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“爆心地”で何が起きていたのか~『強欲資本主義 ウォール街の自爆』
神谷秀樹著(評:荻野進介)

文春新書、710円(税別)

  • 荻野 進介

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2008年11月12日(水)

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評者の読了時間2時間05分

強欲資本主義 ウォール街の自爆

強欲資本主義 ウォール街の自爆』 神谷秀樹著、文春新書、710円(税別)

 今年の松の内、ある経済団体のトップに景気の見通しを取材した。彼は、サブプライム問題の影響は深刻だが、アメリカ政府の手厚い支援があるから、今年後半には景気は世界的に持ち直すだろう、と楽観的だった。

 それからわずか9カ月、「強欲資本主義」のおかげで世界の景気は相当やばいことになっている。

 本書は、タイトルを見れば一目瞭然、金の亡者と化したウォール街の住人とそのやり口を告発するとともに、今回の危機からアメリカ人や日本人が何を学ぶべきか、を綴ったものだ。リーマン・ブラザースの破綻が報じられたのが9月16日。本書の初版発売が10月20日、その5日後に早くも2刷という売れ行きである。

 著者は、早稲田を卒業して住友銀行に就職し、投資銀行の雄のひとつ、ゴールドマン・サックスに転職した後、16年前、当のウォール街に自分の投資銀行を設立したという経歴をもつ。30余年という長い金融業歴の中で、「金融マンは実業に携わる人の脇役に徹するべきだ」ということを信条としてきたという。

 その対極にあるのが昨今のウォール街であった。脇役どころか、自らが主役となり、「借りた金」による投資活動や企業買収に血道をあげてきた。特に後者の場合、事業内容に関心があるわけでもなく、とにかく安く買って高く売り、利ざやを稼ぐことに全力を尽くした。

 結果、大手金融機関の中心にいるのは〈経営者の相談に乗るバンカー〉ではなく、〈スクリーンを見て証券の売買をするトレーダー〉になってしまった。

 この背景には、金融自由化に伴う2つの決定的な施策変更があった。ひとつは州を越えての活動が各商業銀行に許されるようになったことであり、もうひとつが商業銀行業務と投資銀行の活動を峻別していた法律が取り除かれ、保険業との相乗りも許されるようになったことである。

 保険会社、商業銀行、投資銀行入り乱れての買収合戦を生き抜くために、投資銀行は株式を公開し、他人のお金でビジネスを展開するようになった。しかも、預金金融機関ではないから、BIS(国際決済銀行)の自己資本規制の対象にならない。バランスシートはいくらでも大きくできる。知恵と人脈で顧客にアドバイスする黒子の装束を脱ぎ捨て、自ら投資家となり、最大収益の獲得を目指す金融機関になった、というのである。

今日の儲けは僕のもの、明日の損は君のもの

 なかでも大変身を遂げたのが、著者が一時在籍していたゴールドマン・サックス。不動産でも企業買収でも、世界トップクラスの投資集団となり、ウォール街の人たちからも「世界最大のヘッジファンド」と呼ばれていたという。

 ウォール街の強欲資本主義の前では日本人も手玉に取られる。日本の金融機関の米国支店のトップはほとんどが日本人であり、赴任中に業績を上げようと、他行から腕利きの米国人バンカーを引き抜き、仕事を任せることが多い。そういうバンカーは、自分の息のかかった一族郎党を連れてきて部下とし、ビジネスを行う。

 部下たちは自分のボスには忠実に仕えるが、大家である日本の金融機関に対する忠誠心はこれっぽっちもない。市場環境がよければ、彼らはしこたま儲け、銀行も潤う。しかし、巨額の損失が発生した場合、彼らは知らぬ存ぜぬを決め込み、足抜けして、次の大家を見つけにかかる。〈今日の儲けは僕のもの、明日の損は君のもの〉だと著者は呆れ顔だ。実際、野村證券、みずほフィナンシャルグループが被害を受けている。

 また、ウォール街のM&Aビジネスで、「コニャックの空瓶売却」と呼ばれるケースがある。豪華な瓶入りコニャックを売りつけ、相手が飲もうと思った瞬間、その中身を抜いてしまう。やり口はこうだ。

 とある一流投資銀行のやり手バンカー2人が独立し、新たな投資銀行を設立した。投資銀行の強みは、何といっても、稼ぎ頭である一人ひとりのバンカーである。アメリカでの投資銀行業務に参入したいと考えていたドイツ系銀行がそれを知り、買収を提案してきた。2人が同意して買収は成立。

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