「日経ビジネスが描いた日本経済の40年」

将来に不安なし! 格付けAAAな人々〜家計、会社にも国にも頼らない人生のために【1】

財務を意識した資産形成が始まった、目指すは経済的な自立

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2008年11月25日(火)

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戦後最長の景気拡大は幕を閉じ、再び冬の時代に。
会社も国もあてにできない時代がやってきた。
生き残りに必死の企業は一段とリストラに力を入れる。
公的年金は、いずれ支給額の大幅カットが避けられない。
不透明な世の中に怯えずに済む生き方を家計から考察する。

* * *

2003年9月1日号より

賃下げに失業、年金制度に消費税率…将来に不安の種は尽きない。
そんな時代でも家計は安泰、いわばトリプルAの格付けに値する人々がいる。
まずは、勤務先が倒産してもびくともしなかった元商社マンの話から。
=文中敬称略

(磯道 真、安倍 俊廣)

 下町の風情を残す、東京都江東区東陽。地下鉄駅前の繁華街から歩いて約30分、玄関扉も軋む、築31年7階建ての老朽アパートの一室が、その男のマイホームだ。4畳半の寝室と6畳の居間、申し訳程度の狭い台所という時代遅れの間取り。45m2の2DKに、夫婦と小学生1人、幼児2人の5人が暮らす。ただでさえ狭いのに子供のオモチャが散らばって足の踏み場もない。

 めぼしい家財と言えば、14インチのブラウン管テレビ、ちゃぶ台、1ドアの冷蔵庫くらい。薄型の大画面テレビなど世間の流行とは無縁の空間だ。

 部屋の主は藤山勇司、40歳。1998年に自己破産した老舗商社、大倉商事に勤めるサラリーマンだった。藤山は大倉商事の倒産以来、会社に勤めたことがない。くたびれたズボンにTシャツ姿で1日の大半を自宅で過ごす。

自力で今や年収2700万円

 藤山の暮らしぶりは、失業者の耐乏生活を連想させる。しかし、藤山の年収は実に2700万円。一流大学を卒業し、海外でMBA(経営学修士)を取得したエリートサラリーマンが必死で働いて手にする金額を、のんびり暮らしながら稼ぐ。藤山の稼ぎの源泉は、所有不動産から上がる家賃収入だ。

 千葉県木更津市に建つ築11年の木造アパート。40m2余りの2DKなど16室ある。外観も設備も、これといった売り物がないアパートだ。それでも1年間の家賃収入は729万円、平均的サラリーマンの年収を上回る。こんな目立たないながらも、着実に家賃が上がる物件ばかりを、藤山は63軒も所有している。物件の所在地は、東京都内、埼玉県川口市、木更津市など関東地方から北海道の札幌市や苫小牧市まで広範囲にわたる。

図・競売で入手した不動産

 63軒の不動産は、サラリーマン時代から10年かけて自力で買い増してきた。親からの相続は1つもない。サラリーマンの不動産投資と聞けば、家賃の大半は借金の返済や経費に消えると冷笑する向きも多いだろう。ワンルームマンション業者の電話セールスに乗せられて、新築物件をほぼ全額ローンで購入する“にわか投資家”も多い。予定した家賃が入らず赤字が続き、物件価格は値下がりして売るに売れない。そんな失敗例は珍しくない。

 藤山の借金は1億5000万円と確かに巨額だ。一方で、所有物件は叩き売ったとしても3億円近くで現金化できるという。借金を完済しても手元に1億5000万円近い現金が残る。藤山の家計を企業会計に例えれば、バランスシート(貸借対照表)には、資産3億円、負債1億5000万円、自己資本1億5000万円が計上される。資産に占める自己資本の比率(自己資本比率)は約50%、上場企業の平均値が30%弱だから超優良企業に例えられる。

 不動産購入では自己資金にこだわった。最初から借金をしようなどとは考えなかった。商社時代は銀座で朝まで飲み、週末はゴルフ、給与は1カ月で使い切る、そんな日々では当然ながら貯金はゼロ。不動産の購入を思い立ってから、当時30万円以上あった手取りのうち、生活費を3万円と決めた。

 昼は近くの立ち食いそば屋で320円のかけそば卵落とし。夜は、近所の商店街を回ってパンの耳やキャベツの切れ端を集めた。油で炒めて卵でとじれば、お好み焼きの味がした。こんな生活を2年続け、1000万円以上の自己資金を作ったうえで不動産購入に踏み切った。そうした手堅さが現在の健全な財務体質につながる。

購入額は家賃の4年分

 メーンバンクは地元の信用金庫だ。支店の営業課長は毎月1度、定期預金10万円を集金しに自転車でやってくる。振り込みで済むのにわざわざ訪問するのは、藤山のたっての要望があってのことだ。十分な収入があっても浪費しない倹約家ぶりを信金に見せつけ、信用をさらに高める作戦だ。

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