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大恐慌の淵に立つ今、考える~『景気ってなんだろう』岩田規久男著(評:田中秀臣)

ちくまプリマー新書、760円(税別)

  • 田中 秀臣

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2008年10月16日(木)

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景気ってなんだろう

景気ってなんだろう 』 岩田規久男著、ちくまプリマー新書、760円(税別)

 自分の人生でまさか遭遇することはないと思っていた経済的事件──世界大恐慌。まさにその瀬戸際でこの書評を書いている。

 アメリカのサブプライムローン問題を契機にして始まった世界的な金融危機は、9月のリーマン・ブラザーズの破綻、AIGの公的救済によって大規模な信用不安を世界中に引き起こしてしまった。アメリカ財務省、FRBはもちろんのこと、G7に属する各国の政策担当者は必死に市場のメルトダウンを防御している。

 この状況がどう推移するのか、いまの段階では不透明だ。さらに銀行、証券会社などの金融システムをどうにか安定させることができてもさらなる試練が待っている。この世界バブル崩壊ともいわれる事態がまもなく引き起こすであろう世界的な不況である。そのとき日本はどうなるのだろうか?

 そもそも日本は「失われた10年」という長期停滞にあり、ようやくここ数年「景気回復」を経験していた。しかし最近のエコノミストたちの予測では、すでに日本は不況局面に嵌っており、政府もようやくその事実を渋々認めた。サブプライム危機やこれから起るであろう世界不況に先んじて、日本はすでに景気悪化を経験しているのである。それが世界不況によってよくなることはありえず、一段の悪化が今後予測される。

 だが日本の「景気回復」でさえ実感できるものではなかったのではないか?

 「経済格差」(都市と地方、大企業と中小企業、そして正社員と非正社員との所得格差)は深刻になってきたといわれ、そして「景気がいい」といわれている業種や企業で働いていた人たちでさえ、「自分の懐はそんなに暖かいのだろうか、むしろ石油や食料品の高騰でますます生活が苦しくなっているだけだ」と思っていただろう。

 もちろん「景気が悪い」といわれている業種や企業、そして非正社員の人たちはさらに深刻だろう。なんでこんな実感のない「景気回復」が起きてしまったのだろうか。そして実感のないままいまや日本は不況に陥り、それがさらに今回の世界不況で深まるかもしれない。だがどれだけ悪化するのかだろうか? 不安は尽きない。

 このように日本の景気をめぐる問題は、今日の経済問題の多くを覆うものであろう。そして上記したすべての疑問に、本書は答えを提起することに成功している。

世界不況はどのくらい日本に影響するのか

 そのわかりやすい解説と鋭利な分析は、最近出版された経済ものの新書の中では出色の成果である。しかも読者自身が、手計算でも(もちろんエクセルや計算機を使えばより容易に)景気の今後の動向を数値として知る手法まで紹介している。本書の付論に収録された「イワタ流景気動向指数の見方」がそれである。イワタ式は内閣府がホームページ上で公表しているコンポジット・インデックス(CI)という景気動向指数を用いたものである。

 このCIには景気の動きに先行すると考えられる先行系列、景気の動きと一致する一致系列、さらに景気の動きに遅れて反応する遅行系列がある。CIは景気の強弱を定量的に計測しようというもので、いわば景気の勢い(景気拡張や景気後退の度合い)を伝えるものである。例えば今後、世界不況がどのくらい日本経済を悪化させるのか、その度合いを知るのにちょうどいい指数だ。

 著者はこのCIの先行系列の6カ月前・対比年率を景気予測で重視しているという。これはクレディ・スイスの白川浩道氏らが重視している手法でもある。確かに本書の説明をみると、CIの予測精度は高い。このイワタ流の景気予測を用いると、日本経済は〈〇六年一〇月頃から、景気は踊り場状態にあったが、〇七年一一月頃、あるいは、遅くとも〇八年三月には景気後退に入った〉と判断できる。

 これは重要な指摘だ。なぜなら本書の予測(僕はそれを全面的に支持する)をもとにすれば、日本の景気後退は、海外の要因(サブプライム問題の顕在化は昨年の夏である)に先行して、日本独自の要因によってもたらされたと思われるからだ。この日本独自の要因とは何か? その答も本書には用意されている。

コメント2件コメント/レビュー

『いまの与野党ともに推し進める減税や補助金などの財政政策が、効果がないかあってもわずかなものであることを立証している。』高橋洋一さんもマンデルフレミングモデルについて仰っていますね。2008年9月の朝生で、民主党の枝野さんに高橋さんがその話をしたら、『学者の絵空事には相手をしない』というような内容の事を仰っていて、大変残念でした。高橋さんも『そんな事も知らないのか』というのではなく、『そんな事をしても日本の国のためにならないんですよ』というように仰れば良かったのになぁ、とも思いますが。(2008/10/16)

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『いまの与野党ともに推し進める減税や補助金などの財政政策が、効果がないかあってもわずかなものであることを立証している。』高橋洋一さんもマンデルフレミングモデルについて仰っていますね。2008年9月の朝生で、民主党の枝野さんに高橋さんがその話をしたら、『学者の絵空事には相手をしない』というような内容の事を仰っていて、大変残念でした。高橋さんも『そんな事も知らないのか』というのではなく、『そんな事をしても日本の国のためにならないんですよ』というように仰れば良かったのになぁ、とも思いますが。(2008/10/16)

景気回復を実感できなかったのは、戦後の好景気やバブルを基準に考えてしまうからで、安定した低成長では満足できなかったことが原因ではないでしょうか。底を打って戻るのが景気回復であるはずですが、過去の好景気の水準まで戻したうえで、更に上に伸びる出なければ、経済成長を実感しにくいのかもしれません。また、金融政策に関しては、米国のようなクレジットによる個人消費が主体の国と、基本的に貯蓄を好む日本とでは、金融政策の実効性は大きく異なると思います。欧米と同じ金融政策が、日本においても同じように作用するかというと疑問です。何しろ1%以下の金利でも更に下げろと言う国ですから。(2008/10/16)

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