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「やる気」を給料に反映できるか?~『日本の賃金』
竹内裕著(評:荻野進介)

ちくま新書、700円(税別)

  • 荻野 進介

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2008年12月2日(火)

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評者の読了時間2時間10分

日本の賃金──年功序列賃金と成果主義賃金のゆくえ

日本の賃金──年功序列賃金と成果主義賃金のゆくえ』 竹内裕著、ちくま新書、700円(税別)

 先日、『使ってみたい武士の日本語』(野火迅、草思社)という本を読んだ。「武士は食わねど高楊枝」を地で行く感じで、やたらかっこいいのである。一例を挙げれば、「お金がない」は「手許不如意(てもとふにょい)」という。「今日は手元不如意ですから、このまま帰ります」。金欠だから付き合えないだけなのに、その裏に確固たる意志があるかのようだ。ぜひ一度使ってみたい。

 さて、実感の有無はおくにして、戦後最長という好景気がいよいよ終わる。文字通り、手許不如意なサラリーマンがこれから増えそうだ。民間企業のボーナスの伸びも2年連続で前年比を下回る。「次は賃金カットかも」と、早くも淀んだ気持ちになっている人も多いのではないか。

 でも、いたずらに暗くなる前に、知っておくべきこともある。

 本書は、戦後60年にわたる日本企業の賃金史を概観し、今後の企業が採用すべき賃金体系を提示したものだ。各種手当や賞与、退職金の行方にも触れており、民間企業で働く人なら、読み進むうち、賃金明細を取り出し、しげしげと見入ってしまうかもしれない。

 キーワードは、年功序列主義、能力主義、成果主義の3つ。それぞれ、年齢と勤続年数、職務遂行能力(=職能)、担当職務とその遂行結果を基準にした処遇で、年齢給・勤続給、職能給、職務給が対応する。

 戦後の日本企業の賃金体系は、年功序列主義→年功的能力主義→能力主義→能力・成果主義→成果主義という流れを辿ってきた。物事の移り変わりには理由がある。なぜ年功序列は駄目になったのか。

 経験に応じて能力が伸びる若年層にはむしろ適用すべきであり、社員に安心感を与えるというメリットもある。そう擁護しつつ、著者は、一定以上の成果を上げられる人のモチベーションを阻害する、誰でも自動的に昇給するので人件費が膨らむ、といったマイナス面を指摘する。

 能力の伸長に、ある程度、年功が寄与するのは誰もが認めるところだ。よって、能力・成果主義に移行しても、年功的要素を完全に払拭することはできなかった。

「成果」だけにとらわれすぎて…

 そこで登場し広まったのが成果主義であった。長期にわたる業績不振に悩んだ日本企業にとって、人件費の切下げは重要な課題のひとつだった。成果主義(=職務給)ならば、一段上の職務につかなければ昇給はないから、その分は確実に人件費を節約できる。だから企業が飛びついた。

 さらに、能力主義を基盤とした、これまでの日本的経営への自信が失せ、賃金制度は職務を基本にするのがグローバル・スタンダードだ、と勘違いし、米国流の安易な模倣に走ってしまった点も著者は指摘する。

 そうやって導入された成果主義だったが、これも問題だらけだった。すなわち、職務の中身やその遂行結果にとらわれすぎて、成果を支えている職能や、成果に至るプロセスを軽視してしまうからである。チームプレイも阻害され、先輩が後輩の面倒を見なくなり、「結果がすべて」の荒んだ職場になってしまう。

 また、職務給は仕事内容によって賃金が変動するため、日本企業のお家芸である人事異動が難しくなる。柔軟な組織編制はもちろん、幅広い部署を経験させ、将来の幹部候補を育てることが困難になるのだ。

 こうした体系ばかりではない。著者は、いかに支払うか、という賃金形態にも着目する。それには、年俸制で絶対額を毎年見直す「洗い替え」方式、月給制で毎年昇給していく「積み上げ」方式、同じく月給制だが昇給も降給もある「昇降給」方式がある。

 経営側にとって好都合なのが洗い替え方式。積み上げ・昇降給方式は昇給分のみが管理対象だが、洗い替え方式は毎年、賃金全体を一から見直すことが可能だからである。人件費の高騰に悩んでいた多くの企業が、90年代から年俸制に移行した理由もそこにあるという。

 以上の議論を踏まえ、今後の日本企業向けに著者が推奨するのが、単なる能力だけでなく成果も重視する「能力・成果主義」である。

 前述のように、能力主義→能力・成果主義→成果主義という流れを辿ってきたわけだから、「成果主義が失敗したから、その前の能力・成果主義に戻るだけか」と思われるかもしれない。否である。

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