このコラムの3回目で、「ダンマリ部下には2種類いる」というお話をしました。口を開かない部下のうち、「反抗型」には、とにかく聞こうとする姿勢で接して同意してあげること、「自信喪失型」には、質問の戦略を立てて話を導き出すこと、といったお話でした。
今回は、「人に口を開いてもらう」ことからさらに掘り下げて、「人に行動を起こしてもらう」ことにも通じる方法を考えてみたいと思います。
人の行動原理を説き明かしていく「行動分析学」という学問があります。このフィールドの中心を成す理論は「ABCモデル」と呼ばれています。
Aは、“Antecedents”=誘発要因
Bは、“Behavior”=行動
Cは、“Consequences”=行動結果
人の行動には、何らかのきっかけ、すなわち誘発要因がある(A)。そのきっかけで行動が引き起こされ(B)、行動の成り行き(C)によって、再び同じ行動が将来生起するかどうか決定されていく。
「やっても無駄」と思えば行動は少なくなる
ABCモデルの流れを職場の会話を例に見てみます。
上司から「会議では積極的に発言しなさい」と言われた(A)。あまりまとまっていなかったけれど、部下が試しに自分の意見を言ってみたところ(B)、上司は「どんな意見でも、自分の考えを会議で伝えるのは素晴らしいことだ」と褒めてくれた(C)。
この部下が次の会議でまた発言する可能性は高くなります。
逆に、AとBまでは同じでも、Cが「上司から『つまらない意見は出すな』と言われた」や、「意見を伝えたのに上司のコメントを一言ももらえなかった」では、部下が再び発言をする可能性は低くなります。Cがネガティブと予想されれば、その後にいくらAが与えられても、Bが起きづらくなるからです。
職場であまり話をしない人は、これまで自分の発言が肯定的な結果として実を結ばなかった経験から、ダンマリを決めこんでいることが多いものです。否定されたり、無視されたり、といった場面が繰り返されると……。
すると「話しても無駄だ」と思いますから、発言を抑えるようになる(人によっては社会人になる前からこのパターンに陥っているかもしれませんが)。
家庭であまり話さない子供も同じです。「学校でこんなことがあったんだ」としゃべっても、母は「で、宿題はやったの?」、父は「いま母さんと話してるんだから静かにしなさい」。そんな経験をきっと過去に繰り返しているはずです。あるいは「ふーん、そうだったの」と返事はしてくれても、心から興味を持って聞いてもらえたわけではない。大人の無関心を子供は敏感に感じ取るものです。
「話をしても(B)、いいことが起こらない(C)」と思うたびに、発話(B)は抑制されていきます。
ポジティブな行動結果を感じてもらう
では、ネガティブな行動結果(C)を想像して、行動(B)をとらなくなった人に、再びBをしてもらうにはどうすればいいでしょうか。
結論を言えば、「より強いきっかけとなる誘発要因AでBを引き起こし、そのBに対して決定的にポジティブに感じられるCを提供する」。これが王道です。
以前、演出家の宮本亜門さんに、コーチA主催のイベントに出演していただいたことがあります。テーマは「個性を活かすコーチング」。ニューヨークでミュージカルを成功させた宮本さんに、個性の強いアメリカ人俳優をどう束ねたのか話してもらったのです。
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