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「男らしさ」が寿命を縮める?~『がんで男は女の2倍死ぬ』
田中-貴邑冨久子著(評:尹雄大)

朝日書店、760円(税別)

2008年11月10日(月)

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評者の読了時間3時間00分

がんで男は女の2倍死ぬ──性差医学への招待

がんで男は女の2倍死ぬ──性差医学への招待』 田中-貴邑冨久子著、朝日書店、760円(税別)

 その昔、作家の野坂昭如が「男と女の間には、暗くて深い河がある」と歌っていた。男女間の理解しあえぬ隔たりにロマンを見出す曲なのだが、生き方の違いにセンチメンタルになったとしても、話が死亡率の懸隔に及べばどうだろう。感傷に浸る余裕もなくなるのではないか。

 本著によれば、日本人の三大死因であるがん、心臓病、脳卒中による男性の死亡率は、女性のそれの2倍なのだという。男にとっては青ざめるようなオッズだ。

 厚生労働省の調べによると、2005年の1年間で人口10万人あたりのがん死亡者は、全国平均で男性が593.2人、女性が298.6人。心臓病は2003年の調べで人口10万人に対して男性27人、女性13人。さらに脳卒中は10万人あたり男性67人、女性39人と、それぞれ約2倍の開きがある。

 死亡率の2倍差という数値は衝撃的だが、本著においてはあくまで枕である。さわりは疾病を男女ごとに診ていく「性差医学」という観点がなぜ必要かを諄々と説いていくことにある。その上で病の性差をもたらす社会構造の問題を指摘していく。

 性差医学というのは聞き慣れない語だが、20世紀末になってアメリカで提唱されたものだ。翻っていえば、がんや心臓病、脳卒中以外の病気でも〈病気のかかりやすさ、かかってからの症状の表れかたなどには、男性と女性で違いが見られる〉にもかかわらず、性差がこれまで無視されてきたということだ。

 とはいえ、ひとくちに性差に適応した医療を行うといっても一筋縄でいかない。性差にはセックスとジェンダーのふたつがあるからだ。

 前者は生殖器やホルモン分泌の違いに見られるような生物学的な差。後者は服装や話し方など生活習慣に基づくような〈社会的、文化的、人為的につくられる男女差〉のことで、いわゆる後天的に獲得した「らしさ」である。

男性優位社会は脳の働きによって生まれた?

 ここで疑問に思う人もいるだろう。生物学的な違いから乳がんや子宮筋腫、精巣腫瘍といった疾病の性差が生じるのはともかく、なぜ服装や話し方、仕草といった習慣的な振る舞いがときに死亡率をも左右するのだと。

 だが、〈社会的・文化的な性は、育った環境が脳やからだに与えた影響が積み重なった結果〉ととらえればどうか。生まれつきの違いとは関係ない男・女らしさによって培われた生活習慣が、「脳やからだ」の病を引き起こすことにもなりえる。

 そこで、脳の性差研究の第一人者である著者は、特に脳について論を進める中で、いかに社会的・文化的な性がつくられ、それらと死因がどう結びつくのかを詳らかにしていく。

 著者によれば、人には「古い脳」と「新しい脳」があるという。古い脳とは、辺縁系と間脳、延髄などを含んだ脳幹という部位を指し、〈生命を維持し、種族を保存する〉といった本能を司る。

 新しい脳は大脳新皮質と大脳髄質という部位からなり、〈学習能力をもち、環境や社会に適応する〉機能を担っている。

 受精後、約20週間まで胎児の脳に性差はない。その後、精巣を持つ胎児の場合、男性ホルモンのテストステロンの脳への作用により、〈脳が女性型から男性型へと変わる〉。これが辺縁系などを含んだ古い脳にあたる。

 古い脳の男女差は、食欲のような本能的な行動や情動に現れるが、特に怒りや恐れ、快という情動的な行動において顕著だという。

〈ストレスは怒りをつくり、攻撃行動を引き起こしますが、一般的にこの反応は男性のほうが強いのです。また、痛みの刺激は不快感をつくり回避行動を引き起こしますが、この反応は女性のほうが強く出ます〉

 怒りを引き金にした古い脳の攻撃性の高さが、〈男性優位の社会を築く〉のに一役買い、男性が女性を支配するようになった。その規範を〈学習能力をもち、環境や社会に適応する〉ことを専らとする新しい脳が学んだ結果、「新しい性差」をつくりだしたと著者はいう。

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