「鈴木義幸の「風通しのいい職場作り」」

“会社で引きこもる人たち”を動かす「ABCモデル」

部下は一変、課長は涙、事件の舞台は真昼の蕎麦屋

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2008年11月25日(火)

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 このコラムの3回目で、「ダンマリ部下には2種類いる」というお話をしました。口を開かない部下のうち、「反抗型」には、とにかく聞こうとする姿勢で接して同意してあげること、「自信喪失型」には、質問の戦略を立てて話を導き出すこと、といったお話でした。

 今回は、「人に口を開いてもらう」ことからさらに掘り下げて、「人に行動を起こしてもらう」ことにも通じる方法を考えてみたいと思います。

 人の行動原理を説き明かしていく「行動分析学」という学問があります。このフィールドの中心を成す理論は「ABCモデル」と呼ばれています。

 Aは、“Antecedents”=誘発要因
 Bは、“Behavior”=行動
 Cは、“Consequences”=行動結果

 人の行動には、何らかのきっかけ、すなわち誘発要因がある(A)。そのきっかけで行動が引き起こされ(B)、行動の成り行き(C)によって、再び同じ行動が将来生起するかどうか決定されていく。

「やっても無駄」と思えば行動は少なくなる

 ABCモデルの流れを職場の会話を例に見てみます。

 上司から「会議では積極的に発言しなさい」と言われた(A)。あまりまとまっていなかったけれど、部下が試しに自分の意見を言ってみたところ(B)、上司は「どんな意見でも、自分の考えを会議で伝えるのは素晴らしいことだ」と褒めてくれた(C)。

 この部下が次の会議でまた発言する可能性は高くなります。

 逆に、ABまでは同じでも、Cが「上司から『つまらない意見は出すな』と言われた」や、「意見を伝えたのに上司のコメントを一言ももらえなかった」では、部下が再び発言をする可能性は低くなります。Cがネガティブと予想されれば、その後にいくらAが与えられても、Bが起きづらくなるからです。

 職場であまり話をしない人は、これまで自分の発言が肯定的な結果として実を結ばなかった経験から、ダンマリを決めこんでいることが多いものです。否定されたり、無視されたり、といった場面が繰り返されると……。

 すると「話しても無駄だ」と思いますから、発言を抑えるようになる(人によっては社会人になる前からこのパターンに陥っているかもしれませんが)。

 家庭であまり話さない子供も同じです。「学校でこんなことがあったんだ」としゃべっても、母は「で、宿題はやったの?」、父は「いま母さんと話してるんだから静かにしなさい」。そんな経験をきっと過去に繰り返しているはずです。あるいは「ふーん、そうだったの」と返事はしてくれても、心から興味を持って聞いてもらえたわけではない。大人の無関心を子供は敏感に感じ取るものです。

「話をしても(B)、いいことが起こらない(C)」と思うたびに、発話(B)は抑制されていきます。

ポジティブな行動結果を感じてもらう

 では、ネガティブな行動結果(C)を想像して、行動(B)をとらなくなった人に、再びBをしてもらうにはどうすればいいでしょうか。

 結論を言えば、「より強いきっかけとなる誘発要因ABを引き起こし、そのBに対して決定的にポジティブに感じられるCを提供する」。これが王道です。

 以前、演出家の宮本亜門さんに、コーチA主催のイベントに出演していただいたことがあります。テーマは「個性を活かすコーチング」。ニューヨークでミュージカルを成功させた宮本さんに、個性の強いアメリカ人俳優をどう束ねたのか話してもらったのです。

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著者プロフィール

鈴木 義幸(すずき・よしゆき)

鈴木 義幸 株式会社コーチ・エィ 取締役社長
慶應義塾大学文学部卒。(株)マッキャンエリクソン博報堂にメディアプランナーとして勤務後、渡米。ミドルテネシー州立大学大学院臨床心理学専攻修士課程を修了。帰国後、コーチ・トゥエンティワンの設立に参画。延べ200社以上の企業において管理職を対象とするコーチング研修を行う。また200人を超える経営者、管理職のマンツーマンコーチングを実施。企業におけるコーチング・カルチャーの構築を手がける。著書に『職場スイッチ』(ダイヤモンド社)、『リーダーが身につけたい25のこと』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『ほめる技術』(実業出版)、『プレゼンスマネジメント』(日経BP)、『決断の法則「これをやる!」』(講談社)、『セルフトーク・マネジメントのすすめ』(日本実業出版社)など。



このコラムについて

鈴木義幸の「風通しのいい職場作り」

 空気が淀み、風が通らなくなった職場の中に実際に身を置いていると、一体どうすれば、そこに新鮮な風が通るのか、皆目見当もつかないかもしれません。

 けれども、人の心理が集団の中でどのように動き、どのように変化するのかを知識として備えていれば、そして、少しの勇気と行動力があれば、絡まって団子になってしまった糸も少しずつほぐしていくことができると思います。

 当連載では、組織心理学、行動科学の専門家として、様々な企業の現場をコーチングしてきた私自身の経験を活かし、風通しのよい職場の作り方の一端を、みなさんにご紹介できたらと思っています。このコラムを読んでいただくことで、少しでも、みなさんの職場に新鮮な風が通ることを願ってやみません。

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