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この局、なにをやりだすか分からない(注:誉め言葉)~『テレビ番外地~東京12チャンネルの奇跡』
石光勝著(評:近藤正高)

新潮新書、680円(税別)

  • 近藤 正高

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2008年12月8日(月)

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ホームレスどっこいお気楽名言集

テレビ番外地──東京12チャンネルの奇跡』 石光勝著、新潮新書、680円(税別)

 大きな事件が起きたときに他局が一斉に特別番組を組んでいるというのに、ここだけは通常番組を放送している、とよくネタにされるテレビ局がある。テレビ東京だ。たとえば、湾岸戦争勃発のときにはアニメ「楽しいムーミン一家」をやっていた、などといった“伝説”はネットでもよくお目にかかる(ためしに「テレビ東京伝説」で検索してみてください)。

 本書にもその手の“伝説”に近い話が出てくる。そのひとつが1993年の、皇太子のご成婚パレード。これはもちろんテレ東でも中継されたが、その前後に生放送する特番をどうするか。無理に仕組んでも所詮物量では他局と勝負にならないから、ここは地味な正攻法で……といった指示を制作現場に出したのは、当時同局の報道・スポーツ担当の役員を務めていた著者だった。

 が、肝心の特番の途中で、彼は椅子から飛び上がった。皇太子夫妻の馴れ初めからの再現ドラマが始まろうとしていたからである。台本までチェックしていなかったのは迂闊だった。

〈材料不足を補うために担当者が苦肉の策で編み出したのでしょう。でも国民全体が本物の雅子さまの美しさに溜め息をついているところに、映像上の処理の仕方はともかく、再現ドラマはありえない〉

 そう判断した著者は、CMに入ったところで即座に再現部分の放送を中断するよう現場のスタッフらに告げたという。

 再現ドラマといえば、テレ東はいまでも国政選挙の日や正月になると、俳優が現役の政治家を実名で演じるドラマをよく放送している。ある選挙のときなど、スタジオに呼んだ本物の政治家たちを前にそれを流したところ、一人(たしか元首相だったか)があからさまに不快感を示していたのを思い出す。しかし、同局にはすでに“前科”があったのだ。

 本書は、テレビ東京が1964年に「東京12チャンネル」として開局したときから、主に営業や番組編成にたずさわってきた著者が、上記のような失敗談を交えながら同局の歴史、あるいはテレビ論をつづったものだ。タイトルに掲げられた「番外地」とは、同じ在京の民放テレビ局である日本テレビ・TBS・フジテレビの「三強」、テレビ朝日の「一弱」に対する、かつての東京12チャンネルの業界内における呼び名だという。

小さな予算で大きな企画を

 この「番外地」という言葉には、視聴率やスポンサーへの売り上げで12チャンネルが他局に大きな差をつけられていたという事実が表現されている。なぜそこまで格差が生じたのか? そのいちばんの原因は、開局当初の独特の経営形態にあった。

 実は東京12チャンネルは、日本科学技術振興財団が運営する科学技術教育局として開局したのだ。その証拠に、当時の番組表を見ると「工業高校講座」「たのしい科学」などといった番組が並んでいる。たしかにこれでは高視聴率など期待できそうもない。事実、番組がスポンサーに売れないため、開局2年後には放送時間は1日5時間半にまで短縮された。

 その後いよいよ経営がピンチを迎えると、1969年から日本経済新聞社が経営に参加することで再建がはかられた。73年には企業形態を財団法人から株式会社へと移行し、ようやく一般総合局へと生まれ変わる(再建完了は79年)。東京単独局だったのも、81年に「テレビ東京」と改称するとともに、初の地方系列局であるテレビ大阪が開局し、以後徐々に全国にネットワークを広げていく。

 とはいえ、後発局ゆえに予算は他局とくらべればやはり少なかった。「何がセコいって、いちばんセコいのが12チャンネルね。小さな予算で大きな企画で有名な」とは、漫才コンビ・ツービート時代のビートたけしのギャグだが、正月のテレ東恒例の「12時間ドラマ」(近年は10時間に短縮されているが)は、まさにこれを地で行く発想から生まれた。

 1979年の正月に、仲代達矢主演の大作映画「人間の條件」を放映したときのこと。当初この映画は、年末年始の夕方4時台の枠を使い、5日間に分けて放映する予定だった。が、この条件ではスポンサーに売れないとして、当時営業局の部長だった著者は部会であらためて意見を求める。

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