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「価格を維持しながらインドやスリランカ産と対抗できる美味しさにしたい」

国産紅茶「水車むら農園」(静岡・藤枝市)の挑戦(3)

  • 若井 浩子

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2008年10月8日(水)

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 「既存の市場では、その論理の中で農産物の卸値が決められます。現在、米やお茶の値段は限りなく生産原価に近くなっている。それでもその最安値で売るしかない」。

総面積2町歩(1万8000平方メートル)の茶畑。畑作業は2人。年間10トン(紅茶4トン、日本茶6トン)の茶葉を農薬も化学肥料も使わずに栽培している。(写真/若井浩子、以下同)

総面積2町歩(1万8000平方メートル)の茶畑。畑作業は2人。年間10トン(紅茶4トン、日本茶6トン)の茶葉を農薬も化学肥料も使わずに栽培している。(写真/若井浩子、以下同)

 これでは農家はモチベーションを維持できません、と水車むら農園の二代目、臼井太樹さんは言う。

 維持できないのは農家のモチベーションだけではないだろう。和の食文化の維持、などと高邁なことを言う以前に、日本のように太陽と自然の恵み豊かな国に暮らしながら、そこで育った農産物を食べるという当たり前のはずの生活の維持が怪しくなっている。しかも、その状況は“消費者のニーズ”という出所不明のニーズによって作り出されているのだ。

 「僕たち農家は本来、農産物を作るのが仕事で、商品企画や販路の開拓は農業とは別の仕事のはずでしょう。でも現状は、独自にどれだけ契約先や販路を開拓できるかが農家の未来を決めるという状況です。

 いくら作りたくても、売れないものは作れないんですから。作ったものに対して、適性な売値を主導権を持って決められるようになっていくことが重要です」(同)。

 売れないものは作れない──。その言葉を消費者行動に当てはめれば、「買わないということは、いらないと言っていること」になる。これは紅茶の話と言うよりも、熱意ある生産者が作った国産農産物全般に対して、消費者(あるいは既存の市場)がどう答えていくか、という話だ。

独自の市場で適正価格で売る

「べにひかり」は中国種とアッサム種を交配し日本で作られた紅茶品種。昭和46年(1971年)に品種登録された。

「べにひかり」は中国種とアッサム種を交配し日本で作られた紅茶品種。昭和46年(1971年)に品種登録された。

「水車むら農園の販路の内訳は、無農薬農産物などを扱う企業(生活協同組合、自然食品店、宅配事業など)を扱う企業への卸が65%、直販(小売り)が35%です。

 直販に関しては、20年にわたってうちのお茶を買ってくださるお店が北海道から九州まであります。特に北海道では100店以上のお店とと取り引きがあります。直販35%のうち、インターネット販売は5%ほどです」(同)。

 水車むら紅茶の小売り価格は、日本茶葉とも共通のやぶきた種で作った「五月紅茶」が100グラム1040円、「七夕紅茶」が740円、紅茶品種の「べにひかり」が1270円、「べにふうき」が40グラム700円だ。

 それぞれ少しずつ値段が違うが、やはりそのパッケージによって値段に違いのある一般的な輸入紅茶とほぼ同等、むしろ手頃な価格だろう。

 「この価格を維持しながら、インドやスリランカ産の紅茶と対抗できる美味しさにしていくことがこれからの課題」と太樹さんは言う。

乾燥・揉捻の加工によって一定の香味を追究する

 外国産の紅茶の強みは、低賃金労働が可能にしている一芯二葉の手摘みならではの香り高さだけではない。茶葉はその他の農産物同様に、生育時期の天候によって出来不出来がある。そのばらつきを茶葉のブレンディングで調整し、一定の風味と香りを作り出せるのが最大の強みだ。

「べにふうき」も戦後日本で開発された紅茶品種。平成5(1993)年に品種登録された。

「べにふうき」も戦後日本で開発された紅茶品種。平成5(1993)年に品種登録された。

 ある畑のものは「今期は甘味は出たが香りが今ひとつ」とか、この畑の茶葉は「香りはいいが味と水色が出ない」などなどの茶葉の長所と欠点を、熟練のブレンド技術で補い、××紅茶の○○ラベル、と言えば、消費者がその香味をイメージできるような製品を安定的に作り続けている。その技術の歴史と伝統こそが、有名ブランド紅茶のブランド商品たる所以だ。

 確かに2町歩(1万8000平方メートル)の水車むら農園の規模では、あの土地の畑の茶葉とこの土地の畑の茶葉を合わせて……というようなことはできない。

 「だから、その時に収穫(*1)した茶葉の特徴を見極めて、乾燥の方法や揉捻の時間などを調整するのです。加工を調整することで同じ茶葉でも味が違ってくるので、製造ロットごとに調整すれば味や香りをある程度理想に近づけることができる。その上でブレンドを工夫することもできるでしょう。

 現在、工場での作業は時期によって2~6人でやっていますが、加工作業をきめ細かくしていくためにもまだ努力できることがいろいろあると思っています」(同)。

(*1)日本の茶畑は一般に収穫は機械摘み。機械で上部数センチを伐採する設定で正確に新芽を摘むために、生育期間は茶木の頭が一定に揃うように剪定されている。

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