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再生医療の最前線へようこそ~『iPS細胞』
八代嘉美著(評:栗原裕一郎)

平凡社新書、660円(税別)

  • 栗原 裕一郎

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2008年10月27日(月)

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評者の読了時間4時間00分

iPS細胞 世紀の発見が医療を変える

iPS細胞 世紀の発見が医療を変える』 八代嘉美著、平凡社新書、660円(税別)

 南部陽一郎、小林誠、益川敏英三氏の物理学賞に下村脩氏の化学賞が続きノーベル賞フィーバーが巻き起こっているさなかの10月10日、京都大学の山中伸弥教授が、ウイルスを使わないiPS細胞製作に世界ではじめて成功したというニュースが流れた。

 再生医療の実現に向けた大きな一歩と報じられたのだけれど、ウイルスを使わないことがどうして「大きな一歩」になるのか、即座に理解できるでしょうか。

 iPS細胞は現在進行中の科学的イノベーションとしてはもっともホットなもののひとつだが、なにしろ生命科学の最先端であり、「クローンが出来ちゃうんでしょ、すごーい。それでES細胞と何が違うんですか?」といったアバウトな理解にとどまっている人が多いんじゃないだろうか。いや、自分がそうだったのだが。

 そこで本書である。一読すれば、技術的な仕組みとそれを支える生命科学のバックボーン、生命倫理問題および先端科学技術をめぐる特許争い、そして──ここが筒井康隆が帯に推薦文を寄せている由縁だろう──「iPS細胞とはいったい何なのか?」というSFチックな形而上的問いまで、この発明を取り巻く事象の全体像をおおよそつかむことができるだろう。

 「iPS細胞」というタイトルながら、全9章のうち第5章まで、ページ数でも半分以上が、じつはES細胞に割かれている。ES細胞を乗り越えるためにつくられたのがiPS細胞であるという歴史がふまえられているためだ。

 ES細胞の正式名称は「胚性幹細胞(Embryonic Stem cells)」。「胚」という文字に注目。「胚」とは子宮に着床する直前の受精卵を指す。ES細胞は胚から採取した幹細胞を培養したものなのだ。

 一方、iPS細胞の正式名称は「人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem cells)」。「pluripotent」は「多能性の」という意味で、それを人為的に「induced=誘導された」幹細胞だということだ。

 どちらもほぼ無限に増やせて、身体を構成するほとんどの細胞に分化させることができる。ゆえに「万能細胞」という呼び名がなかば定着してしまっているのだけれど、それは正しくない。ES細胞を子宮に戻しても胎児にはならないし、iPS細胞も同様である。ES細胞は胎盤をつくれないのだ。「万能」と呼びうるのは受精卵だけであって、それよりちょっと能力が落ちるので「多能性」と呼ぶのが正確だそうだ。

 さて、ES細胞には致命的な欠点がふたつあった。

ゲノムを「初期化」する因子を探せ

 ひとつは生命倫理の問題。胚というのは赤ん坊のモトであり、ES細胞はその胚をいわば壊してつくられる。生命を弄ぶ技術など言語道断であると、ローマ法王は強い批判を表明し、ブッシュ大統領はES細胞研究助成緩和法案に拒否権を発動した。

 もうひとつは拒絶反応の問題。臓器移植と同様に、第三者の受精卵からつくられたES細胞もまた拒絶反応を引き起こすのだ。

 iPS細胞は、この二つの難問を解決するべくつくられたものである。

 「多能性(pluripotent)」を「誘導された(induced)」細胞がiPS細胞だったわけだが、ゲノムを「初期化」する、と考えたほうがわかりやすい。

 身体というのは、たった一個の受精卵が分裂してできたものだ。受精卵が分化を繰り返すことでさまざまな細胞がつくられていくわけだが、分化が進むにつれて細胞からは多能性が失われていく。

 多能性がなくなるのは、遺伝情報の不必要な部分をメチル基という分子がロックしてしまうためだ(メチル化という)。ならばこのカギを外してやれば多能性は回復されるはずである。クローン実験などから、卵子にはこのカギを外す能力があることがわかっていた。

 ゲノムを初期化する因子を特定できれば患者の細胞からES細胞のような細胞がつくれるのではないか。山中教授はそう考えたのである。これなら胚も壊さないし拒絶反応のおそれもない。

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