戦後最長の景気拡大は幕を閉じ、再び冬の時代に。
会社も国もあてにできない時代がやってきた。
生き残りに必死の企業は一段とリストラに力を入れる。
公的年金は、いずれ支給額の大幅カットが避けられない。
不透明な世の中に怯えずに済む生き方を家計から考察する。
* * *
2003年9月1日号より
社債など企業の借金が返済されるかどうかの安全性を示す格付け。
現状の財務を分析すれば、そこには将来が映る。
家計格付けは5段階、あなたはどこに位置するか――。
会社ならともかく個人の家計になぜ格付けが必要なのか。
その答えは、以下に始まるシミュレーションドラマから読み取っていただきたい。
主人公は高校の同級生だった2人。その後の人生の明暗を分けたものは…。
=文中敬称略
(磯道 真、安倍 俊廣)
2003年8月、静岡県の公立高校を20年前に卒業した同期生が久しぶりの同窓会を東京都心のレストランで開いた。20人ほどが集まったその席で、一番の注目を集めたのは、山中和夫だった。
山中は、39歳になったばかりで大手金融機関の支店長に抜擢されたことを披露した。同窓の仲間たちは古い友人の出世を祝福してくれた。
山中の年収は1200万円と参加者の中では飛び抜けていた。見るからに高価そうなスーツに身を包み、イタリア製のスポーツカーで会場に乗りつけた。東京湾のレインボーブリッジを一望できる都心に超高層マンションを購入したばかり。その住み心地を語る山中に出席者は羨望の眼差しを注いだ。
山中の高校時代の親友、川崎進も同窓会に出席していた。親友の晴れがましい姿を目にして誇らしい気分だった。川崎は、仲間たちに自分の境遇を語って、山中の成功ぶりを強調してみせた。
川崎は、コンピューターメーカーのエンジニア、年収は山中の半分の600万円だった。取り立てて他人に自慢することはない。会社では後輩の面倒見がいいリーダー的な存在だが、立派な肩書はない。
自宅は千葉県にある築15年の団地を中古で購入、マイカーは8年前に買った国産大衆車。家族と近くのショッピングモールに月に1回出かけるのが一番の娯楽だ。身の回りのものは、ショッピングモールにある大型ディスカウント店で買ったものばかり。
「おれたち2人を比べれば、勝ち組と負け組の差が一目で分かるよね」
人なつっこい川崎のセリフだから、同窓会に集まった仲間も笑ってうなずいた。企業のリストラを伝えるニュースはうんざりするほど聞かされる時代。「山中はいいよな。将来安泰だから」。同窓会もいよいよお開きという時に誰かが漏らした一言に、皆黙り込んだ。
親友に借金を申し入れ
それから7年。2010年8月に同じ顔ぶれの同窓会が開かれた。会場は7年前と同じレストラン。40代も後半に差しかかった参加者は口々に生活の厳しさを語る。子供の教育費がかさむことはあるが、それだけで愚痴のこぼし合いになったわけではない。
過去7年間で日本の経済は、21世紀初頭と比べてさらに落ち込んでいた。当時5%台だった失業率は10%を突破した。それでも改善の兆しは見えない。サラリーマンの年収は、勤務先の業績が回復しても上昇しなくなった。7年前の年収を維持していれば、高給取りと言えるほど、世間全体の水準は下がってしまった。
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