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『生活保護が危ない〜「最後のセーフティネット」はいま〜』 産経新聞大阪社会部著、扶桑社新書、760円(税別)
〈「普通に暮らしていきたい」と思っていても、リストラや病など、ほんのわずかな偶然が重なれば、いつ貧困に陥ってもおかしくはない〉
本書のこの指摘に、あなたは「そうかもしれない」とうなずくだろうか。それとも、「そんなばかな」と鼻で笑うだろうか。
いま自分の身に降りかかっていなくても、現代の日本において貧困は身近になりつつある問題だ。
もっとも、関心はほぼ「貧困は増えているのか」という数値的な問題に集中している。ニュースで、やはり増え続ける生活保護の現状に触れる場合も、大抵は、「弱者切り捨て」の行政バッシングか「不正受給」の受給者モラルバッシング、そのどちらかで語られてしまう。
だが、「弱者」のはずの人が事件を起こすこともあれば、「強者」である行政側が真剣に手を差し伸べることもある。入り組んでいる現実から目を逸らし、善悪や強弱の二元論で斬ることは、結局はこの問題の本質から遠ざかることになるのではないか。
そうした問題提起の意味を込めて、産経新聞大阪社会部は、生活保護の現場をめぐるルポ「明日へのセーフティーネット」を企画。2007年4月から今年の3月まで、1年に渡り取材、新聞紙上で連載を続けた。その記事に加筆、再構成して書籍化したのが本書だ。
この中で繰り返し訴えられていたことは、現在の生活保護制度の制度疲弊と運用に対する不信である。最近よく耳にする“年金支給額や最低賃金”と“生活保護費”のアンバランスは、その一例だ。
年金より、最低賃金よりたくさんもらえる生活保護
たとえば、厚労省のHPにある「平成20年度生活扶助基準の例」では、東京都の高齢者単身世帯では約8万円、高齢者夫婦世帯で約12万円となっている。これに加えて、住宅扶助、医療扶助なども支給される。本書のあるモデルでは、65歳の単身世帯の場合、生活扶助と住宅扶助で12万円以上と算定されていた。
一方、国民年金を見てみると、40年かけ続けても老齢基礎年金の支給額は一人6万6000円余り。これで住居費も医療費もまかなわなくてはいけないことになる。
また、北海道や青森など12の都道府県では、生活保護世帯の保護費が、最低賃金で働く労働者の収入を上回っているとの新聞報道もあった。本書の中にも、「真面目に働いて年金を納めるより、生活保護をもらうほうが楽ではないか」と逡巡する人たちがいた。
他にも、それはおかしいと声を上げたくなる生活保護をめぐる事象が紹介されている。
生活保護法上の医療補助は、全額、行政負担でまかなわれる。これを悪用し、身寄りのない高齢者や精神障害者などに過度な治療を施して、不正な診療報酬を得ていた旧安田病院グループの事件があったが、そのノウハウは多くの病院に受け継がれているという。
年金を担保にお金を借りることのできる年金担保貸付という制度がある。貸付を受けて、多重債務の返済やギャンブルなどでその貸付金を使い果たした末に、生活保護を受ける例も後を絶たないらしい。つまり、生活保護費で年金の返済と現在の生活費が工面されていることになり、これは税金からの二重受給に映る。
本当に保護が必要な人にきちんと届いていない、保護費に比べて最低賃金や年金の給付額は低くコントロールされているといった不公平感。実際の生活保護受給者は、本来この制度を利用することができる貧困層の2割程度と推計されている。
かと思えば、一旦保護を受けてしまうと、そこから自立できずに長期化してしまう受給者が多い。受給している当人たちは、実際は生活保護によって肩身の狭い思いをしているケースもある。
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