いつしか音楽を聴かなくなってしまったビジネスパーソンに贈る本コラム。カバー曲を集めたコンピレーションアルバム「コトノハ)」を手がけた、元野村証券トップアナリストの佐藤明さんに、最新のお薦め曲を紹介していただきます
(詳細は「元野村のトップアナリストが掘り出したお宝銘柄…ならぬ「名曲」)。
戸田: 米大手証券のリーマン・ブラザーズの経営破綻を機に、世界を巻き込む金融不安が起きています。今の状況をどのようにとらえていますか。
佐藤: 投資家の時間軸が短くなり、長期的な視点を見失った結果ではないでしょうか。決算発表を見ても、年次だったのが半期となり、四半期となり、ついには月次にした会社も現れています。タイムラグのない透明な報告は好ましいですが、目先の数字ばかり追い求める経営は企業価値を創造するという観点からは決して好ましくありません。
米証券会社の破綻は、行き過ぎた短期化への警告ととらえることができます。今回、世界の株式市場が同時に下落したことで、市場経済そのものを疑う声がありますが、私はそうは思いません。リーマンなど投資銀行のような「短期市場主義(=投機)」の時代が終わり、株式投資で世界一の個人資産を築いたウォーレン・バフェットに代表される本質価値に基づく「長期投資」に流れが向かっていくでしょう。
時代で変わる指揮者の解釈

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー「ベートーベン:交響曲第5番『運命』&シューベルト:交響曲第8番『未完成』」
1954年の録音。演奏はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

パーヴォ・ヤルビィ「ベートーベン:交響曲第5番『運命』&第1番」
2006年の録音。演奏はドイツ・カンマーフィルハーモニー・ブレーメン
興味深いことに、音楽は“世の鏡”でもあります。尊敬するファンドマネージャーから「クラシックの演奏時間が変化している」という話を聞きました。それで、少し調べてみたことがあります。例えば、ベートーベンの交響曲第5番「運命」。名指揮者であるヴィルヘルム・フルトヴェングラーやオットー・クレンペラーの1950年代の演奏は約2100秒でしたが、60年代のヘルベルト・フォン・カラヤン辺りから速くなっていく。2000年代のパーヴォ・ヤルヴィは約1800秒。5分も速くなっているわけです。
もちろん、ベートーベンの楽譜は変わってませんし、テンポも書かれています。変わったのは、指揮者の解釈です。彼らに影響を与えるのは、時代のスピード感でしょう。私自身、音楽CD「コトノハ」を制作した際に、曲間の空け具合で迷いました。あまりに長すぎると手持ち無沙汰な感じになります。でも、レコードの時代は、曲間が長かったような気がするんですね。
ただ、このまま速くなり続けるのかというと、決してそうではなりません。1939年のアルトゥーロ・トスカニーニによる「運命」は1800秒だったのです。つまり、1800秒から2000秒になって、また1800秒になった。時代の時間感覚は短くなったり、長くなったりするのです。揺り戻しは必ず来るでしょう。
―― 閉塞感が漂う現状を打破するヒントも、音楽に見い出せますか。
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