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オバマは「ダメリカ」を「チャンゲ」できる、か

「Yes,We Can」「CHANGE」(用途:スローガン)

2008年11月10日(月)

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 Yes,We Can.

 バラク・オバマ氏がアメリカの新しい大統領になった。

 で、「CHANGE」という彼の選挙キャッチフレーズが、各メディアで度々引用されるわけなのだが、私はこれを、ついつい「チャンゲ」と読んでしまう。

 何回見ても同じだ。思わず「チャンゲ」と発音しそうになって、あやうく「チェンジ」と言い直す。いつもそうだ。英語の文脈の中に「change」という単語が入っている場合は、なんとかなるのだが、単独で、しかも大文字表記の形で単語だけを表記されると、どうしてもローマ字読みしてしまうのである。あるいはこのあたりが昭和世代の限界なのかもしれない。淋しい話だ。

 さすがに、「ONE」を「オネ」と読むことはない。でも、「MORE」については、いまだに第一候補が「モレ」だったりする。これはどうしようもない。たぶん、アメリカに半年ぐらい住まないと直らないのだと思う。

 若い人たちはどうなのだろう。

 私が抱いている感じでは、20代でも「チャンゲ」という音韻を脳内に反響させている組の人々が、半分ぐらいはいるような気がするのだが。というのも、最近の若い人たちは、アメリカに対しておそろしく冷淡だから。

 そう。彼らは、アメリカを軽視している。

 たとえば、2ちゃんねる株式板に常駐する人々は、二言目には「ダメリカ」ないしは「ダメ理科」という言葉を使う。意味するところは、モロに「ダメなアメリカ」、さらに踏み込んだ語感としては「酸素と二酸化炭素の区別もつかない、理科音痴のアメリカ人」ぐらい。

 でもって、そのダメなアメリカの人々の態度は、「プリオン」ということになる。

 つまり彼らは、「バカなアメリカ人」「投資好きなくせに経済の毛の字(経済に毛が生えているのか?)も知らない国民」「返せる見込みもないローンを組んで、払えなくなってみると、世界の不条理にびっくりしている牛肉民」「世界経済の特定危険部位であるところのメタボピーポー」ぐらいな意味で、この言葉を使っているのである。

「まーたプリオンが狼狽売りするから……」
「オレの糖蜜がプリオン利確の餌食に……」

 という感じ。じつにひどい。
 差別用語だよね。ある意味。一国の国民丸ごとをスポンジ脳扱いなわけだから。

 おそらく、株をやっている連中からすれば、この度の金融恐慌(←だよね?)の原因を作った彼の国の人々に対して、あたたかい気持ちにはなれないのであろう。どうしてキミらの野放図な借金のトバッチリでオレの資産が半減してるんだ? と。まあ気持ちはわかる。でも、ここまでムゴい言い方は、私の世代の人間には思い浮かばない。驚きだ。

 頼もしい、と?
 どうだろう。
 単なる夜郎自大にも見える。

 あるいは、嫌韓嫌中キャンペーンを推進中のネトウヨの皆さんがはじめた新しい展開、という感じ。

 あえて言えば、侮米、だろうか。反米とは明らかに違う。下から見上げる形で抵抗したり、対等の立場で反発しているのではない。明らかに上から見下している。その目線の置き方が新しい。というよりも、私などには見当もつかない。

 私自身は、アメリカ万歳の人間ではない。どちらかといえば、立ち位置としては反米かもしれない。

 でも、反米であれ親米であれ、私の世代の人間にとって、アメリカは巨大な存在だった。背骨の中に一本「アメリカ」という座標軸が貫通している感じ。だから、好きでも嫌いでも、アメリカを無視することはできなかった。まして、「プリオン」などと、まるで「生まれつき知能を欠いた民族」みたいな扱いで要約することは、到底考えられなかった。

 が、どうやら、30歳より下の人々にとって、アメリカは、ワンオブゼムに過ぎない。

 だから、21世紀にはいって以来、アメリカ音楽はまるで売れないし、ハリウッド映画も集客できなくなっている。ファッションの世界でも「I love NY」だとか「UCLA」だとかを胸に大書したTシャツは、すっかり姿を消した。

 実際、今の時代のJ-POPは、われわれが若い時代に聴いていた和製ポップス(「ニューミュージック」とか呼ばれていた)とは、比較の対象にさえならないほど水準が高い。その意味では、若い人たちが「いまさら、英語の曲なんか聴いてもなあ」と、そう思う気持ちも理解できないではない。

 映画やファッションにしたって、必ずしもアメリカが世界一というわけじゃない。それもわかる。

 アメリカ製のダメな音楽や、アメリカ制作のつまらないドラマや、ハリウッドからやってくるデキの悪い映画をありがたがる必要はない。当然だ。

 でも、玉石混淆ではあっても、最高峰の作品は、いまでもアメリカ(あるいは、「海外」)からやってくるはずじゃないのか? その、最高のモノを見ないと、人生がもったいないと、キミたち思わないのか?

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「オバマは「ダメリカ」を「チャンゲ」できる、か」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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