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さあ、みんなで叫ぼう~『就活のバカヤロー』
大沢仁・石渡嶺司著(評:清野由美)

光文社新書、820円(税別)

2008年12月18日(木)

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就活のバカヤロー──企業・大学・学生が演じる茶番劇

就活のバカヤロー──企業・大学・学生が演じる茶番劇』 大沢仁・石渡嶺司著、光文社新書、820円(税別)

 もし私が企業の人事担当者だったら、採用時のチェック項目はいたってシンプルだ。

 相手が女性なら、電車の中でフルメイクをしている人。男性ならイヤホンのシャカシャカ音を漏らしながら、ケイタイゲームにいそしんでいる人。

 そいつらを落とせばいい。だから、入社希望者がいた場合は、会社なりで話をした後、彼らが電車の中でどのような様子かを見届ければいいのである。

 って、そんなこと、いちいちできるか、という話ですよね。

 だったら面接時に質問すればいい。

「電車内でお年寄りや妊婦が前にいても堂々と座席に座り、ポーチからやにわに取り出した鏡を前に、ファンデーションから果てはビューラーまでを駆使してメイクするテクニックが、あなたにはありますか?」

「あなたは電車内でイヤホンから不快なリズムと軽薄なシャカシャカ音を撒き散らしながら、同時に口を半開きにしてケイタイゲームにいそしむ大胆さと器用さがありますか?」

 相手が「はい」と答えたら、即座にNGで次の希望者に進む。学校名や専攻なんて関係ない。で、これで落とされた人は、社会人としての常識にもう少し自覚的になって、次へのステップにしてね、と。これは効率がいいのではなかろうか。

 って、どうやら、こういうことも、できないようですね。

 だからこそ、企業の新卒者面接では、担当官の発する「あなたの自己PRは何ですか?」という質問に対し、「私は100人いるテニスサークルの代表を務めました」「私は納豆のようにねばり強い人間です」「私はエアコンのように適応能力抜群です」などのやり取りが、相変わらず続出しているのだ。ああ、こういう答え、25年前のわが身にも覚えがあるだけに、イタタタタタ……。

 お約束の質問にステレオタイプの答え。それが繰り返されている、ということは、就活をめぐる状況って、この4半世紀、何も変わっていないのか。と、いぶかしがりながら本書をひもといていったら、何も変わっていないどころか、事態はさらに悪化しているのだった。

最初に生焼けの肉を食べたのは誰?

 その事態をひと言で表したのが、つまり本書のタイトル『就活のバカヤロー』である。著者は、大学関連記事を専門とする石渡嶺司(1975年生まれ)と、企業人事の内情に詳しい大沢仁のライター2人。石渡は「就職活動は大いなる茶番劇」と題された序文で「焼肉の生焼け理論」を引き、そのはなはだしい負の循環を初めに説明する。

 「焼肉の生焼け理論」とは、大勢で焼肉をするときの心理バイアスだ。肉は十分焼いたほうがおいしいに決まっているのに、誰かが抜け駆けして生焼けで食べ始めると、ほかの者も負けじ、と追随せざるを得なくなる。かくしてみなが生焼けのまずさを我慢しながら焼肉にありつくことになり、満足する者は結果的に誰もいない──という、駆け引きの不幸を解明する理論である。

 そんな不幸の連鎖が、今どきの就活にはとにかく強固に貼り付いている。連鎖の発端は、就活の時期が大学3年生の秋から始まってしまうことだ。

〈企業は良い学生を確保しようとしてどんどん採用時期を早めている。他が早めている以上、うちも黙っているわけにはいかない〉

 という企業のスタンスができあがると、後は学生も大学も、それに振り回されることになる。

〈たまらないのは学生だ。受験から解放され、「やっと遊べる!」と遊び呆けていたら、あっという間に就活シーズンに突入。(中略)就活時期がどんどん早まったとしても、企業が要求するレベルが落ちるわけではない。本来の学生生活期間が短いのに、「大学生活を通して、あなたはどう成長しましたか?」などと質問されても答えられるわけがない〉

 それは、その通りだ。

 さらに大学だって、たまったものではない。

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「さあ、みんなで叫ぼう~『就活のバカヤロー』
大沢仁・石渡嶺司著(評:清野由美)」の著者

清野 由美

清野 由美(きよの・ゆみ)

ジャーナリスト

1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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