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出番が来たぜ『容疑者ケインズ』
~おカネが動かない本当の理由を教えます

  • 荻野 進介

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2008年10月15日(水)

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容疑者ケインズ――不況、バブル、格差。すべてはこの男のアタマの中にある。

容疑者ケインズ――不況、バブル、格差。すべてはこの男のアタマの中にある。』小島寛之著、プレジデント社、1143円(税抜き)

 戦後最長という景気拡大(好況)もそろそろ終わりを告げ、逆に不況モードが強まっている。米国の金融破綻がそれに拍車をかけ、世界同時不況の危険性も高まってきた。

 ところで不況はなぜ起こるのだろう……。頭をひねったあなた、「お金(貨幣)が好き」という、人々の一般的性向が不況を引き起こす真の要因である。そんな意外な論説があったら、「読みたい」と思われないだろうか。しかも、それを唱えたのが、誰あろう、経済学のスーパースター、ジョン・メイナード・ケインズだとしたら。

 本書は分量わずか150ページ足らず、新書もどきの単行本といった風情だが、難解で有名なケインズ理論を、その誤謬も含め、コンパクトに解説している。あわせて「意思決定理論」や「選好論」といった最新の経済理論とケインズのそれとの符合を指摘、一部で「役目は終わった」との声もあるケインズ理論を救い出し、その先見性に新たな光をあてる。

 ケインズの主著といえば、資本主義の不安定性、つまり不況の不可避を論証した『雇用・利子および貨幣の一般理論』(以下、『一般理論』)である。

 そもそも不況とは、需要が供給を下回り、経済活動が落ち込んだ状態のことだ。ケインズ以前の伝統的な経済学は、価格や賃金が、不況を脱するための重要な調整弁となる、と考えた。売れ残った製品は価格を下げれば在庫が一掃されるし、失業者が増大した場合、安い賃金でも働きたいという労働者が沢山いるだろうから、失業者を減らすことは簡単、というわけだ。

 しかしケインズによれば、価格や賃金は不況を脱する調整弁にならない、という。実際に供給が需要を上回った場合、生産の抑制や雇用調整が行われるほうが自然というわけである。確かに、これは我々の実感と合致する。売れないから、といって、簡単に物の値段は下がらないし、正社員の賃金も下げにくい。人件費の抑制には、リストラや採用減といった雇用量の調整のほうがよりメジャーなやり方だろう。

公共事業は景気回復には利かない。が

 つまり、ケインズはこう考えたのである。不況になったら価格変化が速やかに起こり、好況へと転じる重要なきっかけになる、と考える従来の経済学は間違っている。価格変化は、そううまくは起こらない。従来の経済学が差し出す処方箋では、企業の在庫や余剰人材は増え続ける、不況はどんどん慢性化してしまう、と。

 これに対するケインズの対処の仕方が、そう、有名な、政府による公共事業の推進である。働けるのに失業している労働者や遊休状態にある設備や機械があるなら、政府がお金を出して、仕事を発注すればよい、という考え方だ。「穴を掘って、それを埋める」ような、意味のない事業であっても、やったほうが景気浮揚に効果があるとケインズは考えていたという。

 20世紀中盤から後半にかけ、このケインズの考えが、多くの国で景気の下支え策として採用されたのは記憶に新しい。いわゆる「大きな政府」論である。しかし著者は、経済学者・小野善康の論文を下敷きに、「公共事業による景気浮揚対策」の無効性を解説する。

 ポイントは国民の「可処分所得」にあるという。公共事業が行われ、事業費分の報酬が労働者に付与されたとしても、事業費分の報酬はもともと税金なのである。したがってマクロで見れば、結局、国民の可処分所得はビタ一文、変わらない。公民館や高速道路ができても、自分の可処分所得が増えない限り、人々が景気上昇の実感を得るはずがない、というわけである。

〈つまり、公共事業を行ったからといって、それが国民の所得を増加させ、景気を浮上させるわけではない、ということだ〉

 しかも、その公共物が「穴を掘って埋めた」ような価値しかない場合、税金が無駄に使われ、国民が損をするだけだ、という。

 では、ケインズは単なるホラ吹きだったのか。そうではない。著者は、ケインズ理論を「救済する道」として「経済格差」に着目する。すなわち、公共事業には失業者への所得移転効果があるというのだ。

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