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いつか来る日を受け入れるために~『詩と死をむすぶもの』【奨】
谷川俊太郎・徳永進著(評:澁川祐子)

朝日書店、760円(税別)

  • 澁川 祐子

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2008年11月11日(火)

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評者の読了時間2時間30分

詩と死をむすぶもの──詩人と医師の往復書簡

詩と死をむすぶもの──詩人と医師の往復書簡』 川俊太郎・徳永進著、朝日新書、760円

 私が大好きだった祖母は、私が10才のとき68才で亡くなった。私の誕生日を祝いに来た翌日、突然倒れて帰らぬ人となったのだ。あまりにもあっけない最期に、幼い私はただその死を悲しい事実として受け容れた。

 私が大学生になった頃だろうか。母がポツリと洩らした。「おばあちゃんが死んだ後はしばらく、新聞の訃報欄を見ては『この人はお母さんよりも5年も長く生きた』『この人は10年以上も長い』と比べずにはいられなかった」と。

 祖母が亡くなった当時、私にはそんな母の嘆きの深さがわかろうはずもなかった。でも、いまならその気持ちが少しわかる。母が、祖母の亡くなった年齢に近づいてきたいまになってようやく。人は年を重ねるにつれて「失うこと」の重さに気づき、その喪失を前にして慄くのかもしれない。

 だからこの本を書店で見たとき、自然に手が伸びた。谷川俊太郎氏は、言わずと知れた現代詩の第一人者。対する徳永進氏は、鳥取市内でホスピス「野の花診療所」を開設した医師である。勤務医時代に『死の中の笑み』で講談社ノンフィクション賞を受賞し、臨床医として働く傍ら、老いや死、医療をテーマにしたエッセイを数多く著わしてきた。

 哲学者・鶴見俊輔氏を通じて20年ほど前に出会ったという、歳が一回り以上も離れている二人。本書には、その二人が2年間にわたって交わしたメールのやりとりが記されている。

 現場から発せられる徳永氏の言葉は一文一文が短く、ライブ感に溢れる会話調。それを受けた谷川氏が、噛んで含めるような文と一篇の詩で応えていく。徳永氏が投げたストレートを、谷川氏がぽーんと山なりのボールで放り返す、そんな感じのやりとりだ。

 たとえば、徳永氏が、診療所の2階ラウンジで開かれる「お話会」での一幕を綴ったとき。

臨床は「豊かな矛盾に満ちている」

 語り手は入院患者。がん患者である83才の女性は、広島での被爆体験をひとしきり語った後に「でも自分の死はこわいです。歩けなくなって、こんな体になってもやっぱり、死はこわいですね」と言った。79才の女性は酸素吸入をしながら、魚の行商をやっていたときの思い出を笑いながら話し続けた。

 徳永氏は、患者一人ひとりの語りに耳を傾けながら、

〈ラウンジで話される世界、放たれる言葉。話し切ることからも、語り尽くすことからも遠いけど、そこに存在した空気が、聞き手の心といっしょにいつも小さく振動するのを覚える〉

 と便りを締めくくる。

 それに対して、谷川氏の返事は「ラウンジ」という言葉の意味を調べることから始まる。そして、診療所のラウンジは「病院での日常的なルーティンからちょっと浮き上がった空間と時間、病気の苦しみや不安に子どもみたいにタンマをかけることの出来る次元」であり、そこで「お話し会」が始まるのはごく自然なことだと受け取り、こう続ける。

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