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「隠したら許さない、全部表に出せ」では、切りがない

「会社をダメにする法令遵守」の郷原信郎氏に聞く(3)

2008年11月12日(水)

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武田 少し話が変わるけれど、山岸俊男さんの『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』という本があるのですが、山岸さんの主張は日本人が信頼と思っていたのは、実は顔の見える共同体内での安心の構造だということでしょう。安心できる範囲の外側の人に対しては実はアメリカ人なんかよりはるかに不親切だし、信頼しないわけです。

 ところが、そんな日本でも今グローバリゼーションや、終身雇用制みたいなものの崩壊に伴い、個人が個人相手に何かをしないといけない状態になっている。つまり条件的にはよくも悪くもアメリカっぽくなっているにもかかわらず、日本では従来通りの安心におもねって個人レベルでの信頼構築というのが文化的にできてない。それも法令遵守の問題と絡んでいますね。

郷原 確かに今や信頼に基づく安心で成り立っていた関係をどんどん崩そうとしているわけです。代わりに何が表面に出てきているかといったら、たとえば、透明にしろという話ですね。これが去年からの偽装騒ぎなんです。事実と違っていたら許さない、隠したら許さない、全部表に出せという要求です。

武田 かつては、「あいつは自分とは一蓮托生だから、だますはずがない」ということで安心していた。ところが身内じゃなくなったときに、その安心がなくなっちゃう。で、違反していないんだったら裏まで見せろということになるんだけど、どこまで見たって切りはないし、見たって分かるものではないし、どこまで見ればいいのかと、切りはなくなるし。

 これじゃ辛いので結局は身内ではないんだけれども、この人に任せれば信頼できるという。専門家にある種、検証作業を任せざるを得ない。そういうことをちゃんと法で決めていく。安心社会から信頼社会に変わるときに、法治システムをちゃんとつくることによって、それをスムーズに変えていくという、そういうようなプロセスを取るべきだったのに、そういうことは全然しない。

メディアが悪者を作り、司法が登場する

郷原 医療もそうです。医療に対して何を求めるのかという根本の構造のところが、大きく変わっている。

弁護士 郷原 信郎氏

弁護士 郷原 信郎氏 (写真:陶山 勉、以下同)

 おそらく昭和20年代とか、30年代であれば、資格のある医者に診察をしてもらって、治療をしてもらって、医者の管理下で亡くなるというのはまともな生き方をした人の死に方であって、そういう医療が受けられないという人をなくしていこう、国民皆保険制度によって、すべての国民にそういう医療が提供されるという世界を守ることが、社会の価値観だったわけですよね。ところが、今はもう全然違うわけですよ。

 資格のある医師にもいろいろレべルの違いがあります。どれだけの技量を持った医師か、客観的にその医療のレベルが、世の中で必要とされる水準以上であったかどうかということを問題にする。さらに、自分が受ける医療は平均水準よりもっと高いものであってほしいというふうに、比較をし始めるという方向に大きく変わってきているんですね。

武田 週刊誌の病院ランキング特集とかひっぱりだこですよ。

郷原 ところが、国民皆保険制度という、国民全体に等しく、同質の医療を提供するというシステムが変わっていないから、大きな矛盾と混乱が生じるのは当たり前なんですね。

武田 今の医療がうまくいっていないのは確か。ただ厄介なのは過去の医者がちゃんと仕事していたかというとそうではないでしょう。

郷原 おそらく、過去の医療の世界では、もっととんでもないこともあったと思いますよ。表に出てこなかっただけで。

武田 それで納得していたわけですよね、ほとんどの人は。

郷原 医療に関する情報はすべて医師側が独占し、都合の悪いことは、最初から隠していたんですよ。しかし、当時の社会の医療に対する要請からすると、それはそれでも良かったということかもしれません。全体としては、ある意味ではバランスが取れてしまっていたということですね。これも安心社会だったということでしょう。

 今はそうじゃない。客観的なレベルが、一定のレベル以上の医療が提供されるべきだ、それを下回る医療は、医療を提供したものと見なさない、これは事故だ、過誤だというふうに言うようになった。

 でも、医療ってそんなに単純なものかといったら、客観的な質の問題だけじゃない。それは、やっぱり医師と患者との関係、納得度、どういう情報が与えられたか、きちんと説明されたか、いろいろな要素で医療行為の問題性のレベルが決まるんです。ところが、それをマスコミは単純化しちゃうじゃないですか。

武田 かつての医者が言うことは全部正しいんだと信じさせる風土を作ったのもマスメディアだし、今みたいに医者は必ず間違うという不信を作る点でもマスメディアの関与はあるわけです。どっちに対しても振幅を大きくしちゃっている問題があります。

郷原 そこで、必ず同じパターンになります。メディアが悪者にすると、次に司法が出てくるんですよ。医療過誤の問題が頻繁に刑事事件として取り上げられるようになったということです。

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