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文庫で読もう、日本文学

『寺山修司』ちくま日本文学 筑摩書房 880円(税抜き)

  • 松島 駿二郎

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2008年10月24日(金)

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『寺山修司』ちくま日本文学 筑摩書房

『寺山修司』ちくま日本文学 筑摩書房

 先鋭な短歌、ちょっとひねくれたエッセイなどで、70年代の読者をサブカルチャー的に牽引した寺山。『血と麦』という短歌集などを夢中で耽読したものだった。

きみのいる刑務所とわがアパートを地中でつなぐ古きガス菅

悲しみは一つの果実てのひらの上に熟れつつ手わたしもせず

 寺山は競馬を書いて抜群だった。『誰か故郷を想わざる』というエッセイ集の中の一編『競馬』は秀逸だ。走り続けなくては鳴らない哀しい宿命の星の下に生まれたサラブレッドの生涯を、競馬場のダフ屋、おかま、などが登場して追っていく。華奢な脚を怪我したら、たちまち、食肉として売られていくサラブレッドたち。

 キタノオーザは菊花賞に勝った花形だった。ひたいに白い流れ星があり、鹿毛で見事な美丈夫、左の股下にHの烙印がある。Hとは北海道日高に生まれ育ったしるし。いわば「栄光のマーク」を持った馬だ。

 ところが、一向に出走の機会もなく年老いていった。厩舎では一度草競馬でも走らせるか、ということになった。これが転落の始まりだった。中央競馬のスターが地方競馬に出るというのは、国際劇場のスターが、ドサまわりするようなものだ。

 そして、捲土重来キタノオーザが中央競馬に再出場するというので、見に行くことにした。16頭立てで出走し、良い位置に付けていたのだが、第4コーナーをまわったところで、脚を痛めて脱落した。普通はここで食肉馬とされるのだが、キタノオーザは奇特な人に拾われて、北海道の紋別に向かった。

 それきり。
 誰も行き先を知らぬまに、行方不明。

 寺山はキタノオーザに別れの手紙を書く。フランスの詩人ジャコ・バン・メーレンベールの一節を添えて。

 旅の役者と
 空ゆく鳥は
 どこのいずこで果てるやら

 寺山のこの優しさが好きだ。

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