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だって男が好きだから

2008年12月11日(木)

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 金曜、23時過ぎ、新宿駅。

 老いも若きも男も女もとあらゆる人たちで混み、初冬にしては熱を帯びたホームに、その人はいました。携帯電話を片手に背中を丸め、すこし前に突き出した首から先で宙を仰いでいる紺のスーツの中年男性。ふと釘付けになりました。

 こんな時間なのに、酔っている風には見えません。きっと仕事だったのでしょう。

 周りの喧騒から、その飄々とした風情はひとりどこか白く浮き上がっているようで、それが目に留まったのです。

 今週も、よく働きましたか。

 つい話しかけたくなりました。
 さすがに声には出しません。気味悪がられますからね。だから頭の中で続けます。きっと毎日頑張ったんですよね、と。

 入線してきた目的地へ向かう電車に乗っても、私はその人のことを考えていました。
 どんな仕事をしているのだろう。今週は順調な週だったのでしょうか。仕事でストレス、あるのでしょうか。

 あるでしょうね、それは。あんまり無理して頑張りすぎませんように。
 帰る家は遠いのでしょうか。中央線のホームにいましたね。中野? 小金井? 立川? 明日あさって、ゆっくり休むことはできるんですか。

 暗い窓に映るくたびれた自分の顔を見て、お疲れ様ですと言いたかったな、と少し思いました。
 それからまた窓を見て思いました。

 通りすがりの男性に対してさえもこれだよ、私ったら、と。

 私は、男の人が好きです。心の底から好きなのです。

 私の言う男が好きは、イケメンが傅いてくれるような店に張り切って通ったり、逆ナン、つまり女の側からのナンパにいそしむという意味ではありません。
 いずれも興味ないわけではないのですが、いまだ機会を得ずにいます。
 ともあれ、私の言う「男が好き」はただ見てるだけで幸せ。話を聞ければそれは至福。そういう控えめな気持ちです。

 お心当たり、ありませんか?

 おそらくお読みの方のほとんどは男性でしょうから、こう想像してみてください。
 例えば職場で、街で、お店で、男性を見るよりは女性を見るほうが、男性同士で言葉を交わすよりは、女性とそうした方が、嬉しい。

 そういうことです。

 もちろん同性同士の方が便利のいいこともあります。しかし、原理原則に立ち返って考えると、やっぱり異性っていい。好き。憧れる。
 そういう意味で、私は、心の底から男の人が好きなのです。

 誰が言い出したのか、“女の時代”が長く続いています。旧聞に属しますが北京五輪も女性選手の活躍が目立ちました。政治家も、これは少数派ゆえもありますが、目立つのは女性が多い気が。

 華やかな世界から身近なところに目を転じても、確かにそうなのかもしれません。流行も消費も女が牽引しているというのを否定するのは難しいでしょう。入社試験、成績順に採用したらみんな女になってしまうという話もよく聞きます。あらゆるものづくりは話題性を得ると言う意味でも、女の視点・意見を無視して進めることはできません。

 調子よく女の時代のメリットも享受したい私としては、それはウエルカムではあるのですが、それのせいで、私が心から好きな男の人が、とばっちりを受けているのだとしたら、悲しい。

 男が生きづらい世の中とも聞きます。この国の自殺者の7割は男性です。看過しがたい事実です。私は、大好きな男の人には、日々溌剌と過ごして欲しい。でも、女にウケるものは男にもウケるというように、副次的に扱われてしまうご時勢。無念です。

 ない知恵絞って考えました。どうしたらこの女の時代、男の人が幸せに過ごせるのだろうかと。
 そこで出た結論。男は、女っぽくなったらいいのでは?

