• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

今日死んだとします。あなたの身の回りは大丈夫ですか?~『遺品整理屋は聞いた! 遺品が語る真実』
吉田太一著(評:朝山実)

青春新書、730円(税別)

2008年12月22日(月)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

評者の読了時間2時間30分

遺品整理屋は聞いた! 遺品が語る真実

遺品整理屋は聞いた! 遺品が語る真実』 吉田太一著、青春新書、730円(税別)

 本木雅弘が主演した映画「おくりびと」を観られた人が読むと、既視感をもたれるにちがいない。

 映画は、楽団のチェロ奏者だった男が失職し、故郷にもどり、ありついたのが「納棺師」の仕事。聞きなれないが、遺体に化粧を施し、白装束を着せ、棺にいれるまでをあずかる専門業種で、「旅のお手伝い」という求人広告を見て面接を受けにいくと、その場で採用となる。実は「旅立ちのお手伝い」の間違いだったと、山﨑努演じる社長は笑ってすませてしまうのだ。

 仕事のことを新婚の妻(広末涼子)に内緒にしていた本木だが、バレてしまい、やめないなら別れますと、彼女は実家に帰ってしまうという展開。

 女性だと思い込んでいたご遺体が男性だったり、蛆のたかる部屋に踏み込んだり。死臭が服にしみこむのを気にしつつも、主人公は仕事に没頭し、誇りに思うにいたる。男の成長物語であり、仕事とは如何なるものかを丁寧に描いた作品でもある。ふつうなら入社しても長続きしないであろう職場なのに、主人公はいついてしまうのだが、自ら望んだ仕事ではないというのも面白い。

 そして、この映画のディテール部分で共通したものを感じさせるのが本書だ(企画のもとになったは別のノンフィクションらしい)。「納棺師」と「遺品整理屋」ではもちろん職域は異なるが、弔いの場に接するという意味では交差するところは多い。とりわけ、映画のラストで、子供のときにいなくなった父の訃報に触れ、本木が、遺体となった父と再会する場面は、本書に紹介されている逸話によく似ている。

「最後は一人で住んでいたんですね。こんなところに……」

 依頼主の男性は、小学6年生のときに、蒸発した父の消息を30年ぶりに知らされる。

遺品が語る蒸発の原因に、息子は…

 公団住宅の一室で孤独死をとげた、昔は腕のいい板前だった父と、その長男の再会場面は、文章に余計な飾り気がなく、それだけに胸を打つ。

 著者に遺品の整理を頼んだ長男は、父の遺体と対面、30年間の父との空白をうめるかのように、しんみりとしていた。それが一転、「供養なんてしなくていいから。全部捨ててください」。

 怒気に声をあらげた。一枚の写真を見てしまったからだ。

 父の横に、見知らぬ若い女性が写っていた。蒸発の原因は彼女らしい。誰もがそう察する写真だった。

〈遺品整理業とは、亡くなられた方のご遺品を、遺族に代わって(あるいは、ご遺族と一緒に)整理し、ある物は処分し、ある物は遺族に形見としてお届けし、またある物は、僧侶を呼んで供養(遺品供養)して天国の故人の元へお送りするのが主な仕事です(これを私たちは「天国へのお引越し」のお手伝い、と呼んでいます)〉

 ひとり暮らしの長い人が亡くなり、発見されるまでに日数がかかった部屋は悲惨な状況であることが多い。もともとは引越しの運送会社とリサイクルショップを経営していたが、顧客の要望を聞くうち、そうした家の片付けをする会社を立ち上げたという。

 遺品の整理から清掃、消毒など一切を引き受ける。ひと呼んで「遺品整理のプロ」。これぞ究極のスキマ産業。人がしたがらない仕事だからこそ、起業として成功してきたともいえる。6年間で、著者が携わった遺品の整理は一万件を超えるとか。

 話をすこし戻すと、さきほどの板前だった男の息子は、ようやく整理が終わったころ、著者からある言葉をかけられ、

「まだ処分場へ持って行かれていないのだったら、持って来てくれませんか? 父の写真を」

 といい、女性と写っている以外の写真と、包丁を持ち帰ったという。

「NBO新書レビュー」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

小池さんがこの言葉(排除)を述べたことで、「風」が変わっていきました。 ただし、小池さんが言ったことは正論です。

若狭 勝 前衆院議員