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信じる者が救われるには?~『安全。でも、安心できない…』
中谷内一也著(評:山岡淳一郎)

ちくま新書、700円

  • 山岡 淳一郎

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2008年11月18日(火)

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評者の読了時間3時間00分

安全。でも、安心できない…──信頼をめぐる心理学

安全。でも、安心できない…──信頼をめぐる心理学』 中谷内一也著、ちくま新書、700円

 日本は世界でも有数の長寿国で、夜中に女性が一人歩きできる数少ない国のひとつだ。食中毒による死亡者は、1967年までは毎年100人超だったが、87年の統計では5人にまで減り、以後、腸管出血性大腸菌O157などの流行で十数人に増えることはあっても、ほぼ年間ひと桁に抑えられている。

 つまり、かなり「安全」な国である。ところが、耐震偽装、食品偽装と「大事件」が続き、「安全が崩れ、安心できない」とする国民感情は高まるばかりだ。「実害」があろうがなかろうが、ゴマカシ、不正が見つかればメディアも徹底的に叩きまくる。

 この「安全・安心至上主義」の風潮が、どのような心の動きによってもたらされるのか、ずっと気になっていた。政府や企業、自治体、公益団体などの「リスク管理者」のやることが「信頼できない」と感じる心理が、いかに形づくられるのか知りたかった。

 やや醒めた言い方をすれば、完璧な安全は、人間が100パーセント死ぬ運命にある以上、ありえない。監視やチェック体制をいくら厳しくしても事件や事故は根絶できず、社会的コストばかり増大する。

 にもかかわらず、わたしも含めて現代の日本人は安全、安心を追い求める。非常に安全な国だから、逆に、それを乱す現象には過剰な「不安」を抱くのか。だが、ささいなことに不安を覚えていたら、電車にも乗れず、レストランにも入れず、生きていけないし……と、モヤモヤは募るばかりだった。

 本書のタイトルを見て、条件反射的に手がでた。「なぜ、安全なのに安心できないかを、社会心理学の観点から解説」した本だ。やたらと危険を煽る書でもなく、逆にある種の利害のもとに「大騒ぎするな。大丈夫」と安全性を強調する本でもない。「信頼をめぐる心の動きをと解きほぐそう」とする本なのだ。積年のモヤモヤが晴れるかも、と期待して読んでみた。

リスクをはかるのは理性か、感情か

 結果として、視界スッキリとはいかないが、かなり心の動きが見えてきた。われわれが経験的に実感している「当たり前」のことを心理学特有の言い回しで説明されるのには、まどろっこしさを感じるし、くり返しの多さも少々眠気を誘う。が、それでも読む価値は、ある。一般消費者の「信頼」を得たいと思っている企業人は、手にとっていいだろう。頭から順番に読むのが辛ければ、最終章をいきなり読んでも参考になる。

 では、この本の記述を参考に、クイズをひとつ。

Q:1年間で警察に届けられている強盗の件数は6000件です。では、次の犯罪の件数は、それぞれ何件くらい発生しているでしょうか。

 (1)「人質をとっての立てこもり事件」
 (2)「空き巣」
 (3)「自動車の盗難」
 (4)「殺人犯が麻薬常習者だった事件」

 答えは、書評の最後に記す。(1)~(4)のなかには生命に危機が及ぶ「身体犯」と財産が対象の「財産犯」が混じっている。ヒントを兼ねていえば、犯罪知識を持ち合わせていない一般人は、身体犯を過大に、財産犯を過小にとらえる傾向があるようだ。

 その心の動きの根っこにあるのが「不安感情」である。じぶんの不安感情が、どの程度、現実の犯罪発生とズレているかを知ってもらうためにクイズを作ってみた。

 さて、人は、対象を見聞きしたときに、まず感覚的に「嫌な感じ」「好ましい感じ」といった感情を抱いて、ことに当たろうとする。ところが、この感情というものが厄介だ。急かされたり、時間を制約されたりした状況では、リスクを分析的、理性的に判断する余裕がなく、つい感情に走って墓穴を掘るようなことになる。卑近な例でいえば、「安物買いの銭失い」。感情的に安さに惹かれて、気がつけばボロをつかんでいる。

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