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初回客を馴染み客に? できますとも!『新宿駅最後の小さなお店ベルク』
~人も店も「長期熟成」で育てる

  • 大塚 常好

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2008年12月24日(水)

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新宿駅最後の小さなお店ベルク――個人店が生き残るには?

新宿駅最後の小さなお店ベルク――個人店が生き残るには?』 井野朋也著、ブルース・インターアクションズ、1600円(税抜き)

「勝間和代の本より使えて、面白い。そのへんのビジネス書より、ずっと血肉がある」

 一見、フツーの飲食店の波瀾万丈記のような雰囲気の本書だが、一部のカリスマ書評ブロガーや書店の売り場担当者などからそんな絶賛の声も飛び出している。曰く、2008年最高の“ビジネス書”ともいえる、と。

 今回、初めてビア&カフェ「ベルク」を訪ねてみた。JR新宿駅東口改札を出てすぐ左、徒歩15秒(50歩ぐらいかな?)。通路の奥まったところに、あった。セルフサービスのため、レジ前には行列。だが、スタッフの手際がとてもいい。待たされても、不思議とイライラしない。

 隣席のおばちゃん2人組は、レバー・ハーブ・パテをのせたパンを食べ、黒ビールを飲む。

 店を見渡すとテービル席が空いているのに、なぜか壁ぎわに立つ客も多い。仕事帰りに1人で来たOLさんは、立ったままフルボディの赤ワインをがぶ飲みしている。大学生はホット・ドックとコーヒーを。やはり、立ったままだ。もちろん、馴染みの中高年のビジネスマンも多い。

 たった15坪の広さに、これほど老若男女の客がごちゃごちゃしている店は見たことがない。1日の来客数は1500人。コーヒー200円、生ビール300円とリーズナブルだが、メニューの種類は100以上。平均食材原価率42・5%は業界的にはありえない数字らしい。

 いつも大入りで1日の売り上げは約60万円。入居する駅ビル内のテナントでナンバーワンの坪効率を誇っているそうだ。といっても、店に金儲け至上主義的なにおいは、ない。コーヒーもビールもパンも文句なくおいしく、居心地がいいから、みな自然とリピーターとなるのだ。

ベルク流商品力の磨き方

 著者は、父親がこの地にスタートした純喫茶を引き継ぎ、18年前から試行錯誤を繰り返しながら「早くて、安くて、うまい」セルフサービスの店として成功させた経営者・店長。最初の1年めの、「喫茶店時代の常連もほぼ100%近く離れました」という崖っぷち状態から見事に復活し、飲食店の激戦区・新宿でどう生き残ってきたのかが語られる。

 チェーン店ではない「個人店」が今も実践しているサバイバル法や仕事に対する哲学は、日々、会社組織の中で働くビジネスマンとしても十分に応用できる珠玉のエッセンスとなりそうだ。

 例えば、「商品力」の磨き方だ。

〈私たちの間で合言葉になったのは『どこにも真似できない』でした〉

 とにかく店の目玉となるメニューに関しては、「早くて、安くて、うまい」の三拍子を揃える。うまいけど高い、早いけど味はそこそこという店はいくらでもあるが、三拍子揃う店はない。

 では、そのためにどうすればいいか?

〈個人店は、当然、そんな宣伝費などありませんから、商品力といってもコツコツ、技に磨きをかけて味や値段や提供スピードで勝負するしかない〉

 このことはビジネスマンという立場でも同じことが言えるだろう。人が真似できない「早くて、安くて、うまい」(仕事の質)があれば、社内や社会の中で高い評価を得られる。そのためにはやはりコツコツしかないが、技を磨いていれば信用度が増し、さらに多くの重要な仕事が舞い込むのである。

 著者によれば、店がどれくらい支持されているかのバロメーターになるのは、客数よりも販売個数だという。つまり、一人当たりの平均販売個数(全体の販売個数÷客数)。ちなみに、ドトールのこの数字は1.2、マックは3、ベルクは1.5に近づきつつあるそうだ。

 商品力を高めて一人当たりの販売個数をのばせば、(賃貸料や光熱費などの)固定費率はどんどん下がり、逆に利益率はアップする。ビジネスマンも、仕事の“容量”が大きくなれば、そのパフォーマンスもいやが上にも上がっていくはずである。

「イチゲンさん」に対する接客術にも学ぶべき点は多い。

 ベルクの客の「常連」率は8割。残り2割がイチゲンなのだが、この2割の中からまたリピーターが生まれる。だからイチゲン率が2割以下になると、店がじり貧になる恐れが出てくると言う。

〈身構えた初回客をいかにして味方につけるか、あの手この手をつくるスリルとサスペンスも、無名店ならではの接客の醍醐味といえます。(中略)初回客との緊張関係(ビートルズでいえば、デビュー前に異国の酒場で音楽に関心のない酔っ払い相手に演奏したハンブルグ時代のような)が感じられない店は、いくら和気あいあいと賑わっていても、店としては半ば死んでいるのです〉

コメント1件コメント/レビュー

日経MJ新聞の書評欄にも先日載っていたので、今回の書評を興味深く読みました。是非とも年内中に早速買って正月休みにじっくり読もうと思います。マークI(2008/12/24)

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日経MJ新聞の書評欄にも先日載っていたので、今回の書評を興味深く読みました。是非とも年内中に早速買って正月休みにじっくり読もうと思います。マークI(2008/12/24)

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