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しょせん、オスは使い走り~『できそこないの男たち』
福岡伸一著(評:後藤次美)

光文社新書、820円(税別)

  • 後藤 次美

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2008年12月15日(月)

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評者の読了時間4時間45分

できそこないの男たち

できそこないの男たち』 福岡伸一著、光文社新書、820円(税別)

 小学生のころ、「まんがはじめて物語」というテレビ番組をよく見ていた。

 モグタンというキャラクターとお姉さんとが、タイムスリップをして、身近な物事の起源や歴史を物語風に解説してゆく。実写とアニメを両用していたのが特徴的だった。

 昨年、『生物と無生物のあいだ』でベストセラーをかっ飛ばした福岡伸一の新著『できそこないの男たち』は、どこか「まんがはじめて物語」と似ている。というのも、生物学的な男の作られ方を解き明かす本書もまた読者を次々と「はじめて」の場所へと連れていってくれるからだ。

 本書はまず、1988年のコロラド州カッパーマウンテンで開催された、アメリカ実験生物学連合会(FASEB)の研究会の1シーンから幕を開ける。上司が主催者だったおかげで、福岡伸一もその場所に同席する幸運に恵まれた。

〈司会者が次の演者の発表をアナウンスすると会場は水を打ったように静かになった。私は発表者がどこから現われるのかと目を泳がせていた。名前は知っているが、どんな人物なのかはわからない彼をいち早くとらえようと〉

 その男の名前は、デイビッド・ペイジ。彼はそこで「人類史上最も重要な発見について発表しようとしている」のだが、その発表の中身はまだ明らかにされない。

〈人は男に生まれるのではない。男になるのだ。でも一体どうやって? それがペイジの最も知りたい問いだった。そして1988年夏、その答えに最も近づいていたのが彼だった〉

 という寸止めの表現でプロローグは締めくくられる。

 ずるい。こんな切り出し方をされたら、読者はその先が知りたくなる。ところが、再びペイジの話が始まるのは、86頁からだ。

 その間に本書は、精子を最初に「見た」男や、性決定の遺伝メカニズムをはじめて解き明かした女のもとへ読者を誘っていく。

たまたま、タマタマの中身を見つけました

 どちらもまさしく「はじめて物語」だ。17世紀のオランダ・デルフト市に生を享けたアントニ・ファン・レーウェンフック(1632-1723)は、趣味が高じて、300倍近い倍率の顕微鏡を自作し、歴史上はじめて微生物を観察した人物として知られている。世界初の精子の発見も、そんな彼ご自慢の顕微鏡があったからこそ。

 レーウェンフックは科学者ではなく、〈生涯、アマチュアとして、数百台以上もの顕微鏡を自作し、改良し、レンズを磨き、微細な視野に広がる驚くべき豊かな世界を記述しつづけた〉男なのだ。彼のクラフツマンシップがたまたま精子の姿を発見する。

 次の舞台は、およそ100年前の米国ペンシルベニア州、ブリンマーカレッジ。この小さな女子大学で補助教員ネッティー・マリア・スティーブンズは、チャイロコメノゴミムシダマシという、舌を噛みそうな名前の甲虫を解剖していた。卵子と精子を取り出し、毎晩毎晩、観察と実験を繰り返す。そして、とうとうオスの精子には二つのタイプの染色体があることを発見する。

〈今日、Y染色体と我々が呼んでいる染色体。性決定の遺伝メカニズムが「見えた」瞬間だった〉

 彼女の研究する様子をつぶさに紹介しながら、福岡は顕微鏡観察の難しさに話を脱線させる。顕微鏡での観察で、もっとも大きな障害になるのは、対象の“厚み”だという。この難題を解決するミクロトームと呼ばれる切片の切り出し器は、「かつお節削り器と全く同じ原理に基づいた装置」だそうで、およそ10頁にわたって記述される細胞観察の技術談義は、「研究の質感」の伝達にこだわる福岡伸一ならではだ。

 二人の「はじめて物語」を介して、ようやく「人類史上最も重要な発見について」の話に戻る。デイビッド・ペイジの再登場だ。

コメント2件コメント/レビュー

自虐的なタイトルに逆に精一杯の「男のプライド」を感じるのは気のせいか。アダムとイブの神話とは逆に、人間の原型は女性である。遺伝子学的にもそれは証明されたというのなら、ことさら性差を強調する必要がどこにあるというのか。男と女は別の生き物ではない。元はひとつなのだから、社会的に作られた性差にこだわらず、男女共に自分らしく生きてゆけば良いのだ。特に男性は無理しすぎている。もっと本来の姿(女性)に立ち返ってしなやかに優しく生きてはどうか。(2008/12/15)

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自虐的なタイトルに逆に精一杯の「男のプライド」を感じるのは気のせいか。アダムとイブの神話とは逆に、人間の原型は女性である。遺伝子学的にもそれは証明されたというのなら、ことさら性差を強調する必要がどこにあるというのか。男と女は別の生き物ではない。元はひとつなのだから、社会的に作られた性差にこだわらず、男女共に自分らしく生きてゆけば良いのだ。特に男性は無理しすぎている。もっと本来の姿(女性)に立ち返ってしなやかに優しく生きてはどうか。(2008/12/15)

>男とは〈ママの遺伝子を、誰か他の娘のところへ運ぶ>「使い走り」〉にすぎない存在である。でも、その「使い走り」が存在しなければ、人類の肉体は滅んでしまうわけですから、大切にして差し上げないとね。(2008/12/15)

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