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結論:俺はタバコ吸っていいんですね?~『禁煙バトルロワイヤル』
太田光・奥仲哲弥著(評:栗原裕一郎)

集英社新書、680円(税別)

  • 栗原 裕一郎

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2008年11月14日(金)

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禁煙バトルロワイヤル

禁煙バトルロワイヤル』 太田光・奥仲哲弥著、集英社新書、680円(税別)

 喫煙嫌煙をめぐる議論は──議論と呼べるものがあったかはともかくとして──喫煙サイドの敗北ということにほぼ決まったといっていいだろう。

 社団法人日本たばこ協会(TIOJ)などが主導し設置されたタスポは「未成年喫煙予防」というタテマエの裏に何か思惑が動いていそうなのでおくとしても、「タバコは1箱1,000円に値上げしろ」という案がどんぶり勘定のまま増税項目案として国会にはかられそうな勢いひとつを見ても、タバコ排斥がすっかり社会の合意であり善になってしまったことを裏づけているといえよう。

 評者は喫煙者で『禁煙ファシズムと戦う』(ベスト新書、2005年)という共著も持っている。われらが共著以降も、嫌煙の趨勢に疑義を唱え、喫煙の自由と権利を擁護しようとする本がいくつか出版されているが、はっきりいってどれもパッとしない。

 たとえば、当コラムのコメント欄が炎上した武田良夫『「タバコは百害あって一利なし」のウソ』(新書y、2007年)にしろ、最近文庫化された本島進『たばこ喫みの弁明』(ちくま文庫、2008年)にしろ、著者がJT関係者というのを差し引いても、いまだに「疫学は信用できない」とか「タバコは文化」とかいっていてお話にならない。もはや焦点はそんなところにはないのだ。

 本書は、いまいったハードルをひとまずクリアしている、爆笑問題の太田光とその主治医の対談という顔合わせの珍しさにとどまらない一冊である。

 太田は1日40本を吸うヘビースモーカーなのだが、「1箱1,000円にしてくれて問題なし」「タバコ=悪でウェルカム」「身体に悪くてもぜんぜん気にしない」「肩身が狭くなるの超OK」というスタンスで、一見、開き直りのようにも見えるが、タバコを吸うという選択の根拠を突きつめていけば「主体的な意志と自覚」しか残らない。喫煙者はみなここにたどり着くしかないのだ。

 そんなふうに腹をくくっているというか、頑なになっている太田に対し、主治医で禁煙のスペシャリスト医師である奥仲哲弥がタバコのリスクを説き、激論のすえに禁煙に導く、というのが期待されるストーリーであるわけだが、説得は早々に、もう第一章で挫折する(笑)。

禁煙させたいの? もっと吸わせたいの?

 奥仲医師は、まず軽く「ブリンクマン指数」で脅しをかける。ブリンクマン指数は「1日に吸うタバコの本数×年数」で算出される、がんにかかる危険度を表わす数値で、400を超えると危険、800を超えると超危険だとされている。しかし、太田はすでに1000を超えているのに、検査の結果、まったく正常であると出てしまうのである。

〈太田 ということは俺はタバコを吸ってもいいという結論も出たことだし、これで終わりにしましょうか(笑)〉

 もちろん奥仲医師は引き下がらず、タールべったりの肺を間近で見たときの衝撃や、タバコの鎮静作用がニコチンによるまやかしであることや、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の知られざる苦しさや、咽頭がんに罹る率の高さや、副流煙の害など、手を変え品を変えタバコの怖さを訴えていくのだが、それでも説得にはいたらない。

 というより、奥仲医師には、禁煙を強いるつもりがそもそもあまりないのだ。

〈奥仲 太田さん、(……)やはりタバコのデメリットはたくさんあるんですよ。ところが今現在、タバコをバンバン吸っているのに、太田さんは健康でいらっしゃるし、検診の数値も非常にいい。(……)医師の私がこういうことを言うと、禁煙団体から反発を受けそうですが、まさに「喫煙エリート」という称号を贈りたいくらいです。

 そうなると、ますますタバコを吸ってもいいんじゃないのということになってしまいそうで、私としては非常に困るんですが〉

 という調子で、いっこうに困ったようすを見せないのだが(笑)、何を隠そう、奥仲医師のこの日和り加減こそが本書の主役なのである。太田の発言は「自分がタバコを吸う理由」から離れることがなく、じつをいうとあまり見るところがなかったりする。

 奥仲医師の日和りパワーが炸裂するのはCOPDの怖さを説くところだ。COPDは初耳の人が多いと思われるが、ほぼ喫煙者しか罹らないやっかいな病気で、〈タバコの害を説くとき、肺がんの話をするより、このCOPDの話をもっときちっとすべき〉であるくらいなのに、あまり知られていないと奥仲医師はいう(評者も知らなかった)。

 COPDを患うと、肺が慢性的な炎症で冒され、吸った息をうまく吐けなくなる。吸いっぱなしになるわけだから苦しいのは容易に想像がつくが、死ぬに死ねないのでその苦しさは筆舌に尽くしがたいという。おまけに、肺移植するか、横隔膜を鍛えるなどして肺に頼らない呼吸法を訓練するくらいしか治療の手段はないのだそうだ。

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