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解散延期は吉と出るか~『自民党政治の終わり
野中尚人著(評:荻野進介)

ちくま新書、760円(税別)

  • 荻野 進介

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2008年11月4日(火)

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評者の読了時間3時間50分

自民党政治の終わり

自民党政治の終わり』 野中尚人著、ちくま新書、760円(税別)

 夏の間、帰省して実家の庭に生えた草むしりに精を出した。雑草は根から引っこ抜かないと、折角の苦労が無駄になる。数日後にはすぐに新しい葉を茂らせるからである。腰に力を入れ、根元をつかんで「えいや」とやるのだが、これを繰り返すのは相当難儀な作業だ。地上に出ている葉や茎からは想像がつかないほど、根は長くて太く、しかも横に張っているからである。

 「この本を読んで、夏の草むしりを思い出した」と書いたら、自民党のお歴々がしかめ面するだろうか。

 1958年生まれの政治学者の手による本書は、かなり読み応えのある一冊だ。派閥政治や官僚との癒着といった“草葉”の部分にスポットをあてがちなマスコミの議論とは違い、目にははっきり見えないが、日本社会に広く“根”を張った、自民党という組織の全体像を明らかにし、その終焉を説く。寝ながら学べる楽な読書ではなかったが、じっくりと読み込むうちに、断片的な知識に筋が通り、日本の現代政治に対する見方が変わったように思う。

 キーワードは「自民党システム」だ。自民党の組織構造と内部ルール、それに付随するネットワーク、官僚との協働メカニズムを包含する概念である。それは、江戸時代からの制度的遺産を土台とし、そこに新憲法というルールが加わり、1955年の自民党結党以降、1970年前後までの間に形成された、というのが著者の考えだ。

 本書によれば、自民党は先進民主主義国の中で最も巨大な党本部機構と、個々の議員に附属する最も強固な後援会組織をもっている。特に後援会組織の力の強さは、党を「志を同じくした党員の集まり」ではなく、「当選した時だけの議員の集まり」とさせがちだ。

 そこで、分権的な組織をうまくまとめる派閥の出番となる。有権者無視、醜い権力闘争といったマイナスイメージで語られることの多い派閥だが、人材の発掘・育成といった積極的な面もあったことを著者は指摘する。ここに楔を打ったのが他ならぬ小泉改革だった。

国民を巻き込むインサイダー政治

 こうした組織体制の下、自民党の意思決定プロセスには2つの特徴がある。ひとつは意見のボトムアップが遵守される点である。「ボトム」とは、党内に設けられた、テーマごとの小委員会やその上にある部会を指す。現在、小委員会の数は100もあり、省庁に対応する形で設置されている部会は13あるという。

 もうひとつの特徴は、異論や反対意見がある場合、強引に押し切ることはせず、ひたすら説得に努めるコンセンサスの重視という点である。このやり方は、前年までの実績に何かを加えていく場合はスムーズに事が運び、プラスの作用として働く。しかし、既得権の整理・縮小といったテーマでは調整が難しくなり、まとめるのに膨大な時間を要する。首相が決意し、担当大臣が全力で取り組んだにも関わらず、法案から可決まで2年もかかった郵政民営化はその典型だ。

 ボトムアップとコンセンサスの重視は、強いリーダーを現れにくくする。当選回数に基づく年功序列システムもそれに拍車をかける。加えて、「日本は『官僚内閣制』の国だ」と言われるように、政府と与党=自民党、それに官僚機構との協働が濃密だ。官僚が時に政治家まがいの行動を見せるのも日本ならではの大きな特徴だ。

 その結果、「草の根型の巨大なインサイダー政治の体系」が戦後日本にできあがった、と著者は書く。

〈自民党システムは一種のインサイダー政治であったが、その網の目が自民党だけでなく野党のネットワークをも通じて、社会の隅々まで広がっていたのである。「一億総中流」とは、まさにその結果であった。自民党はもちろん、それと協働した行政官僚制が大きな役割を担い、国対政治を通じて野党も暗黙の参加者であった〉

 地上の草葉ばかりではなく、地中にも着目せよ。国民全員が自民党システムの根にどこかで絡めとられていたのだ、ということだろう。

 本書はさらにこの自民党システムを縦と横の異なる視点から分析する。縦の糸は江戸時代まで遡る歴史であり、横の糸はヨーロッパ諸国との国際比較である。

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