• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

大事なことはおおむね鉄道から教わった~『鉄道地図の謎から歴史を読む方法』
野村正樹著(評:近藤正高)

KAWADE夢新書、720円

  • 近藤 正高

バックナンバー

2008年11月13日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

評者の読了時間3時間25分

鉄道地図の謎から歴史を読む方法

鉄道地図の謎から歴史を読む方法』 野村正樹著、KAWADE夢新書、720円

 鉄道ブームといわれて久しい。同じくブームだといわれる新書とのリンクも多く、最近でも野田隆『テツはこう乗る』(光文社新書)、宇田賢吉『電車の運転』(中公新書)などがベストセラーとなった。手前味噌で恐縮ながら、僕も『私鉄探検』(ソフトバンク新書)という本を出させてもらっている。

 本書もまた鉄道をテーマにした新書だが、その冒頭には、鉄道とは一見関係がないと思われるデータが出てくる。

 それは、昨年、文科省が全国の小学6年生を対象に行なった社会科の学力テストの結果だ。都道府県名から地図上の位置を選ぶ問題では、全体の正答率が55%しかなかった。また、歴史上の人物を業績から選ぶ問題では、大久保利通、木戸孝允、大隈重信などの正答率が30%以下だった。

 このことは、いまの子供たちが、日本の地理や歴史、とりわけ明治以降の近現代史に弱いということの一つの証明ともいえるだろう。著者は、歴史を学ばなければ、現在を語ることも未来をつくることもできないし、地理を知らなければ、母国の産業や生活、国際社会との関係も理解できない、と憂える。

 本書は、鉄道地図の変遷を通じて日本の近代史をたどったものだが、これはいわば、歴史や地理を学ぶ手立てを著者なりに提案したものでもあるのだ。

 このような企図から、本書は当然ながら「通史」というスタイルをとっている。それゆえに、旧国鉄も私鉄も基本的な流れはひとまず押さえておこうということになり、込み入ったところまではカバーされていない。その点は、鉄道ファンにとってはちょっと食い足りないかもしれない。

 だが、鉄道の歴史を時系列で追った本というのは、意外にも最近の新書ではほとんどなかったりする。その意味では本書は貴重であるし、何より、本文中で展開される鉄道史への俯瞰的な視点や、あるいは政治や経済、文化などとの関連づけから得るものは多いと思う。

 では、鉄道地図から見えてくる日本の近代史とは具体的にはどんなものだろうか。本書ではまず入門編として、JRの中央線や室蘭本線、それに新京成電鉄がとりあげられている。

中央線がまっすぐなワケ

 前二者の特徴は、直線区間が目立つということだ。これには明治期の殖産興業政策が反映されているという。

 まず中央線には、開国以来の日本の重要な輸出品だった生糸がかかわっている。同線は東京都内の中野から西に向かう立川あたりまでが一直線となっているが、これは甲州や信州で取れた生糸の集積地である八王子と東京都心とを最短コースで結んだためだという。

 一方の室蘭本線は、軍備増強や工業発展などに欠かせない石炭を、石狩地方の炭鉱から室蘭港へとやはり最短距離で運ぶため、約30kmある日本一長い直線区間が生まれた。

 反対に、千葉県の松戸~京成津田沼を結ぶ新京成電鉄では、平地を走っているにもかかわらず、不自然な急カーブがやたらと目立つ。これは同線が旧帝国陸軍の鉄道第二連隊の施設として、日清・日露戦争の際に満州(現在の中国東北部)やビルマ(同ミャンマー)で鉄道を敷くための演習用に建設されたことに由来するという。

 急カーブが多いのは、小さな丘と谷の連続する地形に短期間で線路を敷くため、橋や切り通しの工事を避けたからだとか、同区間は直線距離で約20kmと演習には不十分なため距離を延長したからだとか、いくつか説があるようだ。

 が、その理由はどうあれ、この路線の生い立ちからは、当時の日本政府の大陸侵略への強い意欲を読み取ることができるだろう(なお、同線は太平洋戦争後、地元の京成電鉄に買い取られ、系列会社化された)。

 以上のケースからもうかがえるように、近代化をめざす日本において、鉄道の建設は主に産業や軍事面での必要性から進められていった。日清・日露戦争の前後、明治後期には、太平洋側の大都市、日本海側の港湾都市のほか、各地の軍事拠点を結ぶ幹線鉄道網が形成されている。

コメント3

「NBO新書レビュー」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

機械を売るんじゃなくて、電気が欲しい方に電気が起きる装置をソフトも含めて売るビジネスをしていこうと。

田中 孝雄 三井造船社長