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大荒れ相場に見えた「みの・フルタチ」の文化度

「おはぎゃあ」(用途:挨拶)

2008年10月31日(金)

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「おはぎゃあ」

 という挨拶をご存知だろうか。

 実は、「2ちゃんねる」の株式板から拾ってきた言葉だ。恐縮汗顔。嫌いな人は嫌いですよね。でなくても、こういう出自の物件をウェブ上のメディアで紹介するのは、不謹慎なのかもしれない。でも、無視できなかった。あんまり面白いので。勘弁してください。

 意味は、

「朝一番にダウのチャートを見て『ぎゃあああ』と叫んでいる様子」

 あるいは、

「家族に向かって『おはよう』と言いながら、日経の株式欄を開いて、そのあまりの下げっぷりに悲鳴をあげているありさま」

 ぐらい。表記も、「おはぎゃあああ」「おはぎゃー」「おはぎゅあぁあ」あたりのところで揺れている。つまり、まだ固まっていないのだな。語義も表記も。

 念のために申し上げておくが、2ちゃんねるをはじめとするネット発の流行語に関しては、正式な語義は存在しない。「2典Plus」(←乞ググ)というオンライン辞書サイトのごときものが存在していたりはするものの、その種の辞書に語義が掲載される頃には、用語自体が賞味期限切れになっているケースもまた多い。で、結局のところ、最も勢いのある言葉の意味は、事実上、受け手の側の類推に委ねられている。困ったことだ。が、逆に考えれば、新語の面白さは、誤解の余地を残しているところにこそあるわけで、それゆえ、スジの良い言葉ほど、語義が拡散しがちであったりする。かくして、用語は拡大解釈され、応用され、誤用転用引用活用され、いつしか深い混沌の中で無効化する。諸行無常。合掌。

 株式板の朝は「おはぎゃあ」で始まる。

「おはぎゃああああ、なんだこのチャートはぁああああ」
「やあみんな、おはぎゃあああああ。オレ株逝ったぁぁぁぁ!」

 といった調子の会話が、この10月の朝のあいさつの定番だったのである。
 バリエーションもある。たとえば

「ただぎゃあ」

 これは、主に夕方から夜にかけて使われる。

 具体的には、帰宅直後自室のパソコンを立ち上げて、ヨーロッパ市場の為替か何かを確認した時点で、この言葉を叫ぶわけだ。

「ただぎゃあああああ。どういうことですか、このユーロの垂直落下っぷりは!」
「ただぎゃああああ。何があったんだああああ。2時頃に確認した時にはプラスだったのに、どうして大引けで200円もマイテンしてるだあああ」

 と。
 いや、愉快愉快。

 ウェブ上の集会拠点には、不思議なバイアスがかかっている。荒れて見える分野が意外にほのぼの系だったり、逆に文化的であってしかるべきカテゴリーに、手に負えないならずものが盤踞していたりするのだ。

 2ちゃんねるで言えば、「経済」のカテゴリーに集まる人々が、思いのほか人間的だったりする。これは、近来の発見だった。

 普通に考えれば、株式、為替、市況みたいな場所に集う人々は、カネの亡者であるはずだ。でなくても、「実利のみを追い回す血も涙も無い人々」ぐらいな予断を抱かせる何かがある。

 ところが、実際に「経済」のカテゴリーの掲示板(2ちゃん用語では、「経済板」という言い方をする)に集まる連中は、たとえば「文学」や「音楽」の住人より、ある意味、文化的なのだ。

 たとえば、「サブカル」や「マンガ」、「ロックミュージック」や「英米文学」のカテゴリーは、いつも荒れている。いや、単に荒れているというのとは違う。「一時期のジャズ喫茶みたいな感じ」と言えば良いのかもしれない。はじめはおしゃれで気持ちの良かったサロンが、ある時期から、イヤミったらしい半可通の巣窟に化けてしまう、あの感じだ。

 おそらく、掲示板はスナックと同じで、最終的には、立地や看板よりも、客の内面を反映した空間になるのだと思う。だから、「文化」方面の板は、その中でとぐろを巻いている常連の性質を反映した、茶室じみたいやらしい空間に変貌するケースが多い。具体的に述べると、やたらに口汚かったり、粘着質だったり、あるいはハイブローで見栄っ張りで知ったかぶりで初心者に冷たい場所になりがちだということだ。かと思えば「現代詩」のカテゴリーみたいに、詩人ワナビーの素人が他人に通じない言葉のダンビラを振り回す不毛な亜空間になる。おそろしいことだが。

 その点、経済板は、荒れない。

 もちろん、一定数の異端分子は混入している。アラシ、アオリ、アホウは、どうしたって排除できない。礼儀知らずやエロ書き込みや宣伝サギ一本釣り一人演説の類も、不可避的に発生する。これは匿名掲示板の宿命みたいなものだ。火事と喧嘩が江戸の華であったのと同じなりゆきで、インターネットの街路は、炎上と対立を栄養に発展せざるを得ない。アオリアラシはウェブの華……ぐらいの見当だろうか。

 が、経済板には、常連の牢名主がいない。いたとしても、経済板の常連は、個人主義者で、あんまり他人に拘泥しない。それに、そもそも、カネの話をするところだからして、余計な気取りが無い。

 てなわけで、経済板の「雑談」は、そのほかの「話題」や「趣味」を同じくする人々が集まってくる掲示板の「論争」や「議論」に比べて敷居が低いのである。

コメント83件コメント/レビュー

>義憤って、たいてい的はずれだからね。>「額に汗して」みたいなセリフを吐いているキャスターの額に、汗がにじんでいたためしはないのである。>でも、彼らが媚びたからって、金融がどうなるものでもない。>経済評論家を名乗るおばさんが、節約一辺倒の説教を垂れていたりする いや、実に痛快でした。コメントで小田嶋氏に痛烈な批判を浴びせている人も少なからずおられましたが、きっと「汗がにじまないキャスター」や「経済評論家を名乗るおばさん」の関係者なんだろうなと思いました。(2008/12/26)

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「大荒れ相場に見えた「みの・フルタチ」の文化度」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

>義憤って、たいてい的はずれだからね。>「額に汗して」みたいなセリフを吐いているキャスターの額に、汗がにじんでいたためしはないのである。>でも、彼らが媚びたからって、金融がどうなるものでもない。>経済評論家を名乗るおばさんが、節約一辺倒の説教を垂れていたりする いや、実に痛快でした。コメントで小田嶋氏に痛烈な批判を浴びせている人も少なからずおられましたが、きっと「汗がにじまないキャスター」や「経済評論家を名乗るおばさん」の関係者なんだろうなと思いました。(2008/12/26)

ガッテン、がってん、合点。 眉間にしわをよせて庶民の味方のような言葉を発する「フルタチ」に不信感を感じつつ、たまにニュースSTを見ますが、その不信感をよく解説していただきました。(2008/11/07)

フルタチサンはトーキングブルースで「テレビは所詮無料のメディア。」という内容の事を言っていたと記憶しています。確かに所詮は無料で電気代しかかかっていないのだから話半分で聞かないとねって思いながらたまにテレビを見ています。マスコミは敵がいたほうがいいんでしょう。そして丁度良く問題提起だけする。そこを叩く。なんやかんやいっても悪をこらしめる水戸黄門の世界が好きなんだと思います。視聴者も含めて。(2008/11/05)

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