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遅咲きの花たちを見捨てない『キミも甲子園球児になれる!』
~非エリートを束ねる船長式リーダーシップ

  • 大塚 常好

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2008年10月29日(水)

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キミも甲子園球児になれる!

キミも甲子園球児になれる!』 成美堂出版編集部編、成美堂出版、1200円(税抜き)

 慶應義塾高校・野球部はこの夏、47年ぶりに甲子園に出場した。

 この高校には、いわゆる野球エリートはいない。ハンカチ王子こと斉藤祐樹投手が活躍した早稲田実業などと異なり、スポーツ推薦による入学の枠がないのである。しかも、地元・神奈川は強豪校揃いで全国屈指の激戦区といわれる。文武両道の進学校がそこを見事に勝ち抜いたのは賞賛に値する。

 その神奈川県大会の決勝戦をたまたまテレビで見ていた。

 9回表の攻撃、4-6で負けていた慶應のベンチは代打を送った。3年生の普久原祐輔内野手(3年)。177センチ、104キロの巨漢で、漫画ドカベンの主人公山田太郎そっくり。背番号は「19」。ふだんは一塁コーチを務める、非レギュラーメンバーである。

 こりゃあ、打てそうもない(この肥満選手では……)。

 相手の優勝候補筆頭・東海大相模高の投手の調子からして、打つのは到底難しいように見えた。ところが、慶應のドカベンは、その大きな体に似合わぬ器用なバットコントロールで流し打ちのヒットを放つ。盛り上がるベンチと応援席。そして慶應はこれを足がかりに驚異の粘りをみせ同点においつき、延長13回、9-6で勝利したのである。ドカベンは、甲子園でも負けている試合に同じように代打で登場し、ヒットを打った――。

「監督」とも呼ばせない!?

 本書は、慶應義塾高校の上田誠監督が、愛媛の今治西校や愛知の愛工大名電校の監督とともに、その独自の哲学と練習メソッドを語ったものだ。

〈「エンジョイ・ベースボール」を合言葉に、伸び伸びと野球をしています。古い上下関係や慣習にとらわれず、ふだんは和気あいあいとしていますが、野球に関しては決して妥協することをしません〉

 アメリカのUCLA大学野球部にコーチ留学し、野球発祥の地・アメリカ野球を手本にしながら日本野球の長所を加えて高校野球に新風を送り込みたい。それが上田の考えだ。

 しかしながら高校野球の世界で、エンジョイとは……。上田は英語教師で練習メニュー表も英語表記なのだが、「人間教育」としての日本の高校野球にエンジョイはありえない。軍隊式な規律と修練がファーストプライオリティ。監督は怖いのが当たり前である(あの世界では)。しかし、上田の選手への接し方はそんな常識を超えている。

〈慶應で「先生」は福沢諭吉先生だけ。「監督」とも呼ばせません。あくまで「上田さん」。部員とは対等な立場です〉

 部員よりも野球の知識や経験がある“先輩”としてチームをサポートする立場というスタンスだ。上田はかつて次のようにも語っている。

〈私の役割はいわばSkipper(船長)で、部長、副部長、学生コーチなど他の乗組員と力を合わせ“新世界”を求めて航海を続けています。その旅にあって、甲子園は重要な寄港地ですが、私はさらにその先にあるものを、野球を通じて追い求めていきたいと思っています。これが私の考える慶應義塾の野球です〉

 船員たちよ! 野球は楽しくやろうぜ。そして、勝とう。

 上田のマネジメントは、今の若い世代の選手のメンタリティにフィットしていたのかもしれない。だから、上手に操縦することに成功し、結果も残せたのではないか。

 この週末から始まる、プロ野球日本シリーズ。巨人と日本一をかけ対戦する埼玉西武ライオンズを率いる渡辺久信監督も、上田の“エンジョイ・ベースボール”に似たマネジメント手法で、20代半ば中心のチーム力アップに成功した。

 渡辺が貫いているのは「絶対に怒らない野球」である。

 リーグ最多の三振数やエラー数でも、「三振は気にしない」「守りでミスしたらバットで取り返せばいいぞ」と、寛容な態度で、選手にのびのびやらせる。決して萎縮させない。

 かつての黄金時代の西武は確かに強かったが、暗かった。監督やコーチの顔色を見ながら選手はプレーした。渡辺はそんな管理野球からの脱却がチーム再生の鍵だと考えたのだ。

遅咲き選手の育て方

 慶應は40年以上甲子園へ出場できず、西武も長期低迷していた。だが今年、両者は見事に復活。プロとアマの違いはあるが、上田と渡辺の組織再生論には学ぶべき何かがある。

 本書は、真剣に甲子園を目指す高校生のための走攻守のスキル向上マニュアル本なのだが、上田の考え方は野球のみならず、ビジネスに応用できる要素がたくさんある。

〈(ベンチ入り)メンバー落ちの選手には、一人ひとり何が足りないか、何がよくなれば上がれるかという目標を与えます。そうすることで、次は入ってやるぞというモチベーションが高まってがんばれるんです。選手は無視されるのが一番つらい。だから、コミュニケーションを大事にしています。(中略)私は遅咲きの花も大事にしていきたい〉

 「マイナー」。慶應ではベンチに入れなかった選手たちをそう呼ぶ。

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松﨑 曉 良品計画社長