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なんでこうもあっさり派遣労働へのスタンスが反転するんだ?~『労働再規制』
五十嵐仁著(評:澁川祐子)

ちくま新書、740円(税別)

  • 澁川 祐子

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2008年11月28日(金)

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労働再規制──反転の構図を読みとく

労働再規制──反転の構図を読みとく』 五十嵐仁著、ちくま新書、740円(税別)

 今年7月、厚生労働省の「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」が派遣業務に関する報告書を発表した。報告書には、日雇いもしくは1カ月未満の短期派遣を一部を除いて原則禁止、という方針が打ち出されていた。これまで派遣労働の規制緩和を推し進めてきた流れが一変、規制強化の逆方向へと転じたことを示している。

 労働者派遣法をめぐる流れをざっとおさらいすると、同法が成立したのは1985年。その際、派遣の対象はコンピュータ関連など13の専門業務に限定されていた。それが、96年の改正で26業務に拡大、99年には原則自由化となった。そして、2003年小泉内閣のもとで製造業への派遣もついに解禁となり、専門業務への派遣可能期間の制限が取り払われ、その他一般業務への派遣は原則3年までと延長された。

 規制緩和を繰り返した結果、どうなったか。企業側は安くて使い勝手のよい労働力を手に入れはしたものの、一方で格差の拡大、ワーキングプアの出現など、さまざまな社会問題をもたらした。

 そこへ先の報告書の登場である。一時期話題をさらったホワイトカラーエグゼンプションも議会に提出されないまま立ち消えとなり、ここのところ規制緩和のかけ声はほとんど聞こえてこなくなった。

 本書は、こうした「規制緩和→規制強化」へと反転した時期を2006年と捉え、その前後の動きを追ったものである。著者は、大原社会問題研究所所長で労働問題に関する著作が多数ある人物。政治家、官僚、財界人などの発言を丹念に拾い上げ、いかにして政策が180度転じるに至ったかを描いている。

 著者は、「2006年転換説」の大きな要因として、規制緩和に強いリーダーシップを発揮してきた小泉内閣の退陣を挙げ、安倍内閣誕生を境に「官の逆襲」が始まったとしている。

規制改革会議 vs 厚生労働省

 そもそも小泉首相が強いリーダーシップを発揮することができたのは、経済財政諮問会議の存在が大きかった。「改革の司令塔」と呼ばれたこの会議の構成員は、議長を首相が務め、議員は民間人5人、閣僚5人の計11人。

 つまり、〈民間議員が結束し、閣僚のなかの一人でもそれに加われば、会議の議論は首相の思うままに操れる〉という仕組みを利用し、小泉首相と竹中経済財政政策担当相は、官邸主導の政策決定を押し進めてきたのである。

 「官から民へ」という規制緩和の流れは「官」の権限縮小につながり、官僚にとってはおもしろくなかったに違いない、と著者は推察する。だから小泉首相が退陣し、時を同じくして規制緩和に対する世論の風向きが変わると、「官」はいまがチャンスとばかりに反撃に転じたというのだ。

 その象徴的な出来事が、労働タスクフォースの見解に対する官からの反論である。

 労働タスクフォースとは、経済財政諮問会議と並び規制緩和のエンジンの役割を果たしていた、規制改革会議の下部組織である。この労働タスクフォースが07年5月に公表した「脱格差と活力をもたらす労働市場へ──労働法制の抜本的見直しを」という文書には、

〈一部に残存する神話のように、労働者の権利を強めれば、その労働者の保護が図られるという考え方は誤っている。不用意に最低賃金を引き上げることは、その賃金に見合う生産性を発揮できない労働者の失業をもたらし、そのような人々の生活をかえって困窮させることにつながる〉

 とある。そのほかにも、

〈過度に女性労働者の権利を強化すると、かえって最初から雇用を手控える結果となるなどの副作用を生じる可能性もある〉

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長