 メンズエステへ通えとか脂取り紙を常備しろとか、眉を整えろとかネイル(爪のことです)を手入れしろとか、そういう話ではありません。
 もちろんそれは、おやりになりたい方はやればいい。男性が美しくなることに、私は賛成です。無精髭も好きですけれど。
 何が言いたかったのかと言いますと、男は多少、女っぽくなったほうがいいのでは、ということ。誤解を恐れず言うならば、“女々しく”なってはどうでしょうという提案です。

 手元の広辞苑第五版にはこうあります。

コメント102件コメント/レビュー

男が男らしく生きるというのが限界に来てると言うことなのでしょうね。今や、いろんな場面で、主導権が女性に奪われてしまいした。若い女性を見ていると、颯爽として頼もしさを感じます。自分に自信を持っているのでしょうね。主張するのはいつも女性。男は黙りこくって何も出来ない。もう男は終わりだな、と感じます。もう「女の時代」は冗談じゃない。女性中心に事が進む世の中になるのでしょう。恐らく筆者も、もうこれ以上男にこだわっていたらますます大変だからと、「男」から抜けだして、女らしく生きることを勧めているのでしょうね。心配してくれているのかもしれないけど、女性から言われるのは悔しいかな。とにかく、女性が元気なだけに、男の行く末が心配です。女性の皆さん、これ以上強くならないで!!!(2008/12/17)

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「だって男が好きだから」の著者

片瀬 京子

片瀬 京子(かたせ・きょうこ)

フリーライター

1972年生まれ。東京都出身。98年に大学院を修了後、出版社に入社。雑誌編集部に勤務の後、2009年からフリー。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

男が男らしく生きるというのが限界に来てると言うことなのでしょうね。今や、いろんな場面で、主導権が女性に奪われてしまいした。若い女性を見ていると、颯爽として頼もしさを感じます。自分に自信を持っているのでしょうね。主張するのはいつも女性。男は黙りこくって何も出来ない。もう男は終わりだな、と感じます。もう「女の時代」は冗談じゃない。女性中心に事が進む世の中になるのでしょう。恐らく筆者も、もうこれ以上男にこだわっていたらますます大変だからと、「男」から抜けだして、女らしく生きることを勧めているのでしょうね。心配してくれているのかもしれないけど、女性から言われるのは悔しいかな。とにかく、女性が元気なだけに、男の行く末が心配です。女性の皆さん、これ以上強くならないで!!!(2008/12/17)

 私は、男性のことが好きであるならば、男性に「女々しい男でいこう」なんて言うべきでないと思っています。今や何かと女性の方が強くなり、女性にとっては、幸せな時代がやってきました。女性が男性の上に立ち、男性が女性に従う、というような場面が多くなってきたと思います。 そんな中で、今回の記事は、男性にも、「女の生き方のほうが楽しいよ」ということなのかもしれませんが、これは女性が男性を軽んじている、というか、見下しすぎではないでしょうか。 私は、男性には、女性に負けることにもっと屈辱感を感じてほしいです。決して女々しくではなく、雄々しく生きてほしい。やはり、それが男であると思います。 また、女性は、どんなに強くなっても、謙虚な気持ちを持つべきです。(2008/12/16)

違和感を感じました。もしこれが、水商売の女性が仕事における心構えを語っているものだったとしたら、納得。そういう違和感です。コメントを見てもそういうお店に行きたがる男性の心境が読み取れるような気がします。男性が実は大して強くないなんて、大抵の女性が知っています。その中で下らない見栄を張って踏ん反り返っている人もいれば、虚勢を張ってでも頑張っている人もいます。見ていればそれは分かるので、「強いフリしなくていいよ」と言いたくなる気持ちも分からなくはないですが(私は自分のパートナーにしか思いませんが)、それを面と向かって言ってしまうのは獅子の鬣を毟り取ってしまうようなものではないでしょうか?それってかえって残酷な気がします。私は自分のパートナーが外でどれだけ踏ん張っているのか知っているので、自分の元では思う存分甘やかしますが、外では『獅子』でいて欲しいと思います。そうでなくては、私の役割は『癒し』ではなく、只の『ぬるま湯』になってしまう。弱らせてしまったら、ここぞというときに臍を噛む思いをするのは男性です。弱いことは知ってるから、それは全然構わないから、強くなることを諦めないで欲しい。弱くなるための言い訳を探す前に、強く在ろうとした理由を考えて欲しい(特に理由がないなら別にいいんですけど)。(2008/12/15)

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井上 礼之 ダイキン工業会長