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4. お前ら「蟹工船」ばっか読んでる場合じゃないぞ!

葉山嘉樹「労働者の居ない船」

  • 千野 帽子

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2008年10月29日(水)

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 日直の千野です。9月から3週にほぼ2週は土曜出勤ですorz。全国の日直 ど も のみなさん、体はだいじにしてくださいね。

 さて、この連載の第2回「ワーキングプアと『第二の敗戦』。」第3回「エログロナンセンス時代の『見世物小屋』。」で、小林多喜二の「蟹工船」(1929/『蟹工船・党生活者』所収)のノワールで煽情的な側面を紹介した。

 小林には、昭和初年のエログロナンセンス時代にふさわしいモダンボーイという側面がある。「蟹工船」を読んでいると、映画やレヴューに代表される当時のサブカルチャーに親しんでいたのではないか、と思わせる、スピーディな文体やモダンな描写が目につく。

 さて、「蟹工船」にヒントを与えたとされる作家が存在している。近代日本文学に興味を持つ人なら、だれでもそのことは知っている。

 長篇小説『海に生くる人々』(1926)を書いた葉山嘉樹である。

 たしかに、転向前(1933年まで)の葉山嘉樹の作品にも、煽情的な部分がかなりある。そして「海に生くる人々」は「蟹工船」同様、こき使われてきた下級船員が我慢の限界に達して蜂起する、というストーリーであり、「蟹工船」より早く発表されている。

 しかしひとくちにプロレタリア文学といっても、じつは作家によってやっていることはまちまちだ。作家によって作風が違う、いやもうジャンルが違う。

 小林多喜二がノワールな味わいのヴァイオレンス小説だとしたら、葉山作品はもっとロマンティックで、ある意味「ゴス」な猟奇趣味に溢れたホラー小説なのだ。

*   *   *

セメントの樽の中の手紙

セメント樽の中の手紙
葉山嘉樹著、角川文庫、380円(税込)

 葉山嘉樹は、第一次世界大戦中、室蘭と横浜を往復する石炭船の若い乗組員だったことがある。その葉山の「マドロスもの」を代表する短篇「労働者の居ない船」(1926/『セメント樽の中の手紙』所収)では、経済効率ばかり追求する劣悪な労働環境が、恐怖譚の舞台となる。

 2001年の歌舞伎町の雑居ビル火災に見られるように、客商売で経済効率を優先するあまり、避難経路が確保できず、火事で多数の死者が出ることがあるが、作中の第三金時丸も、経営者がメンテナンスをケチっているせいで、船体にはあちこち穴が開いている。

〈錨を巻き上げる時、彼女の梅毒にかゝつた鼻は、いつでも穴があく〉。

船を〈彼女〉と呼ぶのは、英語で船をsheで受けるのを意識したもので、ちょっとモダンな翻訳調といったところか。

 飲料水タンクには海水が浸透してくる。こんな状況下で、船員の安田がコレラを発症してしまう。しかし労災という現代の常識は通用しない。

 労働者たちが、病氣になつても、その責任は船にはない。それは全部、「そんな體を持ち合せた労働者が、だらしがない」からだ。
 労働者たちは、その船を動かす蒸汽のやうなものだ。片つ端から使ひ「捨て」られる。

 なんという自己責任ワールド。そして〈だらしがない〉とは、このたびの世紀転換期に、仕事をすぐやめてしまう若者にたいして好んで貼られた形容語とまったく同じなのだった。

 航海中、船長の無慈悲のために安田は放置され、死んでしまう。やがて船内にコレラが蔓延する。船長命令で、水火夫室の下の倉庫のさらに下にある船首倉に、死体と病人たちを落としこんでしまう。

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