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600ページ二段組、インド仏教の指導者となった日本人の迫力!~『破天』
山際素男著(評:和良コウイチ)

光文社新書、1400円(税別)

  • 和良 コウイチ

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2008年12月12日(金)

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評者の読了時間6時間00分

破天──インド仏教徒の頂点に立つ日本人

破天──インド仏教徒の頂点に立つ日本人』 山際素男著、光文社新書、1400円(税別)

 本文600ページ近く、かつ2段組。書店の棚から手に取るのもちょっとためらわれる重厚感である。異様なまでの存在感を放っている。

 手軽にちょっとした知識を仕入れられるツールとしての新書が百花繚乱の出版界において、この一見とっつきにくい本がラインナップに並ぶのはなぜか。

 8年前に南風社から刊行された、知る人ぞ知る怪著の再刊である『破天』は、インドにおける仏教復興運動を率いる一人の日本人の半生を描いた評伝である。現在の新書の潮流に真っ向から逆らう分厚さと硬質なテーマ性を持つ本書の再刊は、この書物の強い生命力、そして佐々井秀嶺という男の持つ魅力を証明する。

 佐々井は1935年生まれ、現在74歳。一説によると1億5千万人にものぼるという信者の頂点に立つ、インド新仏教の二代目指導者である。1967年の渡印以来、一度も帰国することなく40年以上現地で獅子奮迅の活動を行なっている。

 仏教関係の書物というと、インテリは教義・教理に関心を向けがちだが、『破天』にはその類の難しい記述がほぼ無い。もっぱら佐々井の歩んで来た人生が、小説のような読みやすさで描かれている。本書が物語としての面白さをも兼ね備えているのは、何より佐々井が単なる宗教者ではなく、実践者であることに起因するのだろう。ヒンドゥ教徒が人口の約8割を占めるインド社会において、仏教復興と不可触民解放を訴え、過去に何度も国外退去命令まで受けた外国人の途方も無い闘争記なのだ。

 佐々井が戦ったものは、何か。もともとインドにおいては、仏教は何世紀もはるか遠い昔にいったん滅びたのだが、二十世紀に、佐々井の心の師であるアンベードカルによって再興の端緒が開かれた。

 アンベードカルは、“不可蝕民”の出身であった。これは、ブラーミン(僧侶、司祭階層)、クシャトリヤ(王族、戦士階層)、ヴァイシャ(商人、労働者階層)、シュードラ(上位三層に奉仕する奴隷労働者階層)によって構成されたカースト社会から、穢れた者として排除された存在である。

 ヒンドゥ教にまつわる身分制度であるカーストは身分や職業を規定し、固定されて親から子に受け継がれる。インド社会に深く根付いている制度であり、アウト・カースト出身者の多くは、いまだ高等教育を受けられず、貧困状態に置かれたままだ。佐々井は彼らを仏教に改宗させることによって、ヒンドゥ・カーストの差別システムから抜け出させようとしているわけである。

ガンディーの思想とは真逆の「戦う仏教」

 もちろん、インドの現実は、宗教、カースト、多言語圏、少数コミュニティ、極度の貧富の差といったものが複雑に絡み合い、深刻な社会・経済・政治問題を抱えている。しかしながらカースト制度を根底から打ち砕かんとする新仏教はさまざまな困難に遭いながらも、佐々井の命がけの活動によって、ヒンドゥ教徒の最底辺であえぐ不可蝕民に救いをもたらしてきた。

 不可触民に関して、私が興味を惹かれた箇所は、日本でもっとも著名なインド人である“非暴力・不服従”の聖人マハートマ・ガンディーと、アンベードカル=佐々井との思想の違いである。

 差別問題である不可触民制についてはカースト・ヒンドゥ自身がまず反省し、改心するカースト社会の内面的行為によって解決すべきだと、ガンディーは考えた。不可触民の存在はヒンドゥ社会と不可分であり、彼らが独自の社会勢力として分離していくことはヒンドゥ社会の崩壊につながるという危機感がガンディーにはあったのだ。

 一方、不可触民制の廃絶は、制度そのものとヒンドゥ教を打倒することによってのみ可能だとするのが、アンベードカルの考えであり、二人は反目し合った。結局、不可触民解放運動を率いて独立インドの初代法務大臣までのぼり詰めたアンベードカルの手によって、憲法の中に制度の廃止を刻むことができたわけだが、二人の根本的な思想の違いはどこにあるのか。

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