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やっぱ「女」って、怖えぇーー!~『新釈 四谷怪談』
小林恭二著(評:清田隆之)

集英社新書、700円(税別)

  • 清田 隆之

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2008年10月30日(木)

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評者の読了時間3時間30分

新釈 四谷怪談

新釈 四谷怪談』 小林恭二著、集英社新書、700円(税別)

 正直にいうと、僕は「四谷怪談」について「お岩さん」の名前くらいしか知らなかった。原作はもちろんのこと、舞台やテレビでさえまともに見たことがない。作品の認識は「怖い女が出てくる話」レベル。“手練れの読み手”として、恥ずかしい限りではあるけれど……。

 本書はタイトルに「新釈」という冠をつけている。つまり、すでに旧来の解釈が常識として存在し、それと異なる独自の解釈を展開しようというわけだ。考えてみれば僕のような人間が評せる本ではないのだが……そこはさすがにベテラン作家の小林恭二。この古典のおもしろさを、芝居としてお披露目になった当時の江戸の様子から巧みにガイダンス、新書一冊で読者をにわか「四谷怪談」通にさせてくれる。

 とはいえ知ったかぶりはよくないので、ひとまず本書をもとに「四谷怪談」のあらすじを追い、旧来の解釈を把握してみたい。

 鶴屋南北の代表作『東海道四谷怪談』は、1825年の夏に初演された歌舞伎の演目だった。主人公は四谷左門の娘・お岩と、夫の伊右衛門。このふたりには、伊右衛門のことを気に入らない父・左門の意思によって離縁させられた経緯がある。

 伊右衛門の画策によって復縁したふたりだったが、この後お岩さんに苦難がふりかかる。伊右衛門に恋心を抱くお梅の祖父・伊藤喜兵衛に毒を盛られるのだ。そのせいで、彼女の顔は醜く爛れていく。

 すでに愛情が失せていた伊右衛門は、こんな惨い仕打ちを受けたお岩さんに対し冷酷な態度を取る。それどころか、毒を盛った喜兵衛から金を受け取り、伊藤家に婿入りするという取引に応じてしまう。

 皮膚が腫れ上がり、片目がつぶれ、おびただしい数の髪の毛が抜け落ち、すでに原形すらとどめないほど変貌してしまったお岩さんは、ここで家の世話人からことの真相を聞く。そして絶望と狂気の果てに絶命、お化けとして生まれ変わることになる。

 以上が前半のあらすじだ。まるで小説のような著者の解説により、初心者の僕は早くもお岩さんに感情移入。こんな理不尽な目に遭えば、化けて出るのも仕方ない。ていうか伊右衛門や喜兵衛が許せない! と、気持ちよく物語に引き込まれてしまった。

 物語の後半では、怨霊となったお岩さんによる復讐が始まる。お化けといえば実態のない存在だが、お岩さんは伊右衛門の母・お熊の喉笛に噛みついて食い殺すなど、物理的な殺傷行為すらやってのける。身も蓋なく野蛮なのだけれど、彼女をここまで凶暴な女に仕立てたのはまわりの人間であり、祟られるのも自業自得なのだ。

「四谷怪談」はただのエンタテインメントじゃない

 お岩さんの祟りを始め、この物語は読み手の感情を揺さぶるパワーが圧倒的である。が、その『東海道四谷怪談』にも元ネタがあって、なかでも有名なのは「忠臣蔵」なのだとか。伊右衛門が四十七人の義士に入れなかった赤穂浪士とされているなど、〈物語の設定及び構造をそっくり取り込んでいる〉部分が数多くあるという。なるほど。そんな仕掛けもあったとは。

 僕がそうだったように、お岩さんの悲しみに同情し、その後の復讐劇にカタルシスを覚える、あるいは、「忠臣蔵」との照応を読み込み、散りばめられたパロディ的記号に注目する。そうした楽しみ方はエンタテインメントに対する通常の消費行動で、よくある「文芸的」な読解なのだろう。

 ところが著者によると、これらは旧来の表層的な解釈。初心者の僕なんかはすでに十分楽しめてしまいそうだが、これだけでは「四谷怪談の本質」が見えてこないという。

 この「本質」をとらえるために、著者は「新しい解釈」を提示する。作品が生まれた時代背景との関連性を重視する読み方だ。

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