したものである。具体的には、アメリカのプロテスタントの動向を辿りながら、宗教右派の勃興から現在までの運動史やその主張内容がコンパクトにまとめられている。

 読後感は歴史の教科書のそれに近く、もっぱら初学者に向けて知識の整理に徹した本であるため、著者独自の論や主張はほとんどない。新書としてはやや知識を詰め込みすぎたきらいもあるが、本書を読むことで、アメリカ政治を見るパースペクティブはずいぶんと広がるはずだ。

 著者の説明によれば、そもそも「宗教右派」という言葉に厳密な定義はなく、〈意味するところは、中絶や同性愛結婚の禁止などを主張して共和党を支援する宗教系の団体のことである〉という。

 では、宗教右派の運動はいつごろから勃興したのか。

 評者のような門外漢にとっては意外なことに、それは1970年代後半以降のことだそうだ。それまでのアメリカ政治は、1930年代のニューディール政策以来、リベラルの時代が長く続いていた。現代のアメリカで「リベラル」や「リベラリズム」は、「大きな政府」寄りの思想で、弱者の保護や手厚い福祉政策を支持する立場を指す。

「福音派を政治的に組織したら」と考えた男がいた

 宗教の世界も、この構図とほとんど合致する。アメリカのプロテスタントは、20世紀の初頭に、進化論など近代科学を受け入れる近代主義と、それを拒否して聖書を字句通りに解釈する原理主義とに大分裂したものの、〈1920~30年代には、近代主義者の勝利でほぼ決着がついた〉。近代主義者たちは、プロテスタント主流派として、政治や社会に積極的に関わっていき、公民権運動やベトナム反戦運動で大きな成果を収めることになった。

 つまり、70年代までのアメリカは、リベラルの時代であり、プロテスタント主流派(=近代主義)の時代だったわけだ。

〈そうした状況が変わって、福音派と原理主義者が再び政治に目覚め、アメリカ政治を揺さぶり始めるのが1970年代から80年代だった〉

 「福音派」とは原理主義者ほど厳格ではないが、聖書を歴史的な事実と考えているグループである。彼らは、〈成長してから自分の信仰心を確認するボーン・アゲイン(回心)の体験を重視し〉ており、この「ボーン・アゲイン」こそ福音派かどうかを分けるポイントだという。

 60~70年代のアメリカは、ほぼリベラル一色で、黒人差別撤廃、女性解放運動、同性愛者の解放運動など、差別撤廃に明け暮れた時代だった。こうしたリベラルな空気は政治だけにとどまらない。

〈ヒッピーたちは髪を伸ばし、マリファナやコカインを使用して瞑想にふけったり、物質主義に反抗して山奥で共同生活をおくったりし、性の解放を主張してフリー・セックスの風潮も広まった〉

 こうしたチャラチャラした風潮は、厳格な性倫理や家族の価値を重んじる原理主義者や福音派にとっては許しがたいものだ。

 彼らの不満に目を付けたのがニュー・ライトの政治活動家であるポール・ワイリックという人物だった。本書からの孫引きになるが、ワイリックは突然、次のような戦略が閃いたという。

「ちょっと待てよ。この連中(福音派)はものすごい数がいるけれど、誰も組織化していなくて、手が付いていない。そうだ、彼らを(保守主義陣営に)呼び込もう。彼らを組織化して、投票させよう。その結果、どうなるかは、見てのお楽しみだ」

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