• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

『蟹工船』よりリアルな幸福の下降線

「行動経済学」は心とお金の橋渡し--友野典男氏(後編)

2008年12月11日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 帰宅途中のコンビニエンスストアで新製品の菓子を見かけると、食べたいわけでもないのについ買ってしまう。肝臓の調子は悪いけれど、帰りがけに一杯飲んでしまう。

 経済学が想定する人間像は、「合理的な判断を下せる人たちが自分の利益を追求する」といったものだが、私たちの日常の振る舞いは明らかにそれを裏切っている。前編で明らかになったのは、実はそうした合理的な行動モデルは、近代社会が生んだドグマに過ぎないということだ。

 しかし、世の中を見渡すと、「この新聞の読者は内定率が高い」とか、「これ1杯でレモン何個分」など、「データ重視」を強調するコマーシャルが溢れている。こうした宣伝に踊らされ、つい消費行動に走ってしまうのもまた私たちだ。

 データ、合理性、数字……。こうした情報を人々がすんなり受け入れることに、代償はないのだろうか。

 明治大学教授の友野典男さんは、「従来の経済学で絶対に出てこないのが『幸せ』という概念」と言う。

 私たちが「人は合理的な選択ができる」と真に受けることでスポイルしてきたのは、幸福だったのかもしれない。後編では、幸福な経済活動の実現に向けて何が必要なのかについてうかがった。

--前編では、「目の前のものを食べたいから食べる」といったシンプルな目的が、経済活動における合理的判断の原点というお話でした。現代のように情報が多い中では、この原点を踏まえた判断は難しいと思います。

友野:宣伝に煽られたり、情報に振り回されたりといった不合理な選択をしないためには、一人ひとり賢くなる必要があります。かといって、たとえばみんなが自動車を耐用年数まで使い切っていたらメーカーは倒産してしまいます。全員が賢い消費者になると、いまほど物を買わなくなるので景気が悪化する。これが経済のジレンマです。

友野典男(ともの・のりお) 1954年埼玉県生まれ。早稲田大学商学部卒、同大学院経済学研究科博士後期課程退学。2004年より明治大学情報コミュニケーション学部教授、同大学院グローバル・ビジネス研究科講師。専攻は行動経済学、ミクロ経済学。主な著訳書に『行動経済学』(光文社新書)『慣習と秩序の経済学』(訳、日本評論社)、『経済学の論理と数理』(共著、早稲田大学出版部)など。

友野典男(ともの・のりお) 1954年埼玉県生まれ。早稲田大学商学部卒、同大学院経済学研究科博士後期課程退学。2004年より明治大学情報コミュニケーション学部教授、同大学院グローバル・ビジネス研究科講師。専攻は行動経済学、ミクロ経済学。主な著訳書に『行動経済学』(光文社新書)『慣習と秩序の経済学』(訳、日本評論社)、『経済学の論理と数理』(共著、早稲田大学出版部)など。

 身近に接する学生を見ると、あまり消費欲求を感じません。選択肢が多すぎて、もはや選ぶこと自体を止めているのではとすら思います。

--選択肢が多いほど、人は自由に積極的に物事を選ぶはずだと思いがちですが、現実はそうでもないのですね。しかし、トレーサビリティの普及などで、今後ますます原産国や原材料のような情報が増えることが予想されます。いっそう買う物の選択は困難になりますか?

友野:グローバル化やIT化の結果、情報が増えるほど事実がどこにあるかは不明確になっています。インターネットのおかげで情報量は増えたけれど、内容の真偽はわからない。信頼性を担保するための情報がさらに必要になる。

 こういった具合にひたすら情報が増えたことで、「中国製品は買わない」とか「お気に入りのサイトしか見ない」といった単純思考への回帰がすでに起きています。

『蟹工船』より寒い現代の職場

--単純な思考で選択したところで、どこかで不全感がくすぶり、生活を謳歌するような幸福感につながらない気がします。

友野:ところが、いまの経済学で絶対に出てこないのが「幸せ」という概念です。合理性一辺倒の経済学ですっかりその考えはなくなってしまった。所得が多ければそれでいいと考えていたのです。

 一部の発展途上国のように経済水準が生存を脅かすレベルであれば、幸福と所得は深く関係しています。でも、国際的な調査で明らかになったのは、ある所得レベルを超えると、「健康・人間関係・仕事のおもしろさ」といったことが、所得より重視されるようになることです。

 つまり、ある程度のお金は絶対に必要だけれど、所得だけが増え続けることは、必ずしも幸福の向上につながらないというわけです。

コメント0

「多角的に「ストレス」を科学する」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック