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チャプターイレブンで“デトックス”

「デトックス」(類語:再インストール)

2008年12月15日(月)

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 麻生首相の漢字誤読について、最初はあきれていたのだが、最近では、むしろ同情している。だって、あんまりな言われようだから。たしかに、「フシュウ」は、ちょっとナニかもしれない。でも「未曾有」を「ミゾユウ」と読むぐらいなことは、大目に見てやってほしい。

 弁護するわけではないが、麻生さんの誤読は、単純な無知ではない。

 どちらかといえば、「早とちり」「勝手読み」「思いこみ」の類だと思う。

 私も似た性質の人間だからよくわかるのだが、われわれ(私と麻生さんのことだが)は、漢字でも英単語でも初見のカタカナでも、未知の言葉に出くわすと、まず何より、パッと見で自分なりの解釈を発明してしまうタチなのである。

 もちろん、知らない言葉は、辞書を引くなり、原典に当たるなりして、きちんと調べないといけない。それが基本だ。でも、反射的に解釈をつけてしまうクセは、これは、なかなか直らない。私や麻生さんのような、ある意味でアタマの良い(←ある意味でね。あくまで)人は、色んな場面をアドリブでごまかしてここまで生きてきている。この生き方は、簡単には改まらない。生き方とは、すなわち性格であり、一方、性格は、別の言葉で言えば運命だからだ。

 ただ、私の場合は、幸か不幸か宰相の孫ではなかった。財閥企業の長男でもなかった。だから、私の思いこみや早とちりや早のみこみや勝手読みは、その都度周囲の人々に指摘され、指弾され、嘲笑され、事毎に矯正される機会を得て今日に至っている。おかげで、身勝手な誤読が定着する確率は麻生さんの場合よりも低かった……と思う。

 それでも、いくつかは残っている。

 あるいは、自分で気づいていない分がまだあるかもしれない。というよりも、誤読は、原理的に、自分では気づくことができない。背中に貼った貼り紙(「バカ」とか書いてある)と同じだ。百年の誤読。っていうか、自分で誤読だとわかっている誤読は、誤読ではない。

 たとえば、つい半年前まで私は「デトックス」を「デッドストック」と読んでいた。

 さよう。漢字をカナで読み違えるどころか、カタカナを別のカタカナに誤読していたのである。驚くべきことだ。

 こんな、文字数からして明らかに違う言葉を、どうして同一視できるのか、われながら神秘的な感慨を抱くのであるが、事実なのだから仕方がない。私は、「デトックス」という文字を見る度に、アタマの中で「デッドストック」というふうに読み替えて、そうやって、この何年か(「デトックス」という言葉が文字のカタチで登場するようになったのは、この3年ぐらいのことだと思う)を過ごしてきたのである。

 それが、半年ほど前、昼の時間帯のワイドショーを見ていて、女子アナさんが「デトックス」と発音しているのを聞いて、「ん?」と思ったのである。「おい、このコは間違ってるぞ」と。

 ところが、スタジオ中の人間が「デトックス」と言っている。

 ここまできてはじめて、私は自分の知識が間違っていたことに思い至ったわけだ。

 では、私は、どうして「デトックス」を「デッドストック」だと思っていたのであろうか。

 これが、書き起こしてみるとなかなか凄い。

1. デトックスの意味が、「除毒」「解毒」「排毒」であることは文脈からなんとなく了解していた。

2. で、どこでどう結びつけたのか、「デッドストック」→「不良在庫」→「ほら、宿便とかと一緒に蓄積されている毒素とか、そういう話だろ?」ぐらいな経路で類推がはたらいた。

3. さらに、《「体内の毒素を排出処理する施術や方策」をトヨタあたりの不良在庫一掃キャンペーンになぞらえて「デッドストック」と呼ぶみたいな、だらしのないメディア的な応用が一般化したわけだな?》式の思いこみが定着するに至った。

 それにしても、カナをカナに誤読するような奇跡的な誤読がどうして成立し得たのであろうか。

コメント6

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「チャプターイレブンで“デトックス”」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官