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5.人柱! 俺達は皆人柱なんだ!

葉山嘉樹「海に生くる人々」

  • 千野 帽子

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2008年11月5日(水)

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セメントの樽の中の手紙

セメント樽の中の手紙』 葉山嘉樹著、角川文庫、380円(税込)

 株なんて買ったことがない清純派の日直・ボウシータです。先週に引き続き、葉山嘉樹のお話、つまり今週も「負の癒し」の時間がやってまいりました。

 葉山嘉樹が『海に生くる人々』を書いたのは、小説家としての本格的なデビューより以前、1923年に溯るという。当初の題は「難破」。

 当時葉山は、共産党がらみの事件で検挙され、名古屋の千種刑務所のなかにいた。獄中で筆・墨・紙の使用が許可されたため、葉山はこの「塀の中」で「海に生くる人々」や短篇「淫賣婦」(『セメントの樽の中の手紙』所収)を書いたのだった。

 この前後、9月1日に関東大震災があり、震源から遠く離れた名古屋でも強く揺れた。そのときのことを書いたルポルタージュふう私小説「牢獄の半日」(1923/同所収)のなかで、語り手兼主人公の〈私〉は波田という名前である。

 以後、波田という苗字は、「海に生くる人々」や短篇「海底に眠るマドロスの群」(1928)などの、実体験を生かしたいくつかの作品中に、重要な登場人物として登場することになる。

 「海に生くる人々」が刊行されたのは、それから3年以上たった1926年11月のこと。

 小林多喜二の「蟹工船」に先立つこと2年半、大正末年の、翌月に昭和改元を迎えようという時期のことだ。

*   *   *

 「海に生くる人々」もまた「蟹工船」同様、船長および船会社の暴虐にたいして立ち上がる船員たちを描いた群像ドラマである。

 病気になるボーイ長は、「労働者の居ない船」と同名の安田。そして若い船員の名は「牢獄の半日」の、葉山嘉樹自身をモデルとする語り手と同じ波田である。「海に生くる人々」が葉山の実体験小説のいわば集大成であることが、こういったことからもわかる。

 映像化するとしたら──

 真面目だが腹のなかに反骨精神を秘めた若い船員・波田(坂口憲二)。

 労働争議に参加した過去を持つ年長のインテリ船員・藤原(堤真一)。

 性欲を持て余し気味の荒くれだが、蜂起の鍵を握る重要人物・三上(ケンドーコバヤシ)。

 事なかれ主義を捨てて反乱に加わる、善良で寡黙だが筋骨逞しい小倉(照英)。

 船中で病を発してしまうボーイ長・安田(大倉孝二)。

 その他、船長に小林稔侍、小倉が港町で知り合う商売女に鈴木紗理奈。

 といった感じのキャスティングはどうだろうか。

 波田や藤原が乗っている船は、会社のコストダウン策で、三日間の航海にきっちり三日ぶんだけしか飲料水を積まない。航海にちょっとでも時間を余計に食うと、その時点でアウトだ。

 この劣悪な就労環境下で出てくる藤原の殺し文句が、前回紹介したコレ。

人間が生きて行くためには、どうしても人間の生命を失はねば生きて行けないのか、人柱! 俺達は皆人柱なんだ!

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