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東京の北北東にある都市は? リオデジャネイロ!~『地図もウソをつく』
竹内正浩著(評:稲泉連)

文春新書、750円(税別)

2008年10月28日(火)

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評者の読了時間2時間00分

地図もウソをつく

地図もウソをつく』 竹内正浩著、文春新書、750円(税別)

 本書を読み終えると、地球儀を使って「あること」がしたくなった。

 そこで近所の雑貨店で小さな地球儀を買い、著者のすすめに従い用意したのは一本の糸。これを使って、東京とブラジルのリオデジャネイロを最短距離で結んでみる。すると糸を南東に伸ばすよりも、想像に反して北北東へ伸ばした方が距離は近いのだった。

 そうか、リオデジャネイロは日本から見て北の方角にあったのか──ブラジルと言えば太平洋を越えた「右下」の方にあると何となく思っていた私は、ちょっとしたショックを受けた。普段は当たり前と深く考えることもない世界像が、実は自分が思うほどには確固としたものではなく、とても曖昧な認識に基づいていることを突きつけられた気がしたからだ。

〈地球はその名の通りほぼ完全な球体をしている。本来、球形である地球を平面で表現する世界地図は、どんな図法を用いようと、どこかに無理が出てくる〉

 にもかかわらず日本を中心とした平面図に慣れきっている私は、著者の言う通り地球儀で実際に距離を測ってみてなお、やはりブラジルと言えば「右下」という気がしてしまうのだから、幼い頃からの刷り込みというのは怖い。

 そこを一歩進めて著者は次のようなことも指摘している。

 社会科や地理の授業でお馴染みだったメルカトル図法は、高緯度が肥大化するという欠点がある。するとただでさえ巨大なユーラシア大陸の北側が余計に大きく見え、日本列島は西側の大陸に圧迫されているような印象すら受ける。この図法が明治時代から庶民に身近だったことを考えれば、当時の人々の「恐露症」を助長するような作用もあったのではないか、と。

〈面積というのはいちばんわかりやすいイメージで伝わる。だからこそ、世界観を最初に形成する子どもたちに、面積を極端に歪めるメルカトル図法の地図を与えることは、有害にすらなりうると断じざるをえないのだ〉

 いわば、地図が変われば人の世界観も変わる。地図を題材とした手軽に読めるコラムが並ぶ本書は、そんなことを考えながら手に取るとより楽しめるのではないだろうか。

地図はおしゃべりで、ときにウソもつく

 著者が30のエピソードを通して描いて(楽しんで)いるのも、こうした特性を踏まえた地図との「対話」だった。

 地図は一見すると物静かな存在だけれど、例えば北海道の炭鉱町の盛衰を年代ごとに定点観測したり、同じく富山県の放生津潟が鋭角的な富山新港に変わる様子を追ったりすると、途端に「おしゃべり」になる。谷間に忽然と姿を現した街がみるみる発展したかと思えば、炭鉱の閉鎖と同時に衰退が始まり、ついには誰もいなくなった──そんな経緯が示される地図の変遷は、何の注釈を加えなくとも「昭和史」そのもののようだ。

 さらには1937年の支那事変勃発後、軍機保護法の改正を背景に行われた「戦時改描」などは、文字通りの「ウソ」を地図に入れ込んだ。

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