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新聞は「捨てるため」にある

「一覧性」(用途:ペーパーメディアの優位性の宣言)

2008年11月17日(月)

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 当連載を始めるに当たって、新聞を定期購読させてもらっている。
 と、いきなりこう書いても、にわかには了解しにくいかと思う。

 順序立てて説明すると、こういうことです。

1. オダジマは紙の新聞を取っていなかった。
2. その話を聞いて、編集部のY氏は驚愕(たぶん)した。
3. で、Y氏は、「購読料はうちで負担しますので」と言いつつ、日本経済新聞の購読を強力に推薦した。「ネタになる用語を探すためにも有効なはずですから」と。
4. 「タダなら」ぐらいの気持ちで、オダジマは、新聞の宅配を了承した。

 まず、(1)についてだが、事実、私は、この十年ほど、紙の新聞を読んでいなかった。

 きっかけは単純で、今住んでいるマンションに引っ越して来た折、新聞販売店の勧誘があんまりしつこかったので、ヘソを曲げたのだ。で、販売店の人間に、「新聞は読まない。二度と来ないでくれ」と宣言して以来、ヘソを曲げっぱなしにしていたのである。

 問題は、それで済んでしまっていたことだ。

 この事態は「宅配の新聞すら読まない情報環境のもとで、原稿書きの仕事をこなしていたオダジマの驚くべき怠慢」というふうに読むこともできるし、「インターネットの普及によるペーパーメディア衰退を示す象徴的な出来事」と解釈することも可能だ。が、まあ、一般的には前者でしょうね。いずれにしても、この10年ほど、私は、新聞由来の情報とはほぼ無縁な、非ジャーナリスティックな仕事をしてきた、と、そういうことです。

 このこと(オダジマが新聞を取っていないという事実)は、当然のことながら、業界では評判が良くなかった。付き合いのあった新聞系の雑誌では、「当件(新聞不購読)については、なるべく書かないでください」と、それとなく、クギをさされていたりもした。

「なんなら手配しますよ」

 と、無料購読を示唆されたことも一度や二度ではない。
 が、その度に私は

「溜まっちゃって、シバって捨てるのが面倒だから」

 とか言って辞退していた。なんたる非礼。というよりも、どうして私はつまらぬケンカを売っていたのでしょうか。
 でも、それで済んでいたのである。ヨメさんの親戚筋とかにあきれられたりしながらも、だ。

 それほど、紙の新聞は微妙なところにきている。
 大変な事態だと思う。

 今回は、この度、10年ぶりに新聞を取ってみて気がついたことを中心に書いてみたい。

 まず感激したのは、「一覧性」だ。そう。紙の新聞の人たちが、インターネットの即時性や、検索性や随時編集性に対抗して、二言目には持ち出していたあの言葉だ。

「なにしろペーパーメディアは一覧性が高いですから」

 と。

 ところが、その「一覧性」は、辞書に載っていない。
 調べてみると、「広辞苑」にも「大辞林」にも掲載されていない。「ウィキペディア」にさえ項目が立っていないのだ。驚くべきことだ。

 つまり、「一覧性」は、「一覧する」という動詞を名詞化して使う際の用語として、一応有効に機能してはいるものの、独立した単語として語義を紹介されるには至っていないのである。

 とはいえ、情報処理にとって、一覧性は、非常に重要な事柄だと思う。
 実際に、見てみればわかる。長いことディスプレイ越しの文字に頼り切ってきた者の目から見ると、紙の新聞の文字は、圧倒的に速く読めるのだ。

 一目瞭然、という言葉があるが、まさにそういう感じ、読む前に、パッと見ただけで、おおまかな内容を把握してしまったような感覚がある。

 この「一目ですべてがわかる感じ」そのものは、錯覚である可能性が高い。だって、5秒かそこいらで見開き一枚分のテキスト(原稿用紙にして約40枚分!)を読みこなせるはずはないし、私にそんなことができる道理もないからだ。絶対に無理。ムリムリムリムリかたつむり、である。

 でも、紙面を数秒「見た」だけで、われわれの目は、「読む」のとは別次元の情報処理をしている。これは事実だと思う。

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「新聞は「捨てるため」にある」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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