今回お話を伺ったのはロシアのボリショイバレエ団でソリストとして活躍されている岩田守弘さん。旧ソ連の時代から単身ロシアに渡り、情熱と努力、卓越した技術でそれまで外国人を受け入れたことのなかったボリショイ・バレエの門戸を開かせた。
自分が活躍できる場所を知ることが、とても大事だと岩田さんはおっしゃっていた。バレエではそれが残酷なまでにはっきりと出てしまう。ボリショイのバレエ学校の養成システムでは、生まれ持った体型で、将来どのような役ができるのかが選別されてしまう。
バレエをやりたい人は、最初は誰もが王子の役を夢見て入ってくるわけだが、生まれ持ったものはしょうがない。そこで自分の居場所を見つけ、自分の果たす役割を見つける。岩田さんの場合は、ロシアのバレエダンサーに比べて小柄であるために、道化などの役になることが多い。
それで悩んでいたときに、お父さんから「世界一の道化になればいいじゃないか」と言われて、考え方が大きく変わったという。あらゆる職業において、そういうことがある。それを受け入れるのはとても大事なことで、みんながスターになればよいというものではない。
逆に言うと、単にスターなどという考え方がいかに雑駁なものか。ロシアでは「小さな役というものはない。小さな芸術家がいるだけだ」という言葉があると岩田さんはおっしゃっていた。ここに奥深い叡智の蓄積がある。
バレエとは何かと、岩田さんが先生に尋ねたときに「それは道徳だ」という答が返ってきた。舞台の上では、その人が持つすべてが出てしまう。演じる人がどのような人物であり、どのような生き方をしているかがさらけ出される。では、岩田さんはどのような自分でありたいのかといえば、それは真面目さであり、実直さであり、まっすぐ努力を続ける人間であるという。
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