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名門王家の血はドロドロです~『名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』
中野京子著(評:三浦天紗子)

光文社新書、980円(税別)

  • 三浦 天紗子

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2008年11月5日(水)

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名画で読み解く ハプスブルク家12の物語

名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』 中野京子著、光文社新書、980円(税別)

 「丸に三つ葉葵」の紋といえば、260年余続いた徳川将軍家のしるし。その栄華を遙かにしのぐのが、「双頭の鷲」を紋章にしたハプスブルク家だ。中世から20世紀初頭まで、650年もの長きに渡り君臨した、ヨーロッパ随一の王家。自らを「高貴な青い血」の一族と見なし、血族結婚を繰り返した。

 ハプスブルク家にまつわる本は、一族の栄枯盛衰を追ったもの、マリー・アントワネットやエリザベート皇后など当家の著名人たちにスポットを当てたものなど、数多く出版されている。だが、本書のように、ハプスブルク家の血を引く者たちをモデルにした「名画」から、そのドラマティックな血脈を読み解こうとした試みは初めてだろう。

 ちなみに、著者は美術評論の専門家ではなく、大学でドイツ語や西洋文化史を教える学者。著名な西洋名画の背景にあるぞくりとするエピソードを紹介しながら、絵画の新しい見方を提示していく美術エッセイ『怖い絵』シリーズがヒットし、注目を集めた。8月に発売された本書も刷を重ね、10月現在で5刷めという人気ぶり。

 切り口となっている名画は、デューラーの「マクシミリアン一世」からマネの「マクシミリアンの処刑」(先のマクシミリアンとは別人)まで年代順に並べられた12枚。さらに、関連する絵画や図版などが豊富に織り込まれ、美術オンチ、歴史オンチの読者にも、名画と歴史をひとつながりで楽しませる工夫がなされている。

 本書の最大の魅力は、名画の主役となっている人物たちの、波乱の生涯がダイジェストで読める点だ。現代人の感覚から言えば、相次ぐ近親婚、略奪、陰謀など、スキャンダラスに過ぎる事情がハプスブルク家には渦巻いている。絵画の解説はあくまでフック。まず絵のインパクトで惹きつけておいて、次に畳みかけるように、時代背景とハプスブルク家の家族&婚姻関係のエピソードが披露される。

 たとえば、第2章で取り上げている、フランシスコ・プラディーリャの「狂女フアナ」と題された一枚。

女を狂わせたのは誰?

 風の吹きすさぶ荒涼とした野原が見える。中央には喪服をまとい、茫然自失の表情を浮かべた女が立っている。彼女が見つめているのは、黒塗りの棺だ。

 棺には華麗な装飾が施され、双頭の鷲の紋が入っている。右手後方には教会も見えるのに、棺を取り囲んだ人々は座り込んで動こうともしない。薄ら寂しい葬列の様子が描かれている。

 画題のフアナは、ハプスブルグ家マクシミリアン一世の長男フィリップと政略結婚で結ばれた、スペイン(カスティーリャ)の女王。「フィリップ美公」と呼ばれたほどの美形に、16歳のフアナは一目で恋に落ちる。だが、名うてのプレイボーイであるフィリップは、ほどなく浮気に走ってしまう。

 浮気相手への嫉妬に苛まれ、さらに故郷カスティーリャの王位継承をめぐる政争に巻き込まれたフアナの精神は乱れ始める。フアナ27歳のときに最愛の夫フィリップが突然死したことで、ついに正気の糸は切れてしまう。

 このときの政争とは、こんな顛末だ。カスティーリャ女王イザベル(フアナの母)が死んで、彼女の遺言通りフアナがその地位を引き継いだ。しかし、野心家の夫フィリップは女王の夫(王配)では我慢できず、自らが王位に就きたがった。一方、もともとフィリップと折り合いの良くなかったアラゴン王フェルナンド(フアナの父)は、そうはさせじと阻止しにかかる。

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