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『ブリジット・ジョーンズの日記』はなぜウケた?~『自負と偏見のイギリス文化』
新井潤美著(評:尹雄大)

岩波新書、700円

2008年11月25日(火)

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評者の読了時間4時間00分

 評者は、本著を読むまで小説、映画ともに大ヒットした『ブリジット・ジョーンズの日記』が18世紀のイギリスで活躍したジェイン・オースティンの代表作『自負と偏見』の翻案とはついぞ知らなかった。

 見聞の浅さを、日本での知名度の低さだけに求めるわけにはいかないものの、日英のファンの入れ込み方には、歴然とした違いがあるのは確かだ。

 『ブリジット・ジョーンズの日記』に限らず、本国のイギリスやアメリカでは1980年代以降、作家や好事家によってオースティン作品の翻案や続編が発表されており、死後200年経ってもなお熱烈な支持を受けているという。近年では「ジェイン・オースティンの読書会」という映画まで製作されたほどだ。

 著者は、日本でいまひとつオースティンの名が通っていないのを、〈現実に即して、あくまで「日常」を描く手法を「大衆小説的」とみなし、「文学的ではないと批判する」〉態度に求めている。

 〈愚痴とおしゃべりを、皮肉なユーモアで淡々とかわしていく〉といったストーリーは、人間の実相に迫るような文学然とした風味を好む人にとり、おかしみはあっても抑揚がなく、ふまじめに感じられるようだ。

 オースティンも自身を「まじめになれない人間」と考えており、〈自分や他人への笑いを小説というかたちで表現〉することに意を注いだという。

 しかし、笑いに溢れているからといって、大衆的の一言で彼女の小説を評していいものか。『自負と偏見』のヒロイン、エリザベスのセリフにオースティンの小説観を読み取れそうだ。

「私は思慮深いもの、善良なものを笑ったりはしていないつもりです。愚かなこと、馬鹿げたことはたしかに面白く思いますし、そういう事柄に出会うたびに笑っていますが」

 もしオースティンの小説がたんなる笑いに徹するだけの戯作であれば、いっときの人気はあっても、時が移ろえば風化したはずだ。そうならなかったのは、彼女の紡いだ一見凡庸に見えるストーリーは、イギリスの階級社会を象徴するところがあるからだろう。本著は、現代にも通底する階級社会の特性や構成員の恋愛、結婚観を読み解こうとするものだ。

感受性が豊かすぎて失神するヒロインって(笑)

 オースティンは〈小説は「現実に忠実」でなければいけない〉と考えていたという。

 彼女を取り巻く「現実」がどういうものであったかといえば、時は放蕩と放埒が許されたジョージ四世の在位期。貴族が愛人を伴って社交界に出入りしても非難されることがなかった。その後のヴィクトリア朝の禁欲的な社会とは大違いである。

 自由奔放な恋愛がまかり通っていた一方、恋愛小説となると〈美しくて聡明で何ひとつ欠点のないヒロインがあまりにも感受性があるために、何か言うと失神〉し、恋しても周囲の反対にあえば〈自己犠牲の精神を発揮して、身をひく〉ことがよしとされるような、非現実的な世界が描かれていた。

 〈このような話を、オースティンは少女時代から「修正」したくてたまらなかった〉という。「修正」という語に、著者がオースティンの鼻息の荒さを買うさまが感じられるが、実際、彼女は小説を14歳でものするなど早熟だった。

 オースティンは知らない土地や自身の属さない階級について述べることに控えめであったが、その彼女が「現実を忠実」に描こうとしたとき採った手法はパロディであった。

 習作である『恋愛と友情』は、当時流行っていた恋愛小説の描く「現実」を忠実に再現することで、その非現実さを笑った。作中で、ヒロインと友人ソフィアは、それぞれの夫の乗っていた馬車が転覆するのを目撃した。その場面をオースティンはこう描写する。

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