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20年前の「17歳」と何が変わっただろう
~写真家・橋口譲二【後編】

2008年10月24日(金)

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 写真家の橋口譲二さんが、日本全国を旅して各地の「17歳」を撮影した写真集『十七歳の地図』を文藝春秋から出したのは1988年。

 風景のなかに、ただ立つ。飾り気のない写真は当時、技巧を尽くした過剰な表現があふれるなかで、シンプルさが斬新だった。「17歳」の選択も選りすぐるのではなく、偶然にかける。そこで出会った人たちに頼む。ある意味、被写体は「誰でもいい」というアプローチ自体も意外なものだった。

 その後、角川書店などで新装版を出しなおすたび、新たな編集作業とともに橋口さんは長いあとがきで、時代の変遷を記してきた。

 また、収録した彼ら彼女たちの10年後を取材したロングインタビュー集『17歳の軌跡』(文藝春秋)も出した。この試みは、10歳ぶんは大人になった彼ら彼女たちのことばを通して、数字や記録などからは零れ落ちた実感、10年の世界の移り変わりが感じられるものだ。

 そして20年、いまの「17歳」を撮影した『17歳 2001-2006』(岩波書店)をこの春に出版した。

前編から読む)

── 写真を撮る前に、インタビューをされるんですよね。それは、どれぐらいの時間?

橋口譲二(はしぐち・じょうじ)氏

橋口譲二(はしぐち・じょうじ)
1949年、鹿児島県生まれ。1981年、路上に集まる若者をとらえた「視線」でデビュー、以来一貫して人間の存在を見つめるドキュメントを発表し続けている。作品に『17歳』『Father』『Couple』『職 1991~1995』『夢』『子供たちの時間』『17歳の軌跡』など。作家活動と並行して2000年より、カメラという身近な道具を使って自分の感情を発見し、表現する喜びを共有するワークショップや、ポートレイト写真と朗読を合わせた試み「スチルムービー」を国内外で行うなど、社会を意識した活動を続けている。ワークショップ活動を継続させるため、2003年にはNGO組織「APOCC」を創設した。

「だいだい一時間ぐらいですね、話を聞くのは」

── 「一緒に住んでいる人」「今朝の朝食」「好きな音楽」「最近読んだ本」「今まで行った一番遠い所」。用意されている質問が、この5つというのは何か理由があるんですか?

「そんなに難しく考えてはいないんですけど。この質問の答えを読むだけでその人となりや日常が分かるでしょう。引き続き『世界』で連載している『WOMAN』では、「現在の収入」と「これまで就いた仕事」を加えています。そのひとが今日までどうやって生き抜いてきたか。いま、どういう境遇にいるのかがわかるように。

 そういう意味では、質問事項は撮る対象によってときどきで変わってきていますが、『17歳』に関しては同じです」

── 最後のページの、山形の田圃の中に立っているヤマンバギャルの女の子の写真がすごくチャーミングなんですけど。

「僕は、世間でヤマンバギャルという言い方をされていることをすっかり忘れていて、彼女と会った瞬間、これは自然のなかで撮らないといけないと思ったんです。それで彼女の自宅の近くの田圃まで、僕の車でわざわざ行った。出会ったのは、別の場所なんですけど。

 それは、自然の中で撮らないとただ彼女を面白がるだけになると思ったから。『君んちまで行こう』と言って僕の車で一緒に。彼女のご両親も、おばあさんも、撮影のときには後ろの方で見ているんですよね」

── それって、いいですね。インタビューを読むと、彼女が仕事に責任感をもって、やりがいを感じているのが伝わってきます。

〈大切にしていることは、真面目にしていることかな。やる時はやる。農園の仕事は1年半続けていて、まだ遅刻とか欠勤とかもしたことがないです。一番若いけど仕事は全部まかされている。(中略)今は葉牡丹とシクラメン。土日、休みだから3日目の月曜日が気になってしょうがない〉

「朝山さんは驚きだとおっしゃるけど、僕ら=世間は、あふれるほどの情報のなかで、いろんな先入観と思い込みで、目の前に居るひとを見ていると思うんですね。でも、僕の本を見たたくさんの人が、彼ら彼女の思いに触れて、いい意味で裏切られるんですよ。自分の言葉できちんと自分をしゃべっているし、社会全体が破滅に向かって行きそうな中でもなんとか生きたいと思っている。どんな17歳も、人生を投げてはいないですから。学校に行っている子も、行ってない子も。

(写真集を手に、ちょっとツッパった男の子のところでめくる手を止め)彼なんかも『キレるように見えるかもしれないけど、自分の好きなところはキレないところ』と言ったりする」

── 体格がしっかりしていて、野球の清原っぽい風貌をしている。定時制高校に通っていているその彼が、保育士になりたいと答えているのがいいですね。

「僕らは、偏った情報のなかで生きているということを、この本を見ることでわかってもらいたいなというのは一つの思いとしてありますね。いかに世間に流れている情報というものが、流す側の都合で供給されているというのがこれでわかると思う、それと17歳を、社会を生きているパートナーという意識が欠落していて、消費の対象にしか見てないから、情報がかたよるのだと思いますよ」

「誰でもいい」という選択

 橋口さんは、偶然に出会ったひとを撮る。撮るのは「誰でもいい」という。その「誰でもいい」というのは、撮る側の重要な意図にもなっている。

 なかには、はきはきしゃべれない少年もいる。人と目をあわせるのが苦手という少女もいる。インタビューは、そんな一人ひとりのテンポにあわせて行われたものだというのが、工夫されたモノローグからも読み取れる。

「一人ひとりのモノローグを読んでいると、胸がつまるし、せつなくなるんですけども、トータルして全体でみると、みんな生きようとしているなという希望みたいなものが伝わってくる。さっきも話しましたけど、ほんとうにみんな生きることを諦めていないですよ。

 だけど、今、社会で起きている悲しい出来事を見たり聞いたりすると、自分は社会や物語から弾かれたと感じて、心が氷結していく人が存在する事実と、このギャップをどうやって埋めていくのか、繋いで行くのか、というのが表現に関わる僕らの仕事だという気がします。アートの存在意義というのかな」

